鉛筆 教科なき 畜産の価値 舌で知る

「最初はグー!」実習室に響く、お昼前の熱きバトル】

 「じゃんけんぽん! よっしゃあー!」

 本日5月22日(金)、4限目の終わりを告げるチャイムが鳴る直前、農業科3年生の男子生徒たちが集まるテーブルから、地鳴りのような歓声が湧き上がりました。

 ペコペコに空いたお腹を満たすため、目の前にある極上の肉を誰が勝ち取るか――。

 高校生らしい元気いっぱいのじゃんけんバトルが勃発した瞬間でした。

 一見、賑やかな調理実習のご褒美タイムに見えるこの光景。

 しかし実はこれ、地域の最重要産業を五感すべてで学び尽くす、非常に贅沢で真剣な特別講座の締めくくりだったのです。

 

【専門科目がないからこそ、貪欲に学ぶ「畜産」

 時計を少し巻き戻して、3限目。

 この日、農業科3年生を対象に開催されたのは「あか牛出前講座及び試食会」です。

 水俣市肉用牛繁殖農家の友田勝久様をはじめ、JAあしきた、芦北町農林水産課、芦北地域振興局の皆様をお招きしました。

 現在、芦北高校農業科には「畜産」の独立した専門科目がありません。

 だからこそ、大型モニターに映し出される「黒毛和牛」「褐毛和種(あか牛)」の特徴、枝肉の格付方法、数値を左右する飼料(米ぬか)の影響など、最前線の知識に生徒たちは貪欲に耳を傾け、熱心にメモを取っていました。

 普段の授業では触れる機会の少ない未知の領域は、生徒たちにとって非常に新鮮で、大きな刺激となります。

 

【五感を揺さぶる!4限目の贅沢な試食会】

 知識を頭に叩き込んだ後は、お待ちかねの試食(官能評価)へ。

 用意されたのは、贅沢にも次の2種類のモモサイコロステーキです。

 A:黒毛和牛(あしきた牛)

 B:くまもとあか牛

 お昼ご飯前の空腹という「最高のスパイス」も手伝う中、フライパンにお肉を落とした瞬間、「ジューッ!」と弾ける小気味よい音が室内に響き渡ります。

 立ち上る芳醇で香ばしい香りの湯気が鼻腔をくすぐり、じわじわとあふれ出る美しい肉汁のきらめきが食欲をそそります。

 トングを持つ手にも、お肉の柔らかさと確かな弾力が伝わってきました。

 焼く工程までは、みんなで「ワイワイ」と笑顔を交わしながら、素材そのものの破壊力抜群の香りに五感を刺激されていきました。

 

【一転して「静寂」へ。自分の味覚と向き合う時間】

 しかし、いざ試食が始まると、先ほどまでの賑やかさが嘘のように、実習室は一瞬にして心地よい緊張感に包まれました。

 「普段、2種類のお肉を食べ比べすることはあまりないので、すごく楽しい!」

 そんなワクワクを胸に秘めながらも、生徒たちは一切れごとに口直しのお水を飲み、無言で自分の味覚と実直に向き合います。

 これこそが、味の違いを正しく見極める「消費者型官能評価(味覚テスト)」の真剣勝負です。

 試食を終えるとすぐに各自タブレットへと向かい、集中した様子でアンケート調査票へ評価を入力していきました。 

 

その後、感想を聞くと実際に味わった生徒たちからは、

 

 「わたしはあしきた牛の方が好き。味が濃くジューシー!」

 「私はあか牛派。柔らかくて食べやすかった!」

 「真剣に悩んだけど、結局どっちもうまい!」

 

 といった確かな舌応えが。

 

 ――そして、すべてのデータ入力を終えて張り詰めていた緊張の糸が解けた直後、冒頭の賑やかな「じゃんけんバトル」へと繋がったのです。

 

 地域の豊かな自然と生産者の熱意が育んだ、誇るべき2つのブランド牛。

 普段は学ぶ機会のない「畜産」という分野に触れ、楽しむところは全力で楽しみ、見極めるときはプロの目で真剣に向き合うという、メリハリのある素晴らしい実習となりました。

 命をいただく感謝の気持ちを胸に、今回の学びをこれからの探究へと繋げ、地域の未来を「創造」していく3年生。

 素晴らしい刺激をくださった講師の皆様、本当にありがとうございました!