鉛筆 苗を見て 鋏を睨んで 20秒

 ピッ、ピッ。

 静まり返った農場実習棟2階。

 室内に響くのは、一定の間隔で鋭く鳴り響くタイマーのブザー音だけです。

 その音が鳴るたびに、立ったまま問題と対峙していた生徒たちは一斉に動き出し、次の問題へと移動していく――。

 4日間にわたる期末考査も、本日がいよいよ最終日。

 農業科の締めくくりは、この試験時間内をフルに使って全学年が入れ替わりで挑む、「農業鑑定競技会」です。

 

【一瞬の迷いも許されない、専門知識の総力戦】

 目の前に並んだ実物や写真を見て、その名称や特徴をわずか「20秒」で判別し、立ったまま解答用紙に滑り込ませるノンストップの知力戦。

 日頃の授業や実習で培った「五感」のすべてが試される時間です。

 

 例えば、草花分野の問題。

 

 目の前に並ぶA、B、Cの苗をじっと見つめ、わずか20秒で特徴を見抜かなければなりません。

 正解は「C」。

 光沢のある葉と中央の白い葉脈が日々草の証です。

 

 また、果樹分野から。

 正解は「Bの採収ハサミ」

 果実を傷つけないよう刃先がわずかに曲がっています。

 実習で使い慣れているはずの道具だからこそ、その細かな違いを見極める確かな「目」が試されます。

 

 基本は20秒のハイテンポですが、うち2問だけ、タイマーが「40秒」へと切り替わる強敵が潜んでいます。

 それが「計算問題」です。

 

 総重量(2,800g)から個数(35個)を割り出し、「売り上げ(7,000円)」を導き出す。

 20秒の波に乗っていた脳を瞬時にフル回転させ、立ち止まったまま、焦る気持ちを抑えて正確な数字を叩き出す40秒間。

 次々と襲いかかってくる難問に、生徒たちは知識の引き出しをフルスピードで開け閉めしながら、限られた時間の中で解答用紙を埋めていきました。

 

【テスト終了の解放感、そして次へのステップへ】

 最後のブザーが鳴り響き、これですべての考査が終了。

 実習棟には、極限の緊張から解き放たれた生徒たちの、ホッとした笑顔と大きな歓声が広がりました。

 しかし、農業科の夏はここからが本番です。

 この鑑定競技は定期考査であると同時に、7月28日に開催される「熊本県大会」の予選。

 さらに今日からは、来週に控える年次大会や部活動など、生徒それぞれが「次のステージ」へと一斉に走り出します。

 ガチガチに縛られていたテストの時間が終わり、ようやく自分のために使える自由な時間が戻ってきた君たちに、この言葉を贈ります。

 

 「時間は有限、その使い方は無限」

 


 限られた時間の中で、どれだけ自分を磨き、輝かせることができるかは、これからの過ごし方次第。

 

 ふと見上げると、朝からどんよりと曇っていた空には、いつの間にか目が覚めるような鮮やかな青空が広がっていました。まるで、張り詰めた緊張から解き放たれた生徒たちの心を映し出しているかのようです。

 さあ、これから僕たちの「熱く」、そして「暑い」夏が始まります。

 ここから選び抜かれる鑑定競技の代表メンバーも、それぞれの活動に全力で打ち込む仲間たちも、この青空のように真っ直ぐ、次の目標に向かって全力で駆け抜けていきましょう!