お知らせ

大関山
 大関山は標高900mで芦北方面から見ると,なだらかな斜面が山頂から西に伸び,堂々とした山容を誇っています。
 大関山の上部は,高K安山岩の厚さ100mの溶岩流で,西へ傾斜した平坦な面をつくっています。この溶岩流は基底部にクリンカーを敷く場合がありますが,大部分は板状節理が発達しています。その下は低K安山岩の厚い凝灰角礫岩~火山角礫岩,薄い溶岩および降下火山灰層からなり,全体の厚さが550m以上あります。
 大関山へは芦北町大野からの林道がよく整備され,頂上まで車で登れます。この林道の途中に観察ポイントがあります。このルートでは典型的な低K安山岩の凝灰角礫岩と溶岩の産状を見ることができます。


火山の形というと霧島のような山容を思い浮かべるけれども、
高K安山岩からなる地形はなぜこのように平らなのだろう?
以下の文章が解答です。


2.大滝溶岩について
 肥薩火山区の火山活動により,今から215万年前に噴出した溶岩で,湯出の大滝に典型的に見られることから大滝溶岩とよばれています。この溶岩は中尾山,長崎,江添などの台地に分布し,恋路島や月浦で八代海に没しています。
 この溶岩の岩質は,日本の火山に普通に見られる安山岩ですが,以下のような特徴があります。
① 平坦な地形をつくる(面積約36㎞2,標高300~0m)。
 安山岩質の溶岩からできている火山は円錐形の成層火山が多いのですが,ここでは溶岩台地で,表面地形は平坦になっています。これは溶岩の粘り気(粘性)の違いによるものです。安山岩質の溶岩は地表で1000℃前後ですが,この溶岩はそれ以上に温度が高く,粘り気の小さい流れやすい溶岩であったと考えられます。
② 厚さが非常に厚く(60~120m),噴出量も多い(桜島の大正溶岩の3倍以上)。
 この溶岩は途中で噴出が休止したような境目が見えないので,一度に流れ出したもののようです。それも,一つの中心火口から流れ出したものではなく,割れ目か,多数の火口から同時に溶岩が溢れ出したものと考えられます。
③ 溶岩の断面には板状節理がほぼ下から上まで見られる。
 大滝溶岩が懸っている岩石にはたくさんの平行な割れ目が入っています。これは板状節理と呼ばれています。板状節理は溶岩が流れるとき,地面との摩擦で止まろうとする外側と,流れ続けようとする内側との間で力が加わり,割れたものです。ですからこの節理は溶岩流の底面にほぼ平行になっています。
④ 水俣地域の安山岩のなかで比較的K2Oに富んでいる。
 比較的K2Oに富んでいるこの安山岩は鬼岳系岩類(高K安山岩)とよばれていました。最近,この安山岩マグマの元のマグマ(親マグマ)はMgOに富む安山岩(高K高Mg安山岩)であるという研究報告がされています。なお,比較的K2Oに乏しい安山岩を矢筈岳系岩類(低K安山岩)とよんでいます。

3.大滝溶岩の噴出様式
 大滝溶岩は噴出口はよくわかりませんが,平坦な面をつくり,噴出量が膨大であることから,中心にある一つの火口から流れ出したものではなく,たくさんの火口または,割れ目から,高温の粘り気の小さい流れやすい溶岩が,先に流出した溶岩が固体(岩石)にならないうちに次々に洪水のように溢れ出し,溶岩の厚さが厚くなっていき,溶岩台地をつくったものと考えられます。それでこの安山岩溶岩の噴出様式に対して,最近,新しく「洪水安山岩」という名前を提唱した研究者もいます。大滝溶岩が噴出した時には,1986年伊豆大島で全島民避難した時の噴火をさらに大規模にしたような,真赤になった噴水やカーテン状の溶岩が,火口や割れ目から噴き上げていたのではないでしょうか。