2020年4月の記事一覧
県高校総合文化祭のポスター
「第32回 熊本県高等学校総合文化祭」のポスターが校長室のホワイトボードに貼られています。縦70cm、横50cmのサイズで、標語「文化の塩基配列に終止コドンはない」の黒い文字と共に、カラフルなデザイン画が描かれています。書や絵の筆を握る手、ピアノの鍵盤を弾く手がクローズアップされる一方、百人一首の絵札や将棋の駒、さらには標語と関連した生物学の塩基配列A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の記号も描かれ、混然とした文化のカオス(多様性)が表現されています。このデザイン画の作者は御船高校3年芸術コース美術専攻の宮守さんです。
県高校総合文化祭のポスターデザイン画に選ばれることは至難の業です。宮守さんはスマートホンのアプリを活用し、スマホの画面で下絵を作成して創り上げ、多数の応募者の中から選ばれたのでした。高校をはじめ県内の公共施設等にポスターが掲示され、県高校総合文化祭が周知されることで、宮守さんにとっては自分の作品が多くの人の眼に触れる喜びは大きかったと思います。
しかし、5月28日(木)から30日(土)に熊本県立劇場をメイン会場に予定されていた「第32回 熊本県高等学校総合文化祭」は新型コロナウイルス感染症拡大予防のため、先週、中止が決まりました。年に一度の高校生の文化の祭典がなくなることは深刻な影響を与えます。日頃、地道に文化活動に取り組んできた生徒たちの発表の場が失われ、目標が消えてしまったのです。本校からも書道、美術、音楽、写真、茶道、華道などの文化部が参加する予定でした。特に3年生にとっては高校生活の区切りの舞台だったはずです。その思いを想像すると胸が痛みます。
公共施設に貼られたポスターの撤去が始まりました。本来なら、5月29日(金)午後の総合開会式(県立劇場)において、デザイン画を描いた宮守さんは千人を超える観衆の前で表彰を受ける予定でしたが、幻の県高校総合文化祭となってしまったのです。しかし、御船高校ではこのポスターを教室はじめ各所に当面の間そのまま掲示しておこうと考えています。
新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、学校教育の場においても不条理なことが次々と起こっています。全国高校総体(インターハイ)が中止という衝撃的なニュースが今週届きました。県高校総体の開催も危うくなりました。
大人になってからの一年と、高校生、特に3年生の一年はその意味合いが異なると思います。大人になるためのかけがえのない階段が失われると言ったら大袈裟でしょうか?
県総文祭は幻に終わっても、宮守さんはじめ文化活動に取り組んできた生徒の皆さんの努力は消えません。その活動の軌跡こそが皆さんの青春なのです。
いま、できること ~ 「待つ日々」の中で
今日は金曜日、また週末を迎えます。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一層の外出自粛が求められることになります。2月末から始まった異例の臨時休校は断続的に2か月に及んでいます。冬から葉桜の季節となりました。5月6日(水)までの緊急事態宣言期間の延長が検討されている旨、報道されています。学校再開の目途は未だ立たない状況です。
私たちは今、長い「待つ日々」を過ごしています。あと何日という区切りがない「待つ時間」はとても長く感じられます。残りの時間がどれくらい減っているのか、終わりが近づいているのか誰にもわからず、ひたすら待つ日々です。携帯電話(スマートホン)やインターネットの普及によって、現代は「待たなくてよい」社会になったと言われます。情報やモノがあふれ、それらに簡単にアクセスできる環境に慣れ、「待つことができなくなった」社会と言えるかもしれません。そのような現代社会の住人の私たちにとって、現在の「待つ日々」は長く重く感じられます。
しかし、外出が抑制されても、私たちの精神は自由のはずです。考えたり、想像したりできます。この瞬間も感染症治療の最前線にある医療従事者のことを思うと、心から敬意の念がわきあがってきます。ワクチンや治療薬の開発が進んでいることに人類の英知を思います。それでは、学校教育に携わる私たちには何ができるのか。自問自答の毎日ですが、できることを一つ一つ積み重ねていくしかないと言い聞かせています。
校内の掃除用具を点検して回っている先生がいます。グラウンドの整備に取り組む先生がいます。実習棟の工作機械の点検に余念のない先生がいます。そして、多くの教職員が生徒の皆さんの学習支援のために教材を準備し、そのうち一部は学校ホームページ上に掲載されています。
生徒の皆さんも、長期化する自宅での生活に精神的疲労、ストレスがたまっていることでしょう。けれども、皆さんの精神活動は活発であってほしいのです。教材に取り組む、様々なメディアのニュースで社会とつながる、読書やネット情報から将来の進路を考えるなど思考力を伸ばすことはできます。お互い、一日一日を丁寧に暮らしていきましょう。小さなことでも、今できることを積み重ねていく。きっとその先にあなたの未来はあります。待つことは希望に支えられます。
校内を回り、生徒の皆さんと対話することが私の楽しみでした。その楽しみを奪われた今、校内を歩くと、これまで気に留めなかった花々に気付き、足をとめるようになりました。静かな学校での「待つ日々」ですが、毎日、小さな発見や喜びがあります。
テレワークとテレラーニング ~ 臨時休校の日々
4月17日(金)は1年生の登校日でした。例年なら体育館で上級生が様々なパフォーマンスを演じる部活動紹介ですが、今年は各部が動画や画像を作り、この日に各教室のスクリーンを使って行われました。そして、今週、21日(火)が2年生、翌22日(水)が3年生の登校日でした。学校の主役の生徒たちが登校し、談笑する声が響き合い、校内は活気づきます。しかし、再び23日(木)から生徒のいない学校に戻るのです。
学年別登校を無事に実施できた御船高校では、23日(木)から職員の在宅勤務(テレワーク)を本格的に行います。本校の常勤職員69人の内、8割が在宅勤務に入る予定です。一方、管理職と事務部は全員、進路室や奨学金係は交代で出勤します。生徒及び保護者の皆さんからの連絡に即時に対応できるシフトを整えていますのでご安心ください。個別には「船高安心メール」、全体では御船高校ホームページで随時、大切なお知らせを発信し続けます。
また、生徒の皆さんのテレラーニング(遠隔学習)の充実に努めます。登校日でそれぞれの学習課題を提示したことに加え、インターネットを利用したウェブ教材の手作りが進んでいます。1年生芸術コース書道専攻の生徒向けに、書道の古閑教諭自ら臨書する動画、さらには、ALT(外国語指導助手)のマシュー先生出演の自己紹介(English Self-Introduction)及びリスニングテストの動画などユニークな教材が本校ホームページに載っています。これまで全日制高校ではこのようなコンピュータを活用した遠隔授業の取り組みは行われていませんでした。しかし、未曽有の事態に対し、生徒の学習支援を第一に考え、私たちは柔軟に変わる必要があります。お互いの信頼関係を基礎に、インターネットを通じての遠隔教育の可能性も広がっていくものと思います。
今、生徒の皆さんは時間が豊穣にあります。前にも言及しましたが、読書は違う世界にあなたを連れて行ってくれます。自宅中心の生活の中でも新しい発見や知的興奮と出会えると思います。長い「待つ時間」を、自ら主体的に学びに挑戦する機会に変化させてほしいと期待します。私たちの手作りウェブ教材がその一助になればと願っています。
* テレ(tele)は英語の接頭辞で「遠い」という意味です。従って、Telephone(電話)は音を遠くに届けるもの、Television(テレビ)は映像を遠くに届けるものです。Telework(テレワーク)も英語ですが、実際にはあまり使われず、在宅勤務は「work from home」と表現するのが一般的だそうです。
登校する3年生
学校再開を待つ日々
昨日4月14日(火)から御船高校は再び臨時休校期間に入りました。4月8日に再開したのですが、熊本市を中心に新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからず、すべての県立高校が臨時休校となりました。またもや生徒の影が消え、学校は活気を失い、静まりかえっています。
新年度がスタートして一週間足らずで休校となり、生徒及び保護者の皆さんに混乱を与え、申し訳なく思います。生徒達からすると出端(ではな)をくじかれた感じになったと思います。自らの進路実現に向かって資格試験や最後の部活動に賭けていた3年生、進級し学校生活の中核として張り切っていた2年生、そして高校生活への期待と希望で胸を膨らませていた1年生、いずれも当面の目標を見失ったことになるでしょう。その影響の大きさが心配です。
生徒の皆さんは、休校期間は学校の時間割に拠らず、自らスケジュールを立て生活する自己管理が求められます。皆さんの自律の力が試される期間です。また、学校から出された学習課題だけでなく、今はインターネット上に無数の学習資源があり、学び直しに適した動画教材も見つけられます。自ら興味、関心を持ち、ネット検索で自分の学習スタイルを確立してほしいと期待します。私たち教職員は学校再開を待ちながら、準備に努める日々です。何か不安や心配事があれば、遠慮なく学校へ相談してください。
昨日4月14日は、熊本地震発生から4年に当たり、犠牲者追悼行事が県庁で開かれました。本来なら、本校の生徒会役員の生徒たちも式典に出席する予定でしたが、新型コロナウイルス感染対策で規模が縮小され出席は叶いませんでした。御船高校がある上益城郡は熊本地震で甚大な被害を受けました。4年前のあの時、私は前任の球磨郡でたが、御船高校で震災を体験した教職員がいまだ数多く在職し、その時の経験を語り伝えています。「熊本地震を経験し、上益城郡の児童、生徒たちは防災やボランティアの意識が高まった」という声をよく聞きます。苦難から獲得したものこそ大きいと思います。
熊本地震から4年が経過した今、ウイルス感染症という見えない未曽有の脅威に私たちはさらされています。自然災害とは別種の困難な生活を強いられる日々です。しかし、私たちには熊本地震で強まった県民の絆があります。生徒の皆さん、共に学校再開の日まで希望を持って待ちましょう。「日常の学校生活」を取り戻せる日まで、元気を蓄え、待ちましょう。
週末は自宅で本を読もう!
今日は金曜日、週末を迎えます。例年であれば、陽春の季節で、生徒の皆さんは部活動に汗を流したり、友達と出かけたりと行動的になるところですが、今年は違います。「不要不急の外出を控える」ことが社会的に求められています。新型コロナウイルス感染症が、燎原の火の如く広がり、わが国は緊急事態に陥っています。本校は4月8日から学校再開となりましたが、この週末までは部活動を自粛し、生徒たちにも外出を控えるよう呼びかけました。
今、「Stay at Home!」(自宅で過ごそう)が世界中の共通語です。久しぶりに登校した2、3年生から話を聞くと、長期間を自宅中心で過ごし、「退屈です」、「オンラインゲームも飽きました」等の声が返ってきました。そのような生徒の皆さんに対し、読書を強く勧めます。
「船高生の皆さん、週末は自宅で本を読もう!」。
古(いにしえ)より、人々は紙の本に親しんできました。この伝統の力は強く、新しいメディア(媒体、手段)が次々に生まれてきても、人々に支持されてきた不易の営みなのです。テレビやネット動画の世界に比べ、本は文字中心の地味な世界に映りますが、より主体的な想像力が喚起されることになり、デジタル世代の皆さんにとって、紙の本の世界はかえって新鮮だと思います。オンラインゲームやネットの動画よりシンプルではありますが、読書する人だけがたどり着ける世界があるように私は思います。
公立の図書館は閉鎖されていますが、御船高校の図書室は開館しています。本校の図書司書の先生に言わせれば、「最初はライトノベル(軽めの娯楽小説)から入ってOKです」とのことでした。本校の図書室は管理棟3階にあり、ちょっと不便な場所ですが、窓外の見晴らしは良く、静かです。生徒の皆さんが気軽に利用できる雰囲気です。昨年度、生徒の皆さんへの貸出数が微増し、私は喜んでいます。新型コロナウイルス感染拡大の渦中の今こそ、多くの生徒の皆さんにもっと読書の楽しさを体験してほしいと望みます。
先日、図書室で様々な本を拾い読みしていた時、次の言葉に出会いました。
「読書の習慣を身に付けるということは、人生のほとんどすべての苦しみから逃れる避難所を自分のためにつくるということだ。」(W・サマセット・モーム)
自宅にいても、読書は、あなたをいろいろなところへ連れて行ってくれるでしょう。戸外は感染症のリスクがあります。自宅で読書することはまさに心の良薬になると思います。