校長室からの風
週末は自宅で本を読もう!
今日は金曜日、週末を迎えます。例年であれば、陽春の季節で、生徒の皆さんは部活動に汗を流したり、友達と出かけたりと行動的になるところですが、今年は違います。「不要不急の外出を控える」ことが社会的に求められています。新型コロナウイルス感染症が、燎原の火の如く広がり、わが国は緊急事態に陥っています。本校は4月8日から学校再開となりましたが、この週末までは部活動を自粛し、生徒たちにも外出を控えるよう呼びかけました。
今、「Stay at Home!」(自宅で過ごそう)が世界中の共通語です。久しぶりに登校した2、3年生から話を聞くと、長期間を自宅中心で過ごし、「退屈です」、「オンラインゲームも飽きました」等の声が返ってきました。そのような生徒の皆さんに対し、読書を強く勧めます。
「船高生の皆さん、週末は自宅で本を読もう!」。
古(いにしえ)より、人々は紙の本に親しんできました。この伝統の力は強く、新しいメディア(媒体、手段)が次々に生まれてきても、人々に支持されてきた不易の営みなのです。テレビやネット動画の世界に比べ、本は文字中心の地味な世界に映りますが、より主体的な想像力が喚起されることになり、デジタル世代の皆さんにとって、紙の本の世界はかえって新鮮だと思います。オンラインゲームやネットの動画よりシンプルではありますが、読書する人だけがたどり着ける世界があるように私は思います。
公立の図書館は閉鎖されていますが、御船高校の図書室は開館しています。本校の図書司書の先生に言わせれば、「最初はライトノベル(軽めの娯楽小説)から入ってOKです」とのことでした。本校の図書室は管理棟3階にあり、ちょっと不便な場所ですが、窓外の見晴らしは良く、静かです。生徒の皆さんが気軽に利用できる雰囲気です。昨年度、生徒の皆さんへの貸出数が微増し、私は喜んでいます。新型コロナウイルス感染拡大の渦中の今こそ、多くの生徒の皆さんにもっと読書の楽しさを体験してほしいと望みます。
先日、図書室で様々な本を拾い読みしていた時、次の言葉に出会いました。
「読書の習慣を身に付けるということは、人生のほとんどすべての苦しみから逃れる避難所を自分のためにつくるということだ。」(W・サマセット・モーム)
自宅にいても、読書は、あなたをいろいろなところへ連れて行ってくれるでしょう。戸外は感染症のリスクがあります。自宅で読書することはまさに心の良薬になると思います。
保護者のみなさまへ
令和2年度、御船高校は4月8日(水)から始動しました。午前に新3年生と新2年生の始業式、午後に入学式を行いました。今年度、183人の新入生を迎え、全校生徒が525人です。そして、教職員が77人(非常勤8人含む)となります。全職員で生徒一人ひとりを支え、可能性を引き出す教育に努め、「自立と共生」の力を生徒たちに養っていく所存です。保護者のみなさまと学校は車の両輪のような関係にあると考えます。生徒の心身の成長という大きな目標に向かって同じ方向に連帯して進んで行きたいと思います。今年度も、保護者のみなさまには本校の教育活動に対して、ご理解とご協力のほどを宜しくお願いいたします。
さて、現在、新型コロナウイルス感染症の拡大が続いており、私たちの社会は未曽有の非常時にあります。本県でも熊本市を中心に感染者が出ており、同市の小、中、高校、支援学校及び同市にある県立学校は臨時休校状態です。県教育委員会から、熊本市外の県立高校の学校再開の方針が4月6日に示されたため、本校も昨日から学校再開となりました。
本校では、できる限りの感染予防対策に取り組んでおります。感染予防に不可欠な「密閉・密集・密接」の「三つの密」を回避するため、全校集会や学年集会は実施せず、教室での40分の短縮授業を行います。また、当面の間、学校の始業を1時間遅らせて9時30分開始とします。これで、路線バスで通学する生徒が車内で密集状態にならないよう余裕をもって登校できます。部活動についても、今週末まで自粛し、来週から徐々に短時間の活動を始める予定です。学校の時間割に基づいた計画的な学習、クラスメイトとの活動、そして軽めな運動等は高校生の免疫力を高めるに有効だと考えます。
しかし、学校がどんなに努力や工夫を重ねたとしても、一般の光学顕微鏡でも見えない微小なウイルスの感染を完全に防ぐことはできないでしょう。保護者のみなさまのご心配は十分に想像できます。高齢者や基礎疾患をお持ちの方がいらっしゃるご家庭、または医療や介護に従事されている保護者などにおかれては、子どもさんを学校に通わせることに不安とためらいを覚えられて当然と思います。どうか、遠慮なく学校にご相談ください。文部科学省や県教育委員会から通知が来ており、学校は非常時にあっては特別な配慮と対応をすることになっています。
学校は安全、安心な場所でなければなりません。このような厳しい状況だからこそ、保護者のみなさまと学校が強く連帯していきたいと願っています。
特別な一日、4月8日 ~ 始業式、入学式
4月8日という日は熊本県の県立高校にとっては特別の日です。新年度の最初の登校日であり、新3年生、新2年生にとってクラス及び新しい担任等の発表が行われます。そして、午後は入学式です。学校が最も躍動する一日と言っていいでしょう。しかし、今年は例年と状況が一変した中で4月8日を迎えました。
新型コロナウイルス感染症が熊本市を中心に広まり、同市にある県立高校は4月19日まで臨時休校が決まったのです。そして、本校を含む熊本市外の県立高校は感染予防に最大限努めての学校再開の方針が県教育委員会から4月6日に出されました。
3月末から学校を取り巻く環境は日に日に厳しくなり、「入学式はできるのだろうか?」という不安が私たち教職員に渦巻いていました。しかし、内容を徹底的に簡素化して時間を短縮し、会場の換気や席の間合いに留意し、入学生と保護者、そして教職員が参加する形式で準備をしてきました。
今日、4月8日(水)は桜花が青空に生える春爛漫の日和となり、進級した2,3年生が朝から笑顔で登校してきました。春休み中も部活動は自粛でしたから、久しぶりに学校が活気づきました。ウイルス感染を防ぐためには、密閉・密集・密接の「三つの密」を避けることが重要と言われています。本来なら、生徒たちの表情を見ながら新年度の思いを語りたかったのですが、生徒たちは各教室で待機し、放送を通じて1学期始業式を行いました。その後の担任、副担任発表では各教室で歓声が起こっていました。
そして、いよいよ午後の入学式です。会場の体育館は、職員が手分けして全ての席を除菌具で清潔にし、二階の窓を全開し風を入れて整えました。「熊本県立御船高等学校第74回入学式」を午後2時から挙行しました。普通科(芸術コース含む)106人、電子機械科77人の計183人の入学を許可し、校長式辞を読みました。全体で約20分。国歌斉唱、来賓のご挨拶、新入生代表挨拶等を省略した、誠に簡素な式となりました。
初々しさと緊張が入り混じった表情の新入生を見ていると、愛おしさを感じます。この新入生たちは、新型コロナウイルス感染症拡大の渦中に巻き込まれ、不安の中で高校入試を受け、合格発表も県教育委員会のインターネットで行われ、合格者説明会も十分にできませんでした。ようやく今日、入学式を行われ、晴れて高校生となったのです。
新型コロナウイルス感染拡大がいつまで続くのか、誰にもわかりません。私たちは長いトンネルに入っているようなものです。けれども、きっと出口が見えてくるでしょう。新入生の皆さん、一緒に出口を目指して進みましょう。皆さんはもう不安な受験生ではありません。「天神の森の学び舎」の一員になったのです。
満開の桜で迎える ~ 新年度の始動
令和2年4月1日(水)、新年度が動き出しました。例年思うことですが、3月31日と4月1日では、学校の空気がまるで違います。1日でがらりと雰囲気が変わるのは、やはり、人が変わるからでしよう。先ず、新規採用、転入の新しい同僚たちの存在です。そして、留任した職員にとっても、新しい同僚との出会いに触発され、新鮮な気持ちとなります。
今年度、御船高校は19人の転入職員を迎えました。その中に、今年度の県立高校新規採用の緒方教諭がいます。緒方教諭は、御船高校芸術コース書道専攻の出身で、本校で講師経験を重ね実力を養い、採用枠1人の高校書道教員の狭き門を通り、晴れて新規採用されたのです。しかも、初任が母校となり、二重の喜びとなりました。
本来なら、初任教諭は4月1日に県庁で辞令交付式が実施されるのですが、新型コロナウイルス感染症対策のため式は中止され、赴任先の学校で校長が辞令交付を行うことになりました。併せて古閑教育長の式辞を代読しました。
教育長からの初任者へのメッセージの中で二つの期待が述べられていました。1つ目は、「常に謙虚さを持ってほしい」ということ、2つ目は、「皿を割ることを恐れずに何事にも前向きにチャレンジしてほしい」ということです。「謙虚さ」と「チャレンジ」、この二つの言葉は、初任者に限らず、新年度の仕事初めに当たり、すべての教職員が胸に刻みたいものだと思います。
新型コロナウイルス感染症の拡大で、世界は混乱の渦中にあります。春休み中ですが、部活動は自粛中で、学校に生徒の影はありません。この異常な事態の中にあっても、自然の循環は変わらず、春となり、御船高校の桜は満開です。生徒たちの代わりに、こぼれんばかりの満開の桜が転入職員の皆さんを迎えました。天神の森の学び舎へようこそいらっしゃいました。
この未曽有の事態がいつまで続くのか。どこまで広がるのか。今は誰にもわかりません。私たちにできることは、学校教育再開に備えて準備すること、そして希望を持つことだと思います。
人類とウイルス感染症の闘いと共存は古代以来続いています。ペスト、インフルエンザ、天然痘から近年ではSARS、MERSのコロナウイスがあります。その度、多くの犠牲を払いながら、ワクチン、治療薬の開発等で克服してきました。人類の英知を信じ、私達一人ひとりは地道に自分の健康管理に努めるしかないと思います。
4月8日、簡素な形でよいですから、入学式を行いたいと願っています。
御船高校の満開の桜 しかし、学校に生徒の影はありません。
桜と共に見送る ~ 転退任式
春は別れの季節です。令和2年度の人事異動に伴い、御船高校では3月27日(金)午前に転退任式を会議室で実施しました。例年であれば、体育館に生徒を集めて大々的に行うところですが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、職員のみの内輪の式となりました。
このたびの人事異動により、木村事務長をはじめ18人の教職員の方が転勤、または退職となります。長い人では12年、短い人は5か月余りと勤務期間の長短はありますが、皆さんかけがえのない同僚であり、それぞれの責務を全うし学校を支えていただきました。一人ひとりに挨拶をいただきましたが、感極まり涙声となる方もおられました。皆さんの御船高校への深い思いが伝わってくる大切な時間となりました。できることなら、生徒たちに直接聴いてほしい最後のメッセージでした。新型コロナウイルス感染症は、学校を長期の臨時休校にしただけでなく、生徒たちから多くの学びの機会を奪っていると思います。やりばのない憤りを感じます。
春は出会いの季節でもあります。転退任の皆さんたちはこれから新しい多くの出会いが待っていることでしょう。扉を押し、新しい舞台に進んでください。そして、留任の私達にも新しい同僚や新入生との出会いがあります。
人事異動は私たち県立学校に勤める者にとって定めです。この時期は惜別の思いに包まれ、学校は感傷的な雰囲気となります。しかし、人事異動によって、県内広く人的なネットワークが形成されます。そして、転出者も留任者もお互い、初心に戻るかのような謙虚な気持ちになり、4月1日からの新年度に臨むことができるのです。経験を重ねてきたベテランの職員であっても、新しい職場に赴くことは不安です。人間関係を一から築き始めることになります。けれども、人事異動によって県内の学校に新しい風が流れるという大きな効果が生まれることを私達教職員は知っています。
御船高校正門脇にソメイヨシノが一本立っています。少し遅れていましたが、今6分咲き頃でしょうか。学校周囲の道路には街路樹として「陽光」という品種の桜が満開です。週末、御船町の城山公園(旧御船城)を訪ねてみました。町の中心を一望できる高台には桜が咲き誇っていました。
この時期になると有名な漢詩の一節を決まって思い出します。
「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同」
(ねんねんさいさいはなあいにたり さいさいねんねんひとおなじからず)
花は毎年変わらずに咲きますが、それを観る人は移り変わります。
城山公園(旧御船城)の桜
放送による式辞 ~ 令和元年度修了式(3月24日)
2月29日(土)に、この放送で新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため臨時休校に入ることを皆さんに伝えました。その後、わが国での感染者の拡大は止まらず休校期間を延長し、ようやく今日全員の登校となりました。そして、今日は3学期の終業式であると共に今年度、令和元年度の修了式です。
臨時休校の期間、皆さんのいない学校はがらんとして、校舎内を歩いても冷え冷えとした空気で寂しいものでした。廊下がとても長く感じました。教職員だけがいても学校は成立しません。生徒の皆さんがいてこその学校なのだと改めて思いました。今朝、皆さんが登校してくると、まるで学校に血が通い始め、蘇ったような感覚に包まれました。校舎もグラウンドも、天神の森も皆さんの登校を喜んでいるように思えます。
さて、新型コロナウイルス感染症拡大の非常事態は依然続いています。菜の花の鮮やかな黄色がまぶしく、桜も咲き始め、春の風景は例年と変わらないように見えるのですが、肉眼では見えない、未知のウイルスの脅威で、世界中が混乱しています。中国の内陸部から始まったウイルス感染はこの三か月で世界中に蔓延しました。国や地域を超えて巨大な市場が形成されているグローバル社会において、人の移動と共にウイルスが世界中にまたたくまに広がるのです。一時的に、人の往来を制限しても、もはや、私たちは江戸時代のような鎖国はできません。いったんウイルス感染症が流行すれば、それを封じ込めることがいかに難しいことか今回痛感しました。
しかし、こういう時こそ冷静になりましょう。熊本県では現在7人の感染が判明しています。けれども熊本県の県民人口は175万人ですから、感染率は0.000004%です。交通事故に遭う確率の方が遥かに高いのです。東京、大阪のような大都会であれば、満員電車など不特定多数の人々と接触する機会が多いですが、熊本県で生活している限り、大規模な行事や大型商業施設に進んで行かない限り、リスクは高くありません。
また、わが国の医療や公衆保健の体制は整っています。そして、こまめな手洗い、うがい、部屋の換気、日々の入浴、着替えなど身を清潔に保つこと、バランス良い食事、十分な睡眠など自ら免疫力を高めることが何よりの感染症予防だとわかっています。一人ひとりができることです。自分自身の健康を守るため、一日いちにちの日常生活を大切にしていきましょう。
ところで、春は別れと出会いの季節です。この年度末の人事異動で本校を離れていかれる先生方がおられます。人事異動は私たち県立学校に勤める職員にとっては定めです。今年度は新型コロナウイルス感染症予防のため退任式を開きません。転任退任の職員の皆さん方について、本日、各教室で紹介することになります。生徒の皆さんと共に惜別と感謝の気持ちでお送りしたいと思います。
結びになりますが、来年度、御船高校は創立99年を迎えます。新年度の始まりは4月8日水曜日。午後には入学式があります。フレッシュな後輩が入学してきます。来年度、私たちの御船高校、天神の森の学び舎がさらに輝くことを期待し、令和元年度の修了式式辞を終えます。
生徒が創った「御船町PRソング ~ 見に来るっきゃないでしょ」
臨時休校に入る直前の2月28日(金)、喜ばしいニュースが学校に届きました。熊本県教育委員会主催「令和元年度くまもとICTコンテスト」において本校から参加した作品が最優秀賞に輝いたのです。
ICT(Information Communication Technology)とは「情報通信技術」と訳されます。パソコンやタブレット端末、インターネットなどの情報通信技術を活用した教育手法をICT教育と呼び、生徒の興味関心を高めることに効果があり、各校において鋭意取り組んでいるところです。そしてまた、生徒たちもこのICTを駆使して学び、学習成果を発信することが日常的になっています。
今回、最優秀賞を受賞した作品は、芸術コース音楽専攻1年の女子生徒5人が創った「御船町PRソング ~ 見に来るっきゃないでしょ」です。ICT(情報通信技術)と芸術コース音楽専攻の組み合わせは少し不思議に思われるかもしれません。一般的には、理系、中でもコンピュータ等の情報系を専攻している生徒の得意分野のイメージがあるでしょう。しかし、そういう見方は一面的と言えます。今回、5人の女子生徒たちは自分たちの得意な音楽を生かし、ICTでさらに発展させて、魅力ある「御船町PRソング」に仕上げたのです。
1年生の「総合的な探究の時間」の学習で、学校が立地する御船町のことを調べ、その魅力を発信する歌を創ろうと思い、自分たちで作詞、作曲、編曲、そして演奏、歌を担当しました。さらに、御船町商工観光課のご協力を得て、町内の動画撮影に赴き、ミュージックビデオを作製しました。
「御船町PRソング ~ 見に来るっきゃないでしょ」の歌詞は4番まであります。1番は、恐竜のまちであることを強調、恐竜博物館の映像が出てきます。2番では、吉無田高原の景色が背景に流れます。3番は、音楽のまちとして九州唯一の音楽大学の平成音楽大学が紹介されます。そして4番は私たちの御船高校が登場し、最後はドローンの空撮で天神の森が映し出されてエンドとなるのです。時間は3分18秒。
全編を通して、5人の女子生徒が笑顔で幾度も現れます。初々しくも爽やかで、その姿が歌、曲と相まって手作り感を醸しています。「情報通信技術」のイメージとは真逆のようですが、この手作り感こそ高い評価の理由ではないかと思いたくなります。
「御船町PRソング ~ 見に来るっきゃないでしょ」を御船高校ホームページで公開しています。多くの方に視聴していただきたいと思います。
卒業、そして旅立ち ~ 令和元年度卒業式
令和2年3月1日(日)、熊本県立御船高等学校「第72回卒業証書授与式」を挙行しました。新型コロナウイルス感染拡大予防のため、来賓及び在校生(2年生)の出席はなく、吹奏楽部の演奏も行わない簡素な式典となりました。しかしながら、卒業生に対する私達教職員の祝福と励ましの思いはより熱いものがあります。そして、1,2年生の芸術コース美術専攻の生徒たちが、昨日のうちに3年生各教室の飾りつけや黒板にチョークで絵やメッセージを表現してくれていました。
日曜日ということもあり、例年以上に保護者の出席が多く、マスク着用にもご協力いただきました。会場の体育館は換気に努めたため寒さを感じる一方、凛とした雰囲気を醸し出していたように思います。
卒業生は普通科(芸術コース含む)105人、電子機械科67人の計172人です。平成29年春に入学し、以来3か年、天神の森に見守られ、起伏に富んだ高校生活を送ってきました。この学年は1年次「一点突破」、2年次「二人三脚」、3年次「猪突猛進」とそれぞれスローガンを掲げ、今田学年主任のリーダーシップのもと生徒たちを育ててこられました。
卒業式は学校教育の集大成です。在校生でただ一人参加した2年生の田中さん(生徒会長)は、送辞の中で、先輩たちと共に活動した生徒会の日々を振り返り涙声となりました。対する卒業生代表の野中君(前生徒会長)の答辞では、この先の行く手にどんな困難があろうとも進んでいく決意表明がなされ、頼もしく思いました。最後の校歌斉唱はよく声が出て力強いものでした。卒業生退場では、クラスごとに大きな声で保護者や教職員への感謝の気持ちを伝え、まことに爽やかでした。
卒業式は旅立ちの場です。生徒たちはこの天神の森の学び舎を羽ばたいていきます。まだ見ぬ多くの人々、景色、様々な物語が、彼らを待っています。自立へのわくわくした期待感に包まれていることでしょう。今日、新しい旅が始まるのです。
毎年こうして若人の旅立ちの場に立ち会えることは、とても幸せなことです。高校教師の道を選んで良かったと思います。
臨時休校に当たっての生徒への校長メッセージ
生徒の皆さん、おはようございます。
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために、御船高校は3月2日(月)から3月16日(月)まで15日間の臨時休校となります。翌17日(火)から学校再開の予定です。しかしながら、今後、熊本県の感染者が増えるなど事態が悪化した場合は休校期間が延長されます。その時は、学校のホームページや船高安心メールでお知らせしますので、注意しておいてください。
突然の休校ということで、皆さんには戸惑いや不安があると思いますが、今、私たちの社会は非常事態なのです。地震や台風などの自然災害とは異なり、日常の風景は変わらないように見えるのですが、肉眼では見えない、未知のウイルスが人から人へ感染し体調を崩し、最悪の場合は死に至るという脅威にさらされています。学校は閉じられた空間で集団生活を送る所です。いったんウイルス感染が猛威をふるうと止めようがありません。従って、私たちの健康と安全を守る公衆衛生という観点から、今回の臨時休校を決めました。このことをまず理解してほしいと思います。
この非常事態において、皆さんに求めることは、ウイルス感染から自分の身を守ってほしいということです。こまめな手洗い、消毒をはじめ規則正しい生活をして免疫力を高めてください。そして何より不特定多数の人と接触しないようできるだけ外出を控えてほしいのです。自分自身の健康と安全は自分で守るという意識を強く持って生活してください。自然災害がいったん起きれば、皆さんたち高校生は、人を助ける立場になりえると2学期の災害避難訓練で話しました。今回もまさにそうです。小学校、中学校も臨時休校です。弟や妹がいる人はあなたが勉強を教えたり、お世話をしたり、見守りをしてください。あなたたちはたいていのことができるはずです。非常時において家庭でのあなたの役割は大きいと思います。期待しています。
さて、明日は卒業式です。在校生の皆さんが出席せず例年にくらべ簡素な式となりますが、私達教職員で心をこめて卒業生を送り出したいと思います。臨時休校期間も私たち教職員は通常勤務です。3月10日(火)、11日(水)には高校入試の後期選抜検査を実施します。約1か月後には新しい後輩が入学してくることになります。明るい春は近くまで来ています。
新型コロナウイルス感染の恐怖で人々の心は疑心暗鬼となり、先行きの見えない不安に社会は覆われています。流言飛語、根拠のないデマ情報も飛び交っているようです。惑わされないでください。明けない夜はありません。夜明け前が最も暗いと言われます。皆さん一人一人が健康を維持し、笑顔で学校に帰ってくる日まで、私達教職員が学校を守っています。体調をはじめ何か心配な事があれば学校へ電話を掛けてください。私たちは一つのチーム御船です。支えあい、励ましあい、この困難な時期を乗りこえましょう。
「天神の森の学び舎」に一日も早く皆さんの笑顔と歓声が蘇ることを願って、臨時休校に当たっての校長メッセージを終わります。
書道部3年生による卒業作品(学校玄関)
ようこそ、小学生の皆さん ~ 御船小学校3年生児童の学校見学
御船小学校3年生の皆さんが2月19日(水)午後に来校されました。総合的な学習の時間の「御船町を知ろう」というテーマの学習活動の一環です。町内にある消防署、警察署等と共に高等学校も訪問先に選ばれたのです。中野校長先生自ら引率され、3年生の2クラス60人の元気な児童の皆さを迎えることができました。
児童の皆さんを2グループに分け、Aグループは電子機械科、芸術コースの順で、Bグループはその逆の順で見学してもらいました。電子機械科は、実習棟において、ロボット実演、マイコンカー実演、エンジンの仕組み実演などのコーナーを設け、少人数ごとに体験できるようにしました。ロボットが小さなピンポン玉を回収したり、輪を飛ばしたりする様子、また曲がりくねったコースをマイコンカーがマイコン制御で自動走駆する様子を間近で見て、「すごい!」という歓声や拍手が起きました。子どもたちの眼はきらきら輝き、担当する生徒たちも最初はぎこちなかったのですが、次第に得意満面の表情に変わっていきました。
しかし、児童たちからの質問は本質に迫る鋭いものがありました。マイコンカーのコーナーでは、「コース中央の白線をセンサーが読取り走行しているとのことですが、白線ではなく他の色でもいいのですか?」、「直角のコースをスピード落とさずになぜ曲がることができるのですか?」等。専門用語を使わず、原理をわかりやすく説明することは難しいものです。担当の高校生たちは職員の助言も受け、時にはしどろもどろになりながら答えていました。
芸術コースでは、音楽は手拍子でのリズム学習、美術は生徒たちが製作した「ゆるキャラ」の人気投票、書道では様々な筆を示し、何の動物の毛で作られているのかのクイズなどが行われました。
子どもは小さな大人ではありません。子どもは大人とは別の豊かな世界を持ち、鋭い感受性を備えていると思います。その子どもたちの純真な眼に見つめられ、御船高校生にとって特別な時間になったと思います。教えることは学ぶことであり、忘れかけていた学びの初心を取り戻すことができたのではないでしょうか。
今日御船高校を見学に来てくれた児童の皆さんが高校に入学するのは7年後です。私はもう定年退職しています。けれども、御船小から御船中へ、そして御船高校へと子どもたちの未来がつながっていくことを願っています。