「立春」を迎え、新しい一年の起点に立った日から、わずか半月。
つい先日、春の始まりを喜んだばかりだというのに、暦はもう次の節目である「雨水(うすい)」を迎えました。
空から降るものが雪から雨へと変わり、凍てついていた土が解け、水となる。
そんな自然のサイクルに合わせるかのように、私たちの農場でも、驚くほどの速さで「季節」と「世代」が動き出しています。
■ 受け継がれる「黄金色のバトン」
本日、農業科2年生の実習では、「不知火(しらぬい)」の収穫を行いました。
これまでこの農場の「不知火」を守り、収穫の重みを担ってきたのは、主に3年生たちでした。
しかし今日は、2年生がそのバトンをしっかりと受け取り、自分たちの手で収穫に臨みます。
ハウスの中は、まだひっそりと静かです。
柑橘特有のあの甘い香りが漂い始めるのは、収穫を終えた果実たちが貯蔵庫でじっくりと眠り、追熟を経てからのこと。
今はまだ、樹の上で寒さに耐え抜いた黄金色の果実たちが、静かにその時を待っています。
本日の実習には、卒業アルバムの制作業者さんも撮影に来てくださいました。
カメラを向けられ、誇らしげに「不知火」を掲げる2年生たち。その姿をレンズ越しに見つめていると、ふと胸に迫るものがあります。
「ついこの間、2年生に進級したばかりだと思っていたのに……」
農業の世界では、収穫は次のサイクルの始まりでもあります。
気づけばもう、彼らの「卒業」に向けた記録が始まっている。
時の針が刻む早さを、改めて実感せずにはいられません。
■ 足元の小さな春と、旅立ちの涙
実習の合間、休憩する生徒たちの足元にふと目をやると、そこには「ホトケノザ」や「ナズナ」が、春の柔らかな日差しを浴びて可憐に花を咲かせていました。
厳しい寒さを越え、誰に気づかれずとも、解け始めた土の上で精一杯に命を謳歌する野の花たち。
その姿は、一歩ずつ自立へと向かう生徒たちの姿とも重なり、温かな光に包まれて輝いています。
本校では間もなく、3年生が学び舎を去る日を迎えます。
この芦北の地で汗を流し、時には人知れず悔しい涙を流した日もあったことでしょう。
今の皆さんの心境は、もしかしたら冷たい雨の中にいるような、寂しさや不安が混ざり合ったものかもしれません。
しかし、農業を学ぶ皆さんは知っています。
「雨が降らなければ、芽は出ない」ということを。
そして、その芽は雨の潤いを得てこそ、やがて力強い茎を伸ばし、鮮やかな花を咲かせ、いつか誰かを笑顔にする豊かな実りへと繋がっていくのです。
これまでの3年間の努力、そして別れを惜しむその涙。
それらすべてが今の皆さんにとっての「恵みの雨」となり、カチカチに固まっていた不安を解かし、心という土壌を優しく、豊かに潤してくれました。
その潤いがあるからこそ、皆さんが新しく踏み出す地でも、希望という名の花が咲き誇ることを信じています。
■ 変化を慈しむ季節
実習地を歩いてみると、長靴の底から伝わる土の感触が、先週よりもずっと柔らかくなっていることに気づきます。
3年生が守ってきたこの農場を、2年生が「潤った土」と共に、引き継いでいきます。
卒業アルバムに刻まれる今日の笑顔が、いつか彼らが道に迷ったとき、自らを潤す記憶の雫となることを願って。
新しい命を育む、温かな季節がすぐそこまで来ています。
「雨水(うすい)」
一雨ごとに、希望が膨らむ芦北高校より。
〜 三ツ星フェス出店 & 今夜テレビ放送のお知らせ 〜
いよいよ今週末、農業科の学びの成果を披露する大きな舞台がやってきます。
3年生が中心となって大切に管理し、見事に実らせた「不知火」。
その最高の素材を受け継ぎ、1年生が自らの手でスイーツへと昇華させ、熊本の皆様にお届けします。
・芦高自慢の味が「三ツ星グルメフェス」に登場!
熊本市花畑広場一帯で開催される『食のみやこ熊本 三ツ星グルメフェス』に、芦北高校が参戦します!
今回お届けするのは、ジューシーな甘みの「不知火」と、香り高い「みなまた茶」を掛け合わせた特製マフィン。
芦北の自然と、生徒たちの愛情がぎゅっと詰まった、ここでしか味わえない自信作です。
・「プロ」の顔で挑む、妥協なき製造実習
現在、食品加工実習室では、本番に向けた最終段階の実習が急ピッチで進んでいます。
昨日は、焼き上がったマフィンの上に丁寧にアイシングを施す「仕上げ」を。
そして本日は、一つひとつを美しく包み上げる「包装」の実習に臨んでいます。
実習室に漂うのは、心地よい緊張感。
口にする方の安心・安全を守るため、徹底した衛生管理のもと、指先まで神経を研ぎ澄ませるその姿は、もう立派な「作り手」であり、プロの表情そのものです。
先輩たちが育てた農産物が、最高の状態で届くように——。
その一心で、最後まで一切の妥協なく実習に励んでいます。
【限定販売】2月21日(土)は花畑広場へ!
生徒たちの情熱が詰まったマフィンは、以下の日時・場所で販売いたします。
出店日: 2月21日(土)のみ
時 間: 11:00 〜(※売り切れ次第終了となります)
場 所: 熊本市 花畑広場(三ツ星グルメフェス会場内)
販売品: 芦北高校産 不知火とみなまた茶のマフィン
イベント全体の詳細については、こちらの公式サイトをご覧ください。
※本校の出店は21日(土)限定となります。
一つひとつが手作りのため、数に限りがございます。
生徒たちの努力の結晶を、ぜひお早めにお買い求めください!
・今夜19時、その「熱」がテレビで紹介されます
フェスを前に、嬉しいお知らせがもう一つ。
本日2月18日(水)夜19:00放送の『週刊山崎くん』(RKKテレビ)にて、本校生徒の活動の様子が紹介されます!
マフィン製造実習のこだわりや、日々ひたむきに農業と向き合う1年生たちの姿を、ぜひご覧ください。
テレビを通じて彼らの情熱に触れていただければ、週末のマフィンがより一層、心に響く味わいになるはずです。
先輩方が大切に育てた素材への想いを、1年生が確かな技術で形にしました。
芦北高校農業科の「絆」が詰まったマフィンと共に、最高の笑顔で皆様をお迎えします。
今夜はテレビの前で。
そして土曜日は、花畑広場でお会いしましょう!
〜 地域の現状を知り、志に触れる。就農教育講演会を開催 〜
2月17日(火)、農業科2年生18名を対象に「就農教育講演会」を開催しました。
地域の農業の未来を担う生徒たちにとって、現場の最前線で活躍する方々の知恵と情熱に触れる、極めて濃密な時間となりました。
■ 芦北農業の「いま」と、支える仕組みを知る
講演会の冒頭では、県芦北農業普及振興課の皆様より、芦北町における農業や担い手の現状について詳しく説明をいただきました。
特に、JAあしきたが取り組んでいる「リリーフ園」(農作業の負担を軽減し、持続可能な農業を支える仕組み)の紹介では、地域が一丸となって農業を守ろうとする体制について学び、自分たちが学ぶ農業が地域にいかに根差しているかを再認識しました。
■ なぜ、私は農業を選んだのか――若手農家の「志」
続いて、地元の若手農業経営者グループ「芦北4Hクラブ」より、林田様、田中様、菊池様の3名が登壇。
お一人ずつ、「農業を志した理由や背景」について講話をいただきました。
一度は別の道に進みながらも家業を継ぐ決意をしたエピソードや、自然と共に生きる道を選んだ背景など、それぞれの物語には「苦労」を上回る「農業への誇り」が溢れていました。
生徒たちは、自分たちの少し先を歩む先輩方の言葉に、真剣な眼差しで聞き入っていました。
■ 現場のプロと語り合う、農業のイメージと可能性
後半のグループワークでは、生徒たちの率直な「農業へのイメージ」をテーマに語り合いました。
といった問いに対し、講師の皆様はご自身の経験を交えながら、一つひとつ丁寧に応えてくださいました。
対話を通じて、生徒たちの中にある「大変そう」という漠然としたイメージが、「工夫次第でいくらでも面白くなる仕事」というポジティブなものへと変化していく様子が印象的でした。
■ 「学び」を「職業」として捉える一歩に
今回の講演会は、日頃の実習や座学での学びを、将来の具体的な「職業」として捉えるための非常に良い機会となりました。
地域の専門家や現役農家の皆様から贈られた「現場の熱」を肌で感じたことで、生徒たちは、自分たちが磨いている技術が地域の未来を支える仕事へと直結していることを、改めて実感したはずです。
普及振興課ならびに芦北4Hクラブの皆様、誠にありがとうございました!
〜 学科の垣根を越え、学校の総力を結集して交流会へ 〜
来週2月24日(火)、農業科2年草花専攻の生徒たちは、地域との大切な交流行事「フラワーアレンジメント交流会(五松園デイサービス)」に臨みます。
この本番を前に、本日6時間目、生徒たちはいつもの実習棟を離れ、福祉科の教室を訪ねました。
目的は、福祉の専門家から「高齢者の方々に寄り添う技術と心」を直接学ぶこと。
芦北高校の専門性を結集し、学校全体の力を最大化して地域に届けるための特別な挑戦です。
■ 「さすが福祉科!」温かな空気から始まった学び
授業は班ごとの学習形式で行われました。
まず驚いたのは、自己紹介の場面です。
一人が話し終えるたびに、福祉科の教室には自然と温かな拍手が沸き起こります。
「相手を認め、受け入れる」という姿勢が、福祉科では当たり前の文化として根付いています。
その空気感に触れただけで、農業科の生徒たちにとっては、他学科の専門性を肌で知る貴重な学びとなりました。
■ 実践的なロールプレイで学ぶ「寄り添う技術」
授業では、福祉科の先生と生徒によるロールプレイが披露されました。
具体的な場面を想定した指導を目の当たりにし、生徒たちはメモを取りながら、交流会当日の自分の動きをイメージしていました。
■ 技術の先にある、最も大切な「尊重の念」
麻痺への配慮や目線の合わせ方など、教わった技術はどれも即戦力になるものばかりです。
しかし、その授業を見守る中で強く感じたのは、「技術以上に大切なのは、コミュニケーションを図ろうとする気持ちや、相手を尊重する心である」ということです。
農業科の生徒にとっても、福祉科が普段どれほど深く「人」と向き合っているかを知る良い機会となり、同時に、自分たちが育てた花を届けるための「真のホスピタリティ」を学ぶ、極めて実践的な時間となりました。
■ チーム「芦北高校」で、いざ本番へ!
農業科の「花」と、福祉科の「心」。
学科の枠を越えて互いに高め合える環境こそ、本校の誇りです。
本日授かった「専門家からのバトン」を胸に、来週の本番では五松園の皆様に最高の笑顔と彩りをお届けしてきます!
事前学習は、明後日18日(水)も続きます。
「チーム芦高」の総力戦、どうぞご期待ください!
── 相棒図鑑 其の二 「鋏(はさみ)一族」 ──
シリーズ第二回は、私たちの指先の延長ともいえる、最も鋭利な相棒たちをご紹介します。
農場の冬は、剪定(せんてい)、収穫の季節。
静まり返った果樹園にはカチリ、カチリと、彼らが冷たい空気を切り裂く音が響き渡ります。
一口に「ハサミ」と言っても、その役割は驚くほど細分化されています。
しかし、彼らに共通しているのは「鋭利な刃を持つ一族」であるということ。
ひとたび扱いを誤れば、容赦なく牙を剥き、使い手にケガを負わせます。
「一族を怒らせてはいけない」——。
生徒たちが最初に教わるのは、道具への敬意と、正しい距離感。
すなわち、一族の「掟(おきて)」です。
その鋭さを常に維持し、正しく使いこなすことこそが、農場を預かる私たちの誇りでもあります。
■ 剪定鋏(せんていばさみ) 「一太刀に、翌年の実りを託す『剛の者』」
太い枝も一刀両断にする、一族の力持ち。
このハサミがどこを断つかで、来年の実りが決まります。
握った時のずっしりとした重みは、命の選別を託された責任の重さです。
■ 採果鋏・採収鋏(さいかばさみ・さいしゅうばさみ) 「果実を慈しみ、軸のみを射抜く『指先の魔術師』」
刃先が細く、反り上がった独特の形。
果実を傷つけず、軸だけを確実に捉えるための知恵です。
収穫の喜びを一番近くで支える、最も繊細な仕事人です。
■ 高枝鋏(たかえだばさみ) 「青空へ手を伸ばし、光の旋律を整える『天空の指揮者』」
人の手が届かない高い場所。
青空を背景にスッと伸びて、光の道を整えます。
地上から操る生徒との、呼吸の合った連携が必要です。
■ 充電式剪定鋏 「静寂の中に、一瞬の閃光を秘めた『新鋭の刺客』」
指先のわずかな動きで、硬い枝を吸い込まれるように切り落とす新世代。
その利便性の裏側には、これまでのハサミ以上に「掟」を守る緊張感が漂っています。
■ 事務のハサミ 「教室と農場を繋ぎ、現場の日常を支える『万能の影武者』」
肥料袋の開封から、「不知火」の重い果実を支える「玉吊り紐」のカットまで。
教室と農場の境界を越えてマルチに活躍する、身近な協力者です。
冬の寒さでかじかむ指先も、彼らを握り、カチリと音が響けば、不思議と心が引き締まります。
鉄の冷たさ、バネの跳ね返り、枝を断つ瞬間の衝撃。
生徒たちはハサミを通じて、樹と対話し、自分自身の集中力を研ぎ澄ませていきます。
次の春、美しい花が咲き誇るその日まで、一族と共に挑む真剣勝負は続きます。
「その一太刀(ひとたち)が、未来の果実を形作る。ハサミを磨くことは、磨く人の心も磨きます。」
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芦北町乙千屋20-2
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