校長室からの風

梅が開花しました ~ 早春点描

   御船高校の校庭の梅が開花しました。正門から入って正面に見える紅梅で、天神の森の前庭に当たります。今年は暖冬で、熊本平野において降雪は観測されていません。しかし、やはり2月の朝の冷え込みは厳しく、自動車のフロントガラスが凍結していることがあります。自転車や単車で通学している生徒たちの身体は芯から冷え切っていることでしょう。そのような生徒たちを迎える紅梅の開花に、春が近づいていることを実感します。

 今週(2/10~2/14)の学校は、1、2年生の学年末考査が行われています。進級に向けた大事な考査です。駐輪場に単車や自転車を置いて校舎へ向かう生徒の多くは寒さで背中を丸め、視線も道に落としがちですが、少し上を向くと紅梅の開花に気付くことができます。今週は、毎朝、育友会(保護者会)の皆さんが交代で正門付近に立たれ、挨拶運動を展開されています。私も一緒になり、生徒に声を掛けていますが、今朝は「梅が咲いているよ」と幾人かの生徒に教えました。

 また、2月から3月は高校入試の季節でもあります。2月3日に前期選抜検査を実施し、その結果は昨日2月12日(水)に各中学校にご連絡したところです。そして、今日2月13日(木)から2月18日(火)まで後期選抜検査の願書受付です。検査日は3月10日(火)~11日(水)で合格発表は3月17日(火)となります。紅白梅満開、そしてひょっとしたら桜も開花しているかもしれない校庭での合格発表です。御船高校を志望している皆さん、春、天神の森の学び舎で会える日を楽しみにしています。

 梅花と言えば、新元号「令和」の出典となった大宰府の「梅花の宴」(『万葉集』巻5)を連想する人が多いでしょう。天平文化(奈良時代)、大宰府政庁の長官の大伴旅人(おおともたびと)が、自邸で梅花を題材とした歌会を催しました。集った官僚の中には後世歌人として知られることになる山上憶良(やまのうえのおくら)もいました。この時の麗しい月(「令月」)と穏やかな風(「風和」)の情景から、「令和」という元号が生まれたのです。

 令和になって初めての春を迎えるにあたり、これまでになく梅の花の凛とした清らかさに引き付けられる気がします。

 

燃える若き音楽家たち ~ 芸術コース音楽専攻卒業生のコンサート

   御船高校芸術コース音楽専攻卒業生による「Valentine Concert」が2月11日(火)に御船町カルチャーセンターで開かれました。本校芸術コースは平成16年4月に新設され今年度で15年目を迎え、来月には14期生が卒業します。今回の音楽会は9期生から12期生の有志6人による企画であり、このような音楽専攻卒業生のコンサートは初めてとのことです。

 メンバーは次のとおりです。

 中川かりんさん(9期生、専門はファゴット)、水町綾花さん(10期生、専門はファゴット)、友田桂豪さん(10期生、専門はドラム)、松井奨真さん(11期生、専門はピアノ)、山下真理子さん(11期生、専門はピアノ)、久保明日香さん(12期生、専門はフルート)。前半はそれぞれ専門楽器のソロ演奏、後半は御船高校専攻同窓生ならではの組み合わせの演奏が披露されました。ピアノ連弾の松井さんと山下さんは在籍大学が異なり、合せる練習機会が限られ、初めての連弾ということでドキドキの演奏だったそうです。また、ファゴットトリオは、中川さんと水町さんに、御船高校芸術コース音楽専攻1年の武田祐里さんが加わったものでした。中川さんと水町さんは平成音大の先輩後輩に当たり、武田さんもファゴット専攻ということで平成音大の先生に師事しています。このように所属大学や年齢を超え、同じ御船高校芸術コース音楽専攻というつながりの音楽会が実現したことを心から歓迎したいと思います。

   コンサート当日はちょうど1、2年生の学年末考査期間中のため、会場には御船高校生の姿は少なかったのですが、旧・現職員や平成音大で学ぶ卒業生等、初めての試みを応援する関係者が集いました。演奏者6人はまだ二十歳前後の若き音楽家たちです。その志は高く、熱いものがあります。彼ら6人が力を合わせ、母校及び後輩へ爽やかなエールを贈ってくれたことに深く感謝したいと思います。フィナーレはラテンジャズの名曲「On Fire」でしたが、まさに曲名のとおり「燃える」若人たちであり、その将来が楽しみです。

 「御船高校芸術コースがますます活気あふれることを願います。そして私たちは日々精進していきたいと思います。」

   メンバーを代表して松井奨真さんによる最後のステージ挨拶でした。御船高校芸術コースが発足して15年。人材は着実に育っていると感じました。

 

「チーム御船」、走る ~ 城南地区高校駅伝大会

    球磨郡特有の濃霧に出迎えられました。2月1日(土)の朝8時半、球磨郡あさぎり町の総合運動公園に私は到着しました。出場する生徒たちと引率の先生方は人吉市の旅館に宿泊し、私よりも早めに会場入りしていました。男子65回・女子26回の「熊本県高等学校城南地区新人駅伝競走大会」開催です。

 開会式は午前9時。そして女子の部が午前10時スタート。16校がエントリーしていましたが、当日参加したのは13校。5区間、16.8㎞を競います。御船高校の1区、唯一の1年生の砂地さんが勢いよく飛び出していきました。そして、2区の浦津さん(2年)、3区の村上さん(2年)、4区の森口さん(2年)と襷をつなぎ、アンカー5区の山内さん(2年)が懸命の走りでゴール。12位でしたが、レース後、付き添いの生徒たちも一緒になって明るい輪ができ、全員に笑顔が見られました。

 男子の部は午前11時30分スタート。20校24チームが参加。5区間で21.6㎞を競います。1区は一宮君(2年)が上位集団についてチームの流れを作りました。2区は最長の7㎞のエース区間で、山本君が力走、3区の唯一の1年生の村田君、4区の倉本君(2年)とつなぎ、アンカー5区の北島君は最後まで諦めない走りを見せ、ゴール直前で一人かわし16位でフィニッシュしました。男子は大会直前にアクシデントがあり、控えの選手が一人もいない5人ぎりぎりでの出場でしたが、全員がベストの走りでした。

 1、2年生を対象とした高校城南駅伝大会に、御船高校としては不安を抱え臨みました。本校には陸上部に長距離選手がいないため、男女とも陸上部以外の部活動から生徒を集めての混成チームとならざるを得ません。女子は、陸上短距離の生徒が1人、他はバスケットボールとバレーボールから協力を得ました。男子は、サッカー部、バスケットボール部、野球部の生徒達で組みました。従って、練習も十分にできず、チームワークの点でも未知数でした。

 しかし、レース本番では選手たちは全力を尽くし、女子の付き添いの生徒達もよく動き、選手を支えました。宿泊した人吉市の旅館での食事等のマナーも良かったようで、「生徒たちを見直しました」と引率の先生が言われました。

 クラス、学年、部活動の枠を超え「チーム御船」として参加した城南駅伝大会は実りあるものでした。本校生の持つ潜在力、そして生徒同士の結びつきを発揮しました。これからも「チーム御船」は走り続けます。

 

 

 

問いを学ぶこと ~ 電子機械科の課題研究発表会(2)

   前回に続き、「電子機械科の課題研究発表会」について語ります。1月29日(水)の3、4限目は3年A組が発表しました。1、2限目のB組と合わせて発表を聴いてみて、チームとして取り組んでいるという印象を持ちました。グループとチームでは根本の違いがあると思います。学校生活において、仲の良い者同士、一緒に帰る者たち、同じ趣味の仲間などグループは簡単に派生します。しかし、チームを作るには強い意志が必要です。チームには明確な目標があり、それを達成するための役割があるのです。電子機械科の生徒たちはこの1年間、良きチームとして課題研究に取り組んできたと思います。

 A組の6つの発表のうち、4つはモノづくりに没頭したものでした。学校の野球場の防球ネットの補修、ボルトやナット等を材料としたオブジェ製作、マイコンカーの製作、廃棄されていた発電機の修理などです。いずれも、僕たちはモノづくりが好きだという気持ちが伝わってきました。そのプロセスは、まさしくトライ&エラーの繰り返しだったことがわかります。このプロセスこそ尊いと思います。

 残りの2つは、強い課題意識から出発し、問いを出し続けて研究を推進したもので充実した内容でした。一つめは、「なぜ御船高校電子機械科は定員割れが続いているのだろう?」(就職状況も良く、ロボット大会等の発信もしているのになぜ?)からスタートし、これまでの電子機械科の取り組みについて点検し、どうすれば中学生にもっとアピールできるのか、他にどんなことができるのか、問い続けています。二つ目は、電子機械科マイコン制御部で主催してきた中学生ロボット大会について、中学校が求めているものは何か、どうすれば参加校は増えるのか、中学生に対して高校生ができることは何かと問い続け、大会のあり方の改善検討を進めています。きっと来年度の中学生ロボット大会では成果が現れることでしょう。

 学問とは、答えを学ぶことではなく、問いを学ぶことです。問いを立てて、自分なりに考え、調べ、取り組み、試行錯誤していくのです。一つのことに取り組んでみると、様々なことにつながり、広がっていきます。

 電子機械科の生徒の皆さんにとって、「人生最初の課題研究」(電子機械科の大橋先生の言葉)は終わりました。しかし、本当の「課題研究」はこれからです。それぞれの職場で、自ら問いを立て、その問いを原動力にして、創造的な仕事をしていってほしいと期待します。

 

地域の課題を解決する力 ~ 電子機械科の課題研究発表会(1)

 3年生の学年末考査、通称「卒業試験」が1月28日(火)に終了しました。これで3年生は家庭学習期間に入るのですが、電子機械科の3年生(2クラス)は翌日も登校し、この1年間取り組んできた課題研究の発表会に臨みました(会場は第5実習棟フロア)。電子機械科の「課題研究」は生徒たちがそれぞれ班をつくり、各班で課題を設定し、担当の先生の指導を受けながら研究実践を行うものです。教育課程上は、2単位(週2時間)ですが、放課後や長期休業中にも自主的に活動してきました。

 1月29日(水)の1、2時間目、3年B組の発表が行われました。6つの班の発表のうち半分の3つの班が、地域社会の課題解決に挑む内容となっており注目しました。一つ目が、以前この「校長室からの風」で紹介した、御船町の小学校英語授業における人型ロボット(ペッパー君)に搭載する制御プログラム作成です。簡単な英会話、そして手ぶり、身振りの動作ができるプログラムを生徒たちがつくり、小学生の英語授業に貢献しました。

 二つ目は、御船町の害獣被害対策のためにイノシシを捕獲する箱罠の製作です。このテーマは昨年度の3年生から継続です。市販されているものより安価な手作りの箱罠を昨年度の3年生が製作したのですが、実際に設置してみるとイノシシに壊され、捕獲できませんでした。その失敗を糧に、今年度の班は、より軽量で持ち運びやすく、かつ丈夫な箱罠を作り上げました。しかし、完成が遅れたため、まだ実際に使用できず、実際の捕獲はこれからです。三つ目は、災害時に簡易に使用できるバーベキューコンロの製作です。学校の工作機具を使用し、鉄板を材料に作り上げました。災害で電気やガスが使用できなくとも、火を焚き芋や肉を簡単に焼くことができる手製のコンロが成果物です。

 電子機械科の生徒の強みは、モノづくりができる点にあります。これは普通科の生徒にはない絶対的な強みです。3年間の豊富な実習を通じて、モノづくりの面白さと難しさを知っています。自分たちに何ができるのかと考えた時、モノづくりの技能を持っていることは生徒たちの生きる力となるでしょう。

 地域社会には大人の手が回らないほどの沢山の未解決課題があります。モノづくりの基礎を身に付けた高校生であれば、その行動力とアイデアを生かせば、課題を解決できる可能性が大きいのです。

 御船高校電子機械科だからこそできる社会貢献があるのです。