2021年4月の記事一覧
チャリに ゴムひも巻き付き SOS!
4月30日(金)午前7時半ごろ 校長官舎を出ると,真新しい中学の制服を着た女の子が,必死に,自転車のギアに巻き付いたゴムの荷紐を外そうとしていました。手には機械油がべっとり付いています。
「ゴムが巻き付いた? おじさんが外してみようか」
と声をかけてしゃがんだものの,ギアに嚙みこんでなかなか外れません。新品の自転車を傷つけないように少しずつ噛みこみを外して,やっと最後の一巻き。しかし,この一巻きが,ギアの心棒に深く巻き付いていて,手も足も出ません。
女の子が通う中学校の始業時間もどんどん迫ってきて,女の子は,目にいっぱい涙をためています。家には誰も居ないとのこと。そこで,女の子の通う中学校に電話して事情を説明し,少し遅れそうなことを伝えました。そして私も天草高校にSOSを送ることにしました。すると早速,電話のSOSを聞いた岩間先生や内村先生が,両手いっぱいにハサミやカッターやスパナ等を持って全力ダッシュで駆けつけてくれました。女の子の顔も少し和らいだようです。
そして格闘すること15分,心棒に巻き付いた最後の紐をカッターで切断すると,ゴム紐はするりと岩間先生の手から落ちていきました。あとは外れたチェーンをはめて,ギアの変換を確認して,「よーっし 大丈夫だよ! 待たせたね。 中学校の手前の交差点に自転車屋さんがあるから,行きがけに寄って『荷紐が食い込んだから点検してください』って言って預けるといいよ。」よく響く声で岩間先生が女の子に告げると,内村先生が「じゃあ学校に行く前に 手をきれいにしていこうか。」と官舎の散水栓をひねって優しく女の子の手に水をかけています。「スカートが濡れるから立ったままで良いよ」よく気の付く先生たちです。
女の子もヘルメットをかぶった小さな頭をぺこりと下げて,勢いよく自転車を漕ぎだしていきました。
三人 油で真っ黒になった手を見つめながら,「朝から 可愛らしい笑顔を見ることができてよかったね」と,爽やかな気分で,始業時間を過ぎた学校に向かいました。
三年後,今度は,天草高校の制服を着た女の子と再会できるかな?
実乗(みの)る稲田(いなだ)は頭(こうべ)垂(た)る
4月9日(金)の午前中,新一年生に「実乗る稲田は頭垂る」の話をしました。
一般には「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の言葉の方が知られていると思います。
以前,自然写真家の赤坂友昭さんから教えてもらったのですが,元は「実乗る稲田は頭垂る」のようです。カメラのMINOLTAの社名もこの「実る稲田は頭垂る」から来ているということでした。意味はどちらも「学識や徳を積んだ行いが深まるほどに(学べば学ぶほどに人間性が高まって)謙虚になっていく」ということです。
私が,この言葉を一年生諸君に紹介したのは「これから天草高校で学び,人間性を磨いて,他者に感謝して自然と頭を下げられるような人間になってほしい」という思いからでした。
では,何故,私は一般に知られている「実るほど・・・」の言葉ではなく,「実乗る稲田は頭垂る」を紹介したのでしょうか?
「語源を知るということが大事だから」という思いもありました。しかし,一番の理由は,目に浮かぶ風景が違うからです。
一年生諸君にも話しましたが,「実るほど・・・」は,一本の稲穂が目に浮かんできます。
金色にぎっしり実を詰まらせた稲穂が,次第にその穂を垂らせている姿にしっかりフォーカスされていきます。
一方,「実乗る稲田は頭垂る」はどうでしょうか?
一面金色に輝く稲穂が,実を詰まらせた稲穂が,垂れて風になびいている広い稲田の風景が浮かんできませんか?
私は、このような天高になってほしいのです。
自ら精進鍛錬して己の徳性を高めていく「実るほど・・・」は素晴らしいと思います。
しかし一人ではダメなんです。
私は,天高のすべての生徒たちがそれぞれに努力を続け,時には隣人に肩を貸し,励ましあって,一枚の美しい田んぼに仕上がってほしいと願っています。一人の成功だけではなく,この天高に学ぶ皆が互いに協力し合い,互いを高め合って,一人では決して見ることのできない高みの光景を作り上げてほしいのです。
私には,忘れられない「礼」があります。
今から40年近く前,天草高校時代,私が学んだ体育の先生に,とても美しい礼をなさる先生がいらっしゃいました。今なおそのお姿が目に焼き付いて離れません。
毎時間,毎時間,授業の始まりと終わりに,すっと背筋を伸ばし,両掌をお尻の後ろに当てて,緩やかに礼を始めます。静かな無言礼。「よろしくお願いします」「ありがとうございました」という声が全身から伝わってくるような凛とした「礼」です。一瞬空気がピンと張りつめ,そして温かなものがこちらの胸の中に流れ込んできます。
私も,あんな気持ちのこもった美しい「礼」をしたいと常々思っていますが,まだまだです。
私は,他者に頭を下げることができるというのは,最高の美徳だと思っています。
自然体で頭を下げられる人になりたいと,高校以来思っていたからでしょうか,「実る稲田は頭垂る」の美しい田んぼの風景が頭に焼き付いて離れないのです。
お互いを認め,思いやり,助け合う学び舎,自然体で美しい礼ができる学び舎「天高」を目指していきたいと思います。
天高生とは何ぞや!
「天高生とは何ぞや!」
岩間先生の野太い声が澄み渡った青空に響きました。
結団式後の集会での一コマです。
札幌農学校を開いたクラーク博士は,生徒たちに「Be Gentlman!(紳士たれ!)」と呼びかけ続けました。
そして これを札幌農学校唯一のルールとしたのです。
岩間先生は,自らの頭で考え行動で答えを探し続けることを求めます。
「何のために学んでいるのか」「何のために生きているのか」
学びの根源的な問いが「天高生とは何ぞや!」の響きには込められているような気がします。
そして,この根源的な問いに応えてくれるという実感があるからこそ
発せられた言葉でもあるのです。
天草の空ははるか上空まで澄み渡っています。
生徒たちの澄み切った心を象徴するかのような一日でした。
ところで
その日の夕刻 もう日暮れてあたりも暗くなっていた頃のことです。
私が地域の区長さんのところで用事を済ませ
睦橋を渡って歩いて官舎に戻っていると
すれ違う天高生が 自転車に乗っている生徒も 歩いている生徒も
口々に「こんばんは」と声を掛けてくれます。
懐中電灯で足下を照らさないといけないほどの暗さで
しかも私は私服で歩いていましたので
おそらくは地域の方だと思って声を掛けてくれているのでしょう。
一人ひとりに「こんばんは」と返す毎に嬉しくなってきました。
「天高生とは何ぞや!」
一人ひとりが胸に宿して 天高生らしい行動を続けてくれることを願います!
着任のごあいさつ【校長ブログ】
みなさん こんにちは
この4月に天草高校に校長として着任しました馬場と申します。
少し遅くなりましたが、着任のごあいさつを申しあげます。
天草高校は5年ぶりとなります。
毎日 登下校の生徒たちが こぼれんばかりの笑顔であいさつしてくれます。
掃除の時間には 生徒たちが雑巾で床を丁寧に拭きあげています。
一緒に着任した多くの先生方が「天草高校は良いですね。大好きになりました!」と話しています。
素敵な生徒たちに囲まれ 心温かな先生方に恵まれ 再びこの天草高校に着任できたことを嬉しく思います。
着任初日に,私は先生方に「天高に来てよかった」「天高にやってよかった」「天高に勤めてよかった」「天高がここにあってよかった」とみんな言えるような学校にしたい,と話しました。
そのためには「進路志望の実現」と「生涯繋がりあえる友人の獲得」,そして「将来を生きる道標づくり」と「保護者同士の繋がり」が欠かせません。
しかし 天草高校としてできることや,しなければならないことを,ただ列挙しても,そこに心が寄り添っていなければ,この弾けるような生徒たちの笑顔は保てないのではないかと考えています。
今日 「天高ラジオ」に出演すると パーソナリティを務める2人の放送委員が笑顔いっぱいで話しかけてくれました。二人の笑顔と、周囲のスタッフの生徒たちの笑顔に囲まれ、いつの間にか自分も笑顔で高校時代のいろんなしくじりを話していました。笑顔には人を幸せにして解放してくれるのですね。あらためて実感しました。
「何かの縁で いま この場に集っている」「私とあなたの能力や思いをシンクロさせるとこんなことができるかも」と考えるだけで、心が湧き立ってきます。
生徒たちの笑顔という宝物を絶やさないために,そして笑顔のパワーを町中に広げていくために,私に何ができるのか,じっくり真剣に考えてみたいと思います。
今後とも 笑顔あふれる天草高校をどうぞよろしくお願いいたします。
キーワードは挑戦!! (令和3年1学期 倉岳校始業式で)
校庭の新緑が鮮やかな季節を迎えました。進級おめでとう。
倉岳校は今年7名の先生が入れ替わりました。いつもと違う雰囲気のスタートかもしれません。
私は,5年前も,この倉岳校でみんなの先輩の姿を見ながら1年間を過ごしました。
その時も今も,倉岳校に来るのが楽しくて楽しくて仕方がありません。
みんなが元気に学校に通ってきて,毎日笑顔で勉強や部活動やボランティア活動に全力で取り組んでくれているのを見ると,嬉しくなったのです。
特に,素敵だったのが,「校訓唱和」でした。
一人ひとりが自分の思いを込めて全力で校訓を声に出してくれました。言葉一つ一つがみんなの軀(からだ)の中に下りてきて,校訓が動き出しているような感覚があって,とても感動しました。人を感動させるというのは,とても素晴らしい才能です。これからも,是非大切にしていってください。
さて,新しい一年の始まりにあたり,私からお願い事があります。
それは,今年一年を「挑戦」の年にしてほしいということです。
倉岳校には「倉校は一人一人が主役,だから君が輝く」という教育スローガンがあります。このスローガンを活かすためにも,先生方は,学習活動では,生徒一人一人の状況や興味・関心,進路希望などに応じて,わかりやすくきめ細かな指導を行います。
また,県内唯一の海の運動会「マリンフェスタ」や,「秋桜祭(しゅうおうさい)」,をはじめとする学校行事,生徒会活動や部活動の中で,あなた方一人一人が生き生きと輝ける場面が多くあります。
さらに,幼稚園,保育園,小学校,中学校といっしょになった避難訓練や,長距離走大会,教育活動やボランティア活動,老人会や婦人会との交流などなど,地域に根差したユニークな取組もたくさんあります。
勉強,学校活動,地域行事,ボランティア,どの学習活動にも是非積極的に参加し,昨年の自分を一つでも二つでも上回ることができるよう,挑戦してみてください。昨年の自分との勝負です。
皆さんのもっている可能性は無限大です。前を向いて挑戦し続けることで,自分自身を高め,才能を開花させるチャンスが増えてきます。あなたたち一人ひとりがますますキラキラに輝いてきます。そして,明日から新たに入ってくる11名の新入生たちと,その下に続く地域の中学生,小学生,幼稚園,保育園の子どもたちを,見守り導く良い先輩となってください。
そして,自分の将来を,10年後の自分を想像して,具体的な進路を描いてください。
描いた進路像=「夢」を実現するために,焦らずコツコツと毎日の学習を積み重ねていきましょう。「心は熱く,しかし行動は冷静に」です。
今年一年,皆さん一人ひとりが,明るい笑顔で努力を続け,一回りも二回りも大きく成長してくれることを願って,年度始めの挨拶とします。頑張りましょう。