2020年9月の記事一覧
DXとは何? ~ 熊本県高等学校情報教育に関する連携協定の調印
「情報」という教科が高校で教えられていることは保護者の方でもほとんどご存知ないと思われます。教科「情報」は、社会の急速な情報化の進展に伴い、平成15年度(2003年度)に設置された新しい教科です。従って、35歳以上の保護者の方はご自身が高校生の時にはなかった教科なのです。
教科「情報」は全ての高校生が履修する必修教科です。御船高校では、普通科の生徒が1年次に「社会と情報」(週2時間)という科目を学んでいます。内容としては、情報通信ネットワークの仕組みや情報社会の課題などを理解するもので、情報機器(コンピュータ)を用いての実習もあります。また、電子機械科ではより専門的な情報技術の学習を2年間にわたって取り組みます。
実は、熊本県高等学校教育研究会「情報部会」という県内高校の教科「情報」担当者の団体があり、その事務局を昨年度から御船高校が受け持っているのです。会員数は、県立高校76人、市立高校8人、私立高校28人で計112人です。
9月23日(水)、一般社団法人「熊本県情報サービス産業協会」と私どもの熊本県高等学校教育研究会「情報部会」は、「熊本県高等学校情報教育に関する連携協定書」の調印を行うことができました。「熊本県情報サービス産業協会」は県内70の企業で組織され、講演会やセミナーの開催を通じてIT(情報技術)の向上に努められています。同協会と連携協定を結ぶことで、高校の情報教育の充実を図ることができると大いに期待されます。
教科「情報」は転換期にあります。令和4年度(2022年度)から高等学校は新教育課程に移行しますが、教科「情報」の内容に問題の発見と解決のためにプログラミングを活用することが盛り込まれました。教科の専門性が高くなる中、「情報」担当の教員のスキルアップが求められているのです。また、企業の技術者と高校の教員が一緒に研修を受け、情報交換を行うことで、企業と学校の相互理解がさらに進むものと思われます。
先ずは、今年度はトライアル(試行)として3人の教員が10月末からの「熊本県情報サービス産業協会」の研修に参加する予定です。6回シリーズのこの研修のテーマは、今話題の「DX」(デジタルトランスフォーメーション)です。DXとは、デジタル技術を浸透させて人々の生活をより良く変革するという意味の言葉のようですが、具体的にどんな実践なのか、私自身がまだ分かっていません。
今年度から小学校でプログラミング教育が導入されたことは多くの方がご存知でしょう。未来の情報社会の担い手である児童、生徒を大きく育てるためにも、私たち教員が社会と関わり、変化し続けることが必要でしょう。
思いを込めて「書道パフォーマンス」 ~ 秋の全国交通安全運動
熊本県警から依頼を受け、御船高校書道部は県警音楽隊の演奏に合わせ交通安全を呼び掛ける作品を「書道パフォーマンス」で創り上げました。9月17日(木)、場所は県警察学校体育館(熊本市)です。
3年生4人、2年生5人の計9人が揃いの袴姿で臨み、縦4m、幅6mの大きな紙に力強い文字を表しました。そして、その様子が交通安全を呼び掛ける啓発動画に収録されたのです。引率した書道の職員によると、撮影は午後1時頃から始まり、終了したのは午後5時を回っていたとのことでした。映像制作のスタッフからの指示や注意を受けながら、書道パフォーマンスを3回繰り返したとのことでした。私は幾度も実演を見ているのでわかるのですが、高い集中力が求められ、心身ともに大きなエネルギーを要するパフォーマンスです。大筆を抱え、リズムに合わせて躍動し、気合の入った掛け声が飛び交います。練達の書道部員にとっても、相当な疲労だったと想像します。
しかし、彼女たち9人はやり遂げたのです。関係者の方々へ最後の挨拶では、部長の村田さんが「今年度は新型コロナウイルスのため、書道パフォーマンスを披露する機会がありませんでした。このような場を与えていただき、感謝します」とお礼の気持ちを述べました。顧問の古閑教諭、緒方教諭にとっては胸に迫る部長の言葉だったそうです。
御船高校書道部の「書道パフォーマンス」は近年注目され、様々なイベント等で披露する機会が増えてきました。昨年は、新元号「令和」に伴うテレビ番組出演をはじめ県高校総合文化祭開会式、秋の熊本城「お城まつり」など大きな舞台が相次ぎました。ところが今年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、部活動も自粛を余儀なくされ、「書道パフォーマンス」も封印してきました。3年生にとっては全国総合文化祭(高知県)も縮小され参加できませんでした。そして、9月上旬の県高校「揮毫大会」を終え、3年生は引退の時期を迎えた最後に、県警からこのような特別の場を提供頂いたのです。心中、期するところがあったと思います。
本番二日前、学校の中庭での最後の練習を私は見ました。短パン、ジャージ姿の生徒たちは、大きな紙の上で筆と一体となり気持ちをぶつけるような気迫が感じられました。足に墨が飛び散るのも気にせず、一心不乱の様子に圧倒されました。きっと本番では渾身の力を振り絞ってくれるだろうと私は確信しました。
御船高校書道部の「書道パフォーマンス」が復活しました。今回は先輩たちのパフォーマンスを見守っていた1年生に対し、3年生は大きな贈り物をしていったと思います。
運動会(体育大会)の季節を迎えて
「校長先生、やっぱり体育祭はしたかったです。」と掃除の時間に3年生の女子生徒に声を掛けられました。幾度、このような声を聞いたことでしょう。その度ごとに、なぜ中止の決断をしたかを説明してきました。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、例年5月に実施する体育祭を10月上旬に延期し実施の可能性を探ったのですが、6月末に開催を断念しました。中止の理由は大きく二つでした。一つは、体育の授業において、密接、密集を避けるため集団の演技、競技が難しい状況が続いていること。もう一つは、高校3年生の就職試験が例年より一か月遅くなり、応募書類提出が10月5日から、採用試験開始が10月16日となったことです。このため、3年生の就職採用試験時期と体育大会予定期日が重なってしまったことです。苦渋の決断でした。
ところが、御船中学校は明日9月12日(土)に体育大会を実施されます。今週は、体育大会に向けての中学校の全校練習の音響が風に乗って本校まで届きます。行進や応援の練習など中学生の活力が伝わってきます。上益城郡の中学校は、感染防止に最大限努めながら、体育大会を実施するという決定をされました。競技種目を精選され、プログラムも午前中で終わるよう短縮されたそうです。そして観覧も保護者だけと限られたようです。中学生、特に中学3年生にとって体育大会はとても重要な学校行事だから、中止は考えなかったと中学校の校長先生が私に語られました。その英断に敬意を表するとともに、本校でも実施の可能性はあったのではないかと省みる今日この頃です。
御船町では各小学校も10月に運動会を予定されているそうです。運動会は秋の季語になっており、わが国では欠かせない地域行事と言えます。コロナ禍で伝統の祭礼が相次いで中止になるなど社会に閉塞感が漂う中、運動会(体育大会)は児童、生徒の元気発信の場となり、地域全体を励ます役割を担うでしょう。
学校教育は教科の学習活動が時間的には大半を占めていますが、それだけではありません。ホームルーム(学級)活動、生徒会活動、そして学校行事は総称して特別活動と呼ばれ、この活動が人間形成及びその学校の文化を醸成するのに欠かせないものです。今年度は、未曽有のウイルス感染拡大によって、体育大会やクラスマッチはじめほとんどの特別活動が中止もしくは制限を受けてきました。学科やクラスを超えた交流、そして学校全体の一体感を得ることなく年度の半分が過ぎようとしていることに焦燥感を覚えます。
感染予防と学校生活の充実という困難な両立への挑戦はこれからも続きます。
台風一過
台風一過(たいふういっか)、澄み渡った秋空です。9月8日(火)、平常の学校生活が御船高校で再開でき、心から安堵しています。
大型で非常に強い台風10号が9月6日(日)の夜から7日(月)未明にかけて九州の西方海上を北上していきました。4、5日前から気象庁はじめ行政機関等から「命を守る行動を」、「最大限の備えを」と繰り返し注意喚起がなされました。そのため、学校も早くから備えに努め、7日(月)は臨時休校の措置をとりました。戦々恐々、息を潜めるようにしてスーパー台風の襲来を待ちました。今回は無傷ではいられないと覚悟もしました。しかし、台風10号の強風に学校は耐え、何も被害はありませんでした。
7日(月)の日中はまだ吹き戻しの風が強く、時折雨も降りましたが、職員の協力で校庭に散乱した木の枝や葉の片づけが終わりました。教室、体育館、工業実習棟、廊下、屋根など被害は全く見当たりませんでした。無事に台風が過ぎ去っていったことは奇跡のようにも思えますが、やはり、これは職員一同力を合わせ、台風の備えに全力を尽くしたからだと思います。例をあげると、電子機械科の実習棟周辺に置かれている資材はすべて堅く固定されていたため、落下物一つありませんでした。各教室は机と椅子を廊下側に寄せて並べるなど細やかな対応でした。この度の台風対応の経験から、安心というものは、自らが参加して取り組まない限り守れないものだということを改めて学んだと思います。
8日(火)朝、何事もなかったかのような整然とした校舎、校庭で生徒たちを迎えることができました。「天神の森」周辺では、涼しい風が立ち、秋の気配を感じました。今日から18日(金)まで教育実習期間となります。平成音楽大学から2人(音楽)、佐賀大学から1人(美術)のフレッシュな大学生が教員免許取得のための関門である教育実習に取り組みます。きっと、生徒の皆さんと爽やかな交流が生まれるでしょう。教育実習生(大学生)の姿を通して、自らの進路を考える生徒もいると思います。
8月24日から2学期が始まって2週間。そして台風による臨時休校。この休校は、上り始めた階段の最初の踊り場のような機会になったかもしれません。生徒の皆さん、また新たな学校生活の始まりです。今朝の全校朝礼の放送で、新生徒会副会長の1年生の岩山さんが、「みんなが来たくなる学校づくりを目指したい」と言いました。
台風が過ぎ日常の平穏が戻りました。幸福は日常の中にあります。
台風一過の青空
二百十日、野分の頃を迎えて
御船高校では毎朝8時30分から「まなびの森」と呼ぶ生徒の自学の時間があります。この時間の始まりに合わせ、放送委員が校内放送で朝の呼びかけをします。9月2日(水)の朝の放送は、2年1組の坂口さんが当番で、気持ちがこもった語り口で、思わず聴き入りました。
「今日は立春から数えて二百十日に当たり、稲が実をつける頃ですが、この時期は台風が来襲して農作物に被害が出る時期でもあります。そのため、先人たちは風を鎮める風祭(かざまつり)や風鎮祭(ふうちんさい)などの行事を取り行ってきました。しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、このような伝統行事が中止となっています。今週は台風が相次いで発生し、九州に接近するようです。皆さん、気をつけましょう。」
このような趣旨の放送内容でした。趣のある季節の話題について情感を添えて伝えようとしている坂口さんの放送は、慌ただしい朝にあって一服の清涼剤のようなものでした。新型コロナウイルス感染予防のため、全校集会や学年集会などが今年度はできません。その分、全校放送を使っての生徒の呼びかけが効果的のように思われます。昼休みには保健委員の生徒たちが、教室の換気や生徒同士で密接、密着にならないよう呼びかけを行っています。放送に耳を傾ける、情報や注意を聴きとる力を今こそ学校で育てる必要があると思います。
さて、二百十日前後に吹く強風のことを古語で野分(のわき)と呼びます。野の草を強く吹き分けるという意味で、台風の古称です。そう言えば、夏目漱石に「二百十日」、「野分」の作品があり、特に「二百十日」は阿蘇登山が題材で熊本県民には親しみを感じます。
坂口さんの放送のとおり、強大な勢力の台風がこの週末に九州に接近してくるようです。風を鎮める伝統行事が中止になっている今年は、自然の脅威に対して一層不安を覚えます。学校としても備えを始めました。
生徒の皆さん、各家庭で防災の備えに取り組んでください。家族を頼るのではなく、皆さんが家庭の防災リーダーです。屋外の飛ばされそうなものを室内へ移動する、窓の補強、非常食・水の準備、最寄りの避難所の確認などやるべきことは沢山あります。そして、停電に備え乾電池ラジオがあると心強いものです。電気が失われると多くの情報通信技術の機能がダウンします。その時こそ乾電池ラジオからの情報は貴重なものになります。
生徒の皆さん、安全最優先の行動をとってください。