校長室からの風
放送による式辞 ~ 令和元年度修了式(3月24日)
2月29日(土)に、この放送で新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため臨時休校に入ることを皆さんに伝えました。その後、わが国での感染者の拡大は止まらず休校期間を延長し、ようやく今日全員の登校となりました。そして、今日は3学期の終業式であると共に今年度、令和元年度の修了式です。
臨時休校の期間、皆さんのいない学校はがらんとして、校舎内を歩いても冷え冷えとした空気で寂しいものでした。廊下がとても長く感じました。教職員だけがいても学校は成立しません。生徒の皆さんがいてこその学校なのだと改めて思いました。今朝、皆さんが登校してくると、まるで学校に血が通い始め、蘇ったような感覚に包まれました。校舎もグラウンドも、天神の森も皆さんの登校を喜んでいるように思えます。
さて、新型コロナウイルス感染症拡大の非常事態は依然続いています。菜の花の鮮やかな黄色がまぶしく、桜も咲き始め、春の風景は例年と変わらないように見えるのですが、肉眼では見えない、未知のウイルスの脅威で、世界中が混乱しています。中国の内陸部から始まったウイルス感染はこの三か月で世界中に蔓延しました。国や地域を超えて巨大な市場が形成されているグローバル社会において、人の移動と共にウイルスが世界中にまたたくまに広がるのです。一時的に、人の往来を制限しても、もはや、私たちは江戸時代のような鎖国はできません。いったんウイルス感染症が流行すれば、それを封じ込めることがいかに難しいことか今回痛感しました。
しかし、こういう時こそ冷静になりましょう。熊本県では現在7人の感染が判明しています。けれども熊本県の県民人口は175万人ですから、感染率は0.000004%です。交通事故に遭う確率の方が遥かに高いのです。東京、大阪のような大都会であれば、満員電車など不特定多数の人々と接触する機会が多いですが、熊本県で生活している限り、大規模な行事や大型商業施設に進んで行かない限り、リスクは高くありません。
また、わが国の医療や公衆保健の体制は整っています。そして、こまめな手洗い、うがい、部屋の換気、日々の入浴、着替えなど身を清潔に保つこと、バランス良い食事、十分な睡眠など自ら免疫力を高めることが何よりの感染症予防だとわかっています。一人ひとりができることです。自分自身の健康を守るため、一日いちにちの日常生活を大切にしていきましょう。
ところで、春は別れと出会いの季節です。この年度末の人事異動で本校を離れていかれる先生方がおられます。人事異動は私たち県立学校に勤める職員にとっては定めです。今年度は新型コロナウイルス感染症予防のため退任式を開きません。転任退任の職員の皆さん方について、本日、各教室で紹介することになります。生徒の皆さんと共に惜別と感謝の気持ちでお送りしたいと思います。
結びになりますが、来年度、御船高校は創立99年を迎えます。新年度の始まりは4月8日水曜日。午後には入学式があります。フレッシュな後輩が入学してきます。来年度、私たちの御船高校、天神の森の学び舎がさらに輝くことを期待し、令和元年度の修了式式辞を終えます。
生徒が創った「御船町PRソング ~ 見に来るっきゃないでしょ」
臨時休校に入る直前の2月28日(金)、喜ばしいニュースが学校に届きました。熊本県教育委員会主催「令和元年度くまもとICTコンテスト」において本校から参加した作品が最優秀賞に輝いたのです。
ICT(Information Communication Technology)とは「情報通信技術」と訳されます。パソコンやタブレット端末、インターネットなどの情報通信技術を活用した教育手法をICT教育と呼び、生徒の興味関心を高めることに効果があり、各校において鋭意取り組んでいるところです。そしてまた、生徒たちもこのICTを駆使して学び、学習成果を発信することが日常的になっています。
今回、最優秀賞を受賞した作品は、芸術コース音楽専攻1年の女子生徒5人が創った「御船町PRソング ~ 見に来るっきゃないでしょ」です。ICT(情報通信技術)と芸術コース音楽専攻の組み合わせは少し不思議に思われるかもしれません。一般的には、理系、中でもコンピュータ等の情報系を専攻している生徒の得意分野のイメージがあるでしょう。しかし、そういう見方は一面的と言えます。今回、5人の女子生徒たちは自分たちの得意な音楽を生かし、ICTでさらに発展させて、魅力ある「御船町PRソング」に仕上げたのです。
1年生の「総合的な探究の時間」の学習で、学校が立地する御船町のことを調べ、その魅力を発信する歌を創ろうと思い、自分たちで作詞、作曲、編曲、そして演奏、歌を担当しました。さらに、御船町商工観光課のご協力を得て、町内の動画撮影に赴き、ミュージックビデオを作製しました。
「御船町PRソング ~ 見に来るっきゃないでしょ」の歌詞は4番まであります。1番は、恐竜のまちであることを強調、恐竜博物館の映像が出てきます。2番では、吉無田高原の景色が背景に流れます。3番は、音楽のまちとして九州唯一の音楽大学の平成音楽大学が紹介されます。そして4番は私たちの御船高校が登場し、最後はドローンの空撮で天神の森が映し出されてエンドとなるのです。時間は3分18秒。
全編を通して、5人の女子生徒が笑顔で幾度も現れます。初々しくも爽やかで、その姿が歌、曲と相まって手作り感を醸しています。「情報通信技術」のイメージとは真逆のようですが、この手作り感こそ高い評価の理由ではないかと思いたくなります。
「御船町PRソング ~ 見に来るっきゃないでしょ」を御船高校ホームページで公開しています。多くの方に視聴していただきたいと思います。
卒業、そして旅立ち ~ 令和元年度卒業式
令和2年3月1日(日)、熊本県立御船高等学校「第72回卒業証書授与式」を挙行しました。新型コロナウイルス感染拡大予防のため、来賓及び在校生(2年生)の出席はなく、吹奏楽部の演奏も行わない簡素な式典となりました。しかしながら、卒業生に対する私達教職員の祝福と励ましの思いはより熱いものがあります。そして、1,2年生の芸術コース美術専攻の生徒たちが、昨日のうちに3年生各教室の飾りつけや黒板にチョークで絵やメッセージを表現してくれていました。
日曜日ということもあり、例年以上に保護者の出席が多く、マスク着用にもご協力いただきました。会場の体育館は換気に努めたため寒さを感じる一方、凛とした雰囲気を醸し出していたように思います。
卒業生は普通科(芸術コース含む)105人、電子機械科67人の計172人です。平成29年春に入学し、以来3か年、天神の森に見守られ、起伏に富んだ高校生活を送ってきました。この学年は1年次「一点突破」、2年次「二人三脚」、3年次「猪突猛進」とそれぞれスローガンを掲げ、今田学年主任のリーダーシップのもと生徒たちを育ててこられました。
卒業式は学校教育の集大成です。在校生でただ一人参加した2年生の田中さん(生徒会長)は、送辞の中で、先輩たちと共に活動した生徒会の日々を振り返り涙声となりました。対する卒業生代表の野中君(前生徒会長)の答辞では、この先の行く手にどんな困難があろうとも進んでいく決意表明がなされ、頼もしく思いました。最後の校歌斉唱はよく声が出て力強いものでした。卒業生退場では、クラスごとに大きな声で保護者や教職員への感謝の気持ちを伝え、まことに爽やかでした。
卒業式は旅立ちの場です。生徒たちはこの天神の森の学び舎を羽ばたいていきます。まだ見ぬ多くの人々、景色、様々な物語が、彼らを待っています。自立へのわくわくした期待感に包まれていることでしょう。今日、新しい旅が始まるのです。
毎年こうして若人の旅立ちの場に立ち会えることは、とても幸せなことです。高校教師の道を選んで良かったと思います。
臨時休校に当たっての生徒への校長メッセージ
生徒の皆さん、おはようございます。
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために、御船高校は3月2日(月)から3月16日(月)まで15日間の臨時休校となります。翌17日(火)から学校再開の予定です。しかしながら、今後、熊本県の感染者が増えるなど事態が悪化した場合は休校期間が延長されます。その時は、学校のホームページや船高安心メールでお知らせしますので、注意しておいてください。
突然の休校ということで、皆さんには戸惑いや不安があると思いますが、今、私たちの社会は非常事態なのです。地震や台風などの自然災害とは異なり、日常の風景は変わらないように見えるのですが、肉眼では見えない、未知のウイルスが人から人へ感染し体調を崩し、最悪の場合は死に至るという脅威にさらされています。学校は閉じられた空間で集団生活を送る所です。いったんウイルス感染が猛威をふるうと止めようがありません。従って、私たちの健康と安全を守る公衆衛生という観点から、今回の臨時休校を決めました。このことをまず理解してほしいと思います。
この非常事態において、皆さんに求めることは、ウイルス感染から自分の身を守ってほしいということです。こまめな手洗い、消毒をはじめ規則正しい生活をして免疫力を高めてください。そして何より不特定多数の人と接触しないようできるだけ外出を控えてほしいのです。自分自身の健康と安全は自分で守るという意識を強く持って生活してください。自然災害がいったん起きれば、皆さんたち高校生は、人を助ける立場になりえると2学期の災害避難訓練で話しました。今回もまさにそうです。小学校、中学校も臨時休校です。弟や妹がいる人はあなたが勉強を教えたり、お世話をしたり、見守りをしてください。あなたたちはたいていのことができるはずです。非常時において家庭でのあなたの役割は大きいと思います。期待しています。
さて、明日は卒業式です。在校生の皆さんが出席せず例年にくらべ簡素な式となりますが、私達教職員で心をこめて卒業生を送り出したいと思います。臨時休校期間も私たち教職員は通常勤務です。3月10日(火)、11日(水)には高校入試の後期選抜検査を実施します。約1か月後には新しい後輩が入学してくることになります。明るい春は近くまで来ています。
新型コロナウイルス感染の恐怖で人々の心は疑心暗鬼となり、先行きの見えない不安に社会は覆われています。流言飛語、根拠のないデマ情報も飛び交っているようです。惑わされないでください。明けない夜はありません。夜明け前が最も暗いと言われます。皆さん一人一人が健康を維持し、笑顔で学校に帰ってくる日まで、私達教職員が学校を守っています。体調をはじめ何か心配な事があれば学校へ電話を掛けてください。私たちは一つのチーム御船です。支えあい、励ましあい、この困難な時期を乗りこえましょう。
「天神の森の学び舎」に一日も早く皆さんの笑顔と歓声が蘇ることを願って、臨時休校に当たっての校長メッセージを終わります。
書道部3年生による卒業作品(学校玄関)
ようこそ、小学生の皆さん ~ 御船小学校3年生児童の学校見学
御船小学校3年生の皆さんが2月19日(水)午後に来校されました。総合的な学習の時間の「御船町を知ろう」というテーマの学習活動の一環です。町内にある消防署、警察署等と共に高等学校も訪問先に選ばれたのです。中野校長先生自ら引率され、3年生の2クラス60人の元気な児童の皆さを迎えることができました。
児童の皆さんを2グループに分け、Aグループは電子機械科、芸術コースの順で、Bグループはその逆の順で見学してもらいました。電子機械科は、実習棟において、ロボット実演、マイコンカー実演、エンジンの仕組み実演などのコーナーを設け、少人数ごとに体験できるようにしました。ロボットが小さなピンポン玉を回収したり、輪を飛ばしたりする様子、また曲がりくねったコースをマイコンカーがマイコン制御で自動走駆する様子を間近で見て、「すごい!」という歓声や拍手が起きました。子どもたちの眼はきらきら輝き、担当する生徒たちも最初はぎこちなかったのですが、次第に得意満面の表情に変わっていきました。
しかし、児童たちからの質問は本質に迫る鋭いものがありました。マイコンカーのコーナーでは、「コース中央の白線をセンサーが読取り走行しているとのことですが、白線ではなく他の色でもいいのですか?」、「直角のコースをスピード落とさずになぜ曲がることができるのですか?」等。専門用語を使わず、原理をわかりやすく説明することは難しいものです。担当の高校生たちは職員の助言も受け、時にはしどろもどろになりながら答えていました。
芸術コースでは、音楽は手拍子でのリズム学習、美術は生徒たちが製作した「ゆるキャラ」の人気投票、書道では様々な筆を示し、何の動物の毛で作られているのかのクイズなどが行われました。
子どもは小さな大人ではありません。子どもは大人とは別の豊かな世界を持ち、鋭い感受性を備えていると思います。その子どもたちの純真な眼に見つめられ、御船高校生にとって特別な時間になったと思います。教えることは学ぶことであり、忘れかけていた学びの初心を取り戻すことができたのではないでしょうか。
今日御船高校を見学に来てくれた児童の皆さんが高校に入学するのは7年後です。私はもう定年退職しています。けれども、御船小から御船中へ、そして御船高校へと子どもたちの未来がつながっていくことを願っています。