2019年10月の記事一覧

熊本城で書く ~ 高校生書道パフォーマンスコンテスト

 

                         「この道は未来への滑走路

                             助け合い励まし合い

                        一歩一歩踏みしめ

                              飛躍

                        いざ翔び立て

                        私達の郷土熊本

                                 御船高校 書道部」

   書き上げられた大きな紙(縦3.5m、横5m)が生徒たちの手で立てられ観衆に披露された時、会場からどよめきに近い歓声と拍手がわきました。御船高校書道部の9人の生徒は、顔を斜め上にあげ、きりっとした表情で対面にそびえる熊本城天守閣を見つめていました。天下の名城と対峙する形の袴姿のりりしい女子高校生。お城には袴姿の高校生が似合う、と思いました。

 10月6日(日)、熊本城二の丸広場の特別ステージで、「秋のくまもとお城まつり」の一環として、初めて高校生書道パフォーマンスコンテストが開催されました。実行委員会から9月上旬に県高等学校文化連盟書道専門部にお話しがあり、高校生文化活動の発信の機会としてこれ以上の場はないと協力することになりました。そして、今回、7校が書道パフォーマンスコンテストに参加したのです。

 3年半前の熊本地震で被災して修復工事が行われてきた熊本城の天守閣ですが、ようやく大天守の外観修復が完了し、前日の10月5日(土)から特別公開が始まりました。小天守の修復工事は継続中で、付近は鉄骨と足場が組まれ、大小のクレーンが動いています。しかし、中心の大天守が外観をあらわし、漆喰壁の輝く白と屋根瓦の黒の対比が目に鮮やかです。澄んだ秋空のもと圧倒的な存在感です。

 修復進む熊本城において、伸び盛りの高校生たちが勢いある書道パフォーマンスを披露し、それぞれの言葉でお城、そして熊本にエールを送りました。5番目に登場した御船高校書道部は部員9人と参加7校では最少ですが、まさに少数精鋭です。熊本出身の音楽グループのWANIMAの曲「ともに」に合わせ、最初の挨拶から気合いの入った大きな声を発し、全員できびきびした動作と流れる筆遣いを見せ、スピード感で観衆を魅了したのです。

 最後に、司会者のインタビューを受けた部長の村田さんが、熊本地震からの復興の願いを込めて書き上げましたと力強く述べ、見事に締めくくりました。

 御船高校書道部は最優秀賞の栄冠を獲得しました。  

 

時代の風の推進力 ~ 高校生パラ・アスリート 

  「練習すれば練習するほど記録が伸びるのが魅力です!」と車いすマラソンのことを見﨑(みさき)さんは熱っぽく話します。一方、「坂道を上らなければならない時はとても苦しく、腕が上がらずに車いすが前に進まない感じです」と競技の本質も語ってくれます。

 御船高校2年生の見﨑真未さんは中学時代に交通事故に遭い、日常を車椅子で過ごすことになりましたが、本校入学後に車いす陸上に出会いました。御船高校陸上部員として、筋力トレーニングは他の部員たちと一緒に行いながら、熊本県車いす陸上競技連盟に所属し、水・金・土・日は車いす陸上競技の選手達と県総合運動公園等で練習する日々です。持ち前の負けん気の強さで、ハードな練習を重ね、肩をはじめ上半身が強化され、着実に記録が伸びています。

 去る8月に開催された「はまなす車いすマラソン」(札幌市)のハーフの部(マラソンの半分の距離)で優勝。9月末に実施された「第31回全国車いすマラソン大会 ハーフの部」(兵庫県丹波篠山市)でも優勝を飾りました。そして、来る10月12日(土)から開かれる「第19回全国障害者スポーツ大会」(茨城県)の熊本県代表選手として車いす陸上競技の100mと1500mに出場することになりました。10月1日(火)、全校朝礼の時に、体育館で見﨑さんの全国大会壮行会を開きました。そして、10月3日(木)、御船高校同窓会の役員方が来校され、全国大会出場を祝っての奨励金が校長室で伝達されました。

 ハーフマラソンをはじめロード(一般道路)の長距離を得意とする見﨑さんにとって、全国障害者スポーツ大会では久しぶりの競技場内のトラックでの短距離で、戸惑いはあるそうです。しかし、全力を尽くしたいと力強く抱負を述べました。

 学校生活と車いす陸上競技の両立に向け懸命に努力する彼女は御船高校にとっては大きな存在です。彼女の頑張りを、生徒と職員の全員が知っており、心から応援しています。その応援の輪は同窓会、地域の人々と広がっています。

 「私はまだまだメンタルが弱いんです。一緒に練習する先輩から、もっとメンタルを強くと言われています。」と見﨑さんは語りました。約21㎞のハーフマラソンを一人で走行することがいかに大変なことか、私たちには分かりません。上り坂をあえぎながら前へ前へと車いすを推進しようとする見﨑さんの姿を想像するしかありません。

 来年は「東京2020パラリンピック」の年です。パラスポーツへの人々の関心、注目度は今高まっています。見﨑さん、時代の風をうけ、推進力にしてください。東京の次はパリでパラリンピックが予定されています。

 熊本県を代表するパラ・アスリートがいることは御船高校の誇りです。

 

地域を知る ~ 1学年「総合的な探求の時間」

 

 金曜日の6限目、1年生は「総合的な探究の時間」です。現在の2年生までは「総合的な学習の時間」でしたが、新しい学習指導要領実施に伴い、今年度の新入生から「総合的な探究の時間」と変わりました。教科を横断し、総合的な学習活動を行う点は同じですが、「探究」という言葉が示すように、課題解決に向け仮説を立て、情報を収集し、調べていく過程(プロセス)が重視されることになります。自ら課題を見つけ、その課題の解決に取り組むことで、自らの進路や生き方も考えることにつながるものと期待されます。

 9月27日(金)の1年生の「総合的な探究の時間」には多くのゲストティーチャー(外部講師)がお見えになりました。1学期は上益城郡の産業や伝統文化を知る活動を行いました。それをふまえ、2学期は自らが住む地域について深く知り、住みやすい、あるいは住んでみたい「まち」を考えることがテーマです。そこで、実際に御船町でまちづくりに取り組んでいらっしゃる方々に説明や生徒へ助言をお願いすることにしたのです。

 1組 御船町企画財政課 藤本様

    住みよい御船町づくりの総合計画等について説明されました。

 2組 御船町企画財政課 高橋様

    町の人口増加に向け「移住・定住」の取り組みを述べられました。

 3組 御船町企画財政課 後藤様

    企業誘致の取り組みを紹介されました。

 4組 御船町観光協会 丸山様

    御船しあわせ日和(地元住民有志の組織)の活動を話されました。

 A組 御船町商工観光課 作田様

    町の振興における観光の役割を説かれました。

 B組 御船町商工会青年部 永本様

    商工会青年部の活動を伝えられました。

 授業の後半では、生徒たちが班をつくり、それぞれのゲストティーチャーの話をうけての話し合い活動を展開しました。誰もが住みやすい町にするにはどうすればよいのか? 産業、福祉、教育、交通、人口など様々な観点から長い期間をかけ検討されている事実に直面しました。高校生が好む商業施設ができれば解決できるような単純な問題ではないことを理解したようです。

 先ず、自分たちの地域を知ること。これが一歩目です。3割の生徒は上益城郡外から通学していますが、学校のある御船町について考えることは汎用性があります。家庭と学校だけでなく、地域社会という世界が広がっているのです。 

 生徒たちに新しい扉を開いてあげること。これが「総合的な探究の時間」のねらいと言えるかもしれません。今後学習が深まり、生徒の職業観や人生観が徐々に変容していくことを期待しています。