一期一会
新年度のスタートにあたって
新年度のスタートにあたって 校長 松﨑 聡一郎
この4月に松橋東支援学校に赴任しました、校長の松﨑聡一郎と申します。私にとって松橋東支援学校は、教員生活をスタートさせた思い出深い学校です。32年ぶりの本校での勤務を大変懐かしく、また、嬉しく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、令和2年度は、4月8日に新学期をスタートしました。学校は、3月から長い休みが続いていましたので、久しぶりの学校での再会に、子どもたちも迎える先生たちも、笑顔にあふれたスタートとなりました。翌日の9日には、規模を縮小してではありましたが、入学式を挙行し、幼稚部1人、小学部3人、中学部1人、計5人の新入生を迎えることができました。
しかし、順調なスタートが切れたと思った矢先、本県における新型コロナウイルスの感染拡大が危惧されたため、4月14日から再び休校となってしまいました。休校は再延長され、5月末まで継続中です。
このような中、本校では、熊本県こども総合療育センター、希望ヶ丘病院、こころの医療センターに御了解をいただき、しっかりとした健康管理を行ったうえで、職員が交替で子どもたちのところに訪問をさせていただいています。限られた時間ですが、学習支援を行ったり話し相手になったりして、子どもたちの様子の確認とともに、不安やストレスの軽減にも役立っているようです。また、職員は、授業再開にむけて行事や日程の見直し、教材の作成など、子どもたちの登校を心待ちにしながら、日々その準備にも取り組んでいるところです。
今、世の中は不測の事態にあり、学校も例年通りとはいかず確かな見通しが持てない状況です。しかし、いかなる状況にあっても、学校の中心は子どもたちであることに変わりはありません。こういう時だからこそ、子どもたちの成長のために、子どもたちの思いや保護者の皆様、関係医療機関の皆様の期待に沿えるよう、より一層しっかりとした教育活動を行っていかなければと思っています。
本年度も、本校に対します御理解と御支援をよろしくお願いいたします。
『ありがとう』
『ありがとう』 松橋東支援学校長 髙木 佐由理
『小鳩の森』のいちょうもすっかり落葉し、木の下は一面の黄色いじゅうたん。栴檀の実も色づき小鳥たちの訪問を待っています。森全体が冬を迎えるための支度をしているようです。
さて12月初め、熊本県障害児・者親の会連合会主催「障がい児者・家族の作文発表会」がくまもと県民交流館パレアで開かれました。テーマは『ありがとう』。熊本県内の特別支援学校で学ぶ児童生徒が日頃から『ありがとう』と感じていることを綴っていました。ある人は家族に向けて、ある人は学校の先生に対して、ある人は生活している施設の方々に対してのメッセージ。自分の障がいと向き合い、さまざまな壁を乗り越えて発した『ありがとう』のメッセージは聞く者に大きな感動を与えました。発表を聞きながら、改めて『ありがとう』は人の心を温かく、前向きにしてくれる魔法の言葉、宝石のような言葉なのだと実感しました。本校でも、素直に『ありがとう』『ごめんなさい』という言葉を交わせる環境でありたいと思います。
今年は、旭化成名誉フェローである吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されました。吉野さんが化学に興味を持つきっかけを作ったのは小学4年生の担任の内藤先生から薦められた一冊の本『ろうそくの化学』。吉野さんは「わたしの好奇心をくすぐっていただきました。」と感謝を述べています。北海道で御存命の内藤先生は覚えていないとか。先生の何気ない一言が、子どもたちを勇気づけたり、気持ちを明るくしたり、あるいは人生を大きく左右したりすることもあるということを肝に銘じながら子どもたちに関わる職員集団「チーム松東」でありたいと思います。
2学期も本校の教育活動に御理解と御協力をいただきました全ての方に、深く感謝申し上げます。
子どもたちは、本校では地域に出かけての買い物学習や社会科見学、現場実習などで体験をとおして多くの学びを得ました。また、学校間交流や居住地校交流では校種間で同年代の仲間とともに活動することでお互いを理解し合い、繋がりを作ることができました。病院の訪問教育では、毎日の自立活動の時間を中心に生活全般をとおして各自の目標に向かって歩みを進めています。その歩みは一人ずつ違っていますが、焦らずに一歩一歩着実に進めてほしいと願っています。
あと少しで令和元年が暮れます。全ての人にとりまして、新年が希望に満ちた素晴らしい年でありますよう心からお祈り申し上げます。
すべては子どもたちのために
『すべては子どもたちのために』
校長 髙木 佐由理
4月の定期異動で小国支援学校より赴任しました髙木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
玄関から見える『小鳩の森』は、新緑から深緑へと変わり、耳を澄ますと雀、鶯、小綬鶏などさまざまな野鳥の囀りが聞かれ、子どもたちは季節を存分に味わいながら毎日を過ごしております。
本年度は小学部1名、中学部3名の新入生を迎え、スタートしました。幼児児童生徒数は6月1日現在、肢体不自由教育が幼稚部4名、小学部9名、中学部4名、病弱訪問教育が小学部9名、中学部10名、合計36名です。それを支える本校職員は33名。『明るく 素直で ねばり強い 子ども』の姿を目指して、日々の教育活動に取り組んでいます。
さて、今年度も地域の学校と多くの『交流及び共同学習』を計画しています。幼稚部は松橋幼稚園、小学部は当尾小学校、豊福小学校、中学部は松橋支援学校や松橋西支援学校の中学部などです。同年代の幼児児童生徒との交流は、多くの学びを得、子どもたちを大きく成長させてくれます。子どもたちの変化が今から楽しみです。
本校は、今年度から総合型コミュニティ・スクールがスタートしました。この2年間で構築した災害時防災体制は継承しつつ、さらに、この宇城地域の人的、物的教育資源を最大限に生かした教育課程を編成し、教育目標である『生命の尊重・深い愛情を基盤に、幼児児童生徒一人一人の個性や特性を大切にして可能性を最大限に伸ばし、豊かな感性を育み、主体的・自立的に生きていこうとする幼児児童生徒を育成する』の実現に向かって「チーム松東」で取り組んで参ります。
どうか本校の教育活動に御理解、御支援をいただきますようよろしくお願い申し上げます。
不完全だからこそ
「不完全だからこそ」
中庭のチューリップがきれいに花を咲かせています。柔らかな陽ざしの中、3月15日に平成30年度の卒業証書授与式を本校と希望ヶ丘病院教室で行いました。本校では幼稚部2名、小学部4名、中学部1名の計7名が、希望ヶ丘病院教室では中学部の3名が、多くの御来賓や保護者の皆様の御臨席の下、先生方や在校生の励ましと祝福を受けながら、それぞれ卒業証書を手にし、涙あり笑顔あり、爽やかな風のように旅立っていきました。在籍期間こそ長短ありましたが、大好きな保護者の皆様と医療・療育のスタッフや先生方に支えられ、日々の遊びや学習活動等を通して、また交流や職場体験等を通じて生活経験を増やし、それぞれ内に秘めた力を蘇らせながら、たくましく成長しましたね。松東でのこれまでの学びを土台に、新たなステージでも明るく素直でねばり強く、自分の成長を楽しみながら、豊かな人生を歩まれることを心から願っています。
在校生は一様に、卒業生とのお別れで、心にぽっかり穴が開いたように感じているのではないでしょうか。卒業生はいつでもあなた方を応援してくれていますよ。心の支えにして、松東での新たな学びと療育センター等での生活に頑張りましょう。
ところで、皆さんは定めた目標を達成するために日々努力していますか?私は、ずいぶん努力して頑張ったつもりでも、周囲から不十分なところを指摘されたりすると、がっかりして意気消沈してしまいます。なかなか理想の自分には近づけませんね。そこで、負け惜しみではありませんが、もともと「人は不完全だからこそ成長できるのだ」と思うことにしています。どんなに完全に近づけても決して完璧ではない。ですから、これでよいと満足せず、理想の自分をめざして努力を重ねましょう。成果が感じられなくても、今は飛躍のためのエネルギーを蓄積しているのだと考えるのです。心の持ちようで、ずいぶん楽になりますよ。
努力してもうまくいかないことがあります。辛いときや淋しいときには、校歌にもあるように、「不知火の海を望」んだり「雁回の空を仰」いだりして、人間って何てちっぽけなんだろうと思ってほしい。そして、くよくよせずに「試練に耐えて」、「秘めし力」を「よみがえ」らせる“笑顔輝くあなた”であってください。
結びに、保護者の皆様、こども総合療育センター、希望ヶ丘病院、こころの医療センターのスタッフの皆様、そして地域の皆様方には、この一年、本校の教育活動に御理解と御協力を賜り、誠にありがとうございました。お子様の健やかな成長を切に願い、お礼の言葉といたします。
平成31年3月29日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
自分なりの視点
「自分なりの視点」
2学期も、先生方のいろんなアイデアで、教室での授業や校外での体験学習等、様々な学習に主体的に取り組み、そして何より楽しく学ぶことができたように思います。
幼稚部では音楽会をはじめ、松橋幼稚園や老人会との交流もありました。同世代のお友だちやお年寄りの方々にも喜んでいただきましたね。
小学部では、豊福小学校や当尾小学校との交流及び共同学習や、イオンモール熊本での買い物学習等がありました。いつも来ていただく豊福小学校や当尾小学校に訪問することができました。どんな学校から来てくれていたのか、どんな学校生活を過ごしているのか分かってよかったですね。お互いを知るのはとても大切なことです。訪問教育を受けている二人も今日はスクーリングという形で参加してくれました。付き添いの看護師長さんもおいでくださり感謝いたします。2学期は紙を丸めたり、「もう一回お願いします」を伝えたり、それぞれの学習に頑張りましたね。また、学習発表会では立派に発表することができました。
中学部では、広島方面への修学旅行や、職場見学等がありました。教室での学習内容に関連付けて深めることができたと思います。修学旅行では、遠く学校を離れて、平安時代に造られた厳島神社を見学したり、平和公園や原爆資料館を訪れて戦争や原爆について学んだりすることができました。かけがえのない平和への祈りとともに、松東のお友だちや先生と折った千羽鶴を捧げてくれました。
また、皆で取り組んだジャムジャムタイムでの制作活動、季節を感じる学習も楽しかったですね。幼稚部と小学部では、野菜や木の実を使った工作や飾り付け、小学部と中学部では豊福神社周辺での写生大会や、調理学習等もありました。
希望ヶ丘教室とこころの医療センター教室の皆さんは、2学期も治療を受けながら授業等によく取り組みましたね。制作活動や教科等に関連付けた授業に、主体的に取り組んで課題を考えたり、自力で解こうとしたりするときの皆さんの表情は実に輝いていましたよ。
希望ヶ丘病院の行事として日本一長い石段登りや、こころの医療センター教室では皆さんの発案による英語劇にもチャレンジしました。中には、前籍校への試験登校に出かけた人もいますね。
先日、ガンの治療に対する免疫療法に道を開いた功績が評価され、京都大学の本庶(ほんじょ)教授がノーベル医学・生理学賞を受賞されました。教授は、科学を志す小中学生に次のことを話しています。「何か知りたいと思う、不思議だなと思う心を大切にすること」「教科書に書いてあることを信じない→鵜呑みにしない。本当はどうなっているのか」「自分の目でものを見る」「納得する、そこまで諦めない」と。
いろんな事象に対して私たちが不思議に思う心や感性を大切にし、自分で確認して納得するまで諦めない姿勢を持つことが、多くの人々の幸せにつながる発見や仕事につながるものです。私たちは生涯学び続けることになります。拠り所になるもの(基礎)を大切にしながら、自分の感性を大事にして主体的に学び、自分なりの視点で物事を考えるようにしたいですね。
さて、今年も残り十日となりました。年末年始も元気に過ごしましょう。一年を振り返り、新しい年を迎える準備と、一年の計を立てるようにしてください。3学期は、新しい学校や学部、学年に上がる準備をする学期にもなりますよ。
結びに、病院のスタッフの皆様、並びに保護者の皆様には本校教育に対していつもご理解とご協力をいただき感謝申し上げます。どうぞよいお年をお迎えください。
平成30年12月21日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満