2019年10月の記事一覧
豊かな生活文化の継承 ~ 教室での煎茶道体験
御船高校には茶道部とは別に煎茶道(せんちゃどう)部があります。部活動として煎茶道部がある高校は県内では本校を含め2校しかありません。皆さんは、煎茶道をご存知ですか?
煎茶道は、江戸時代初期に明から渡来した禅僧の隠元(いんげん)によって伝えられたと言われています。従来の抹茶の茶道とは異なり、茶葉(玉露など)を用いる喫茶スタイルは江戸時代に広まっていきました。本校の煎茶道部の歴史は三十年ほどあり、東阿部流の太田翠展先生が長年にわたって御指導されています。現在、部員は1、2年生合わせて4人です。
10月30日(水)の3、4限、1年1組の「家庭基礎」の授業において、生徒がこの煎茶道を体験学習する機会を設けました。今の高校生にとって、お茶と言えばペットボトル飲料であり、急須でお茶を飲んだことがほとんどない生徒もおり、憂うべき現状だと思います。茶葉を計り、急須に入れてゆっくりと回し、茶碗に丁寧にお茶を注ぐという所作を通じて伝統的な生活文化を実感させたいというねらいから煎茶道の特別授業となりました。
太田翠展先生のご協力を得て、教室に敷物を用意し、生徒達はその周りにコの字型で座り、煎茶道具も生徒二人に一つ準備されました。普通教室ではありますが、落ち着いた雰囲気が醸し出されます。先ずは敷物の上で煎茶道部の生徒がお茶を点て、半島(はんとう)役の生徒がお茶とお菓子を運び、正座した代表生徒達がお茶を喫します。これを手本として、二人一組で机に座っている生徒達が見よう見まねでお茶を入れて飲んでいきます。今回はお湯を使わずに、冷たい水を用いての冷茶でした。
和服の太田翠展先生が生徒達に急須の回し方、お茶碗での飲み方、茶巾(ちゃきん)の使い方など細やかに教えてくださり、最初は動作がぎこちなかった生徒達も興味関心をもって取り組んでいました。私にはとても甘く心地良く感じた冷茶の味でしたが、幾人かの生徒が苦いと反応していたことが気になりました。普段、糖分過多のペットボトル飲料に慣れているからではないかと思ったからです。
お茶を飲むという簡単な行為ですが、敢えて一定の所作に則って時間をかけて味わうことで、えも言われぬ豊かな気持ちになります。これこそ先人が創り伝えてきた生活文化と言うものでしょう。
教室の生徒達の表情が和やかで落ち着いたものに変化していきました。