二百十日、野分の頃を迎えて

    御船高校では毎朝8時30分から「まなびの森」と呼ぶ生徒の自学の時間があります。この時間の始まりに合わせ、放送委員が校内放送で朝の呼びかけをします。9月2日(水)の朝の放送は、2年1組の坂口さんが当番で、気持ちがこもった語り口で、思わず聴き入りました。

   「今日は立春から数えて二百十日に当たり、稲が実をつける頃ですが、この時期は台風が来襲して農作物に被害が出る時期でもあります。そのため、先人たちは風を鎮める風祭(かざまつり)や風鎮祭(ふうちんさい)などの行事を取り行ってきました。しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、このような伝統行事が中止となっています。今週は台風が相次いで発生し、九州に接近するようです。皆さん、気をつけましょう。」

    このような趣旨の放送内容でした。趣のある季節の話題について情感を添えて伝えようとしている坂口さんの放送は、慌ただしい朝にあって一服の清涼剤のようなものでした。新型コロナウイルス感染予防のため、全校集会や学年集会などが今年度はできません。その分、全校放送を使っての生徒の呼びかけが効果的のように思われます。昼休みには保健委員の生徒たちが、教室の換気や生徒同士で密接、密着にならないよう呼びかけを行っています。放送に耳を傾ける、情報や注意を聴きとる力を今こそ学校で育てる必要があると思います。

    さて、二百十日前後に吹く強風のことを古語で野分(のわき)と呼びます。野の草を強く吹き分けるという意味で、台風の古称です。そう言えば、夏目漱石に「二百十日」、「野分」の作品があり、特に「二百十日」は阿蘇登山が題材で熊本県民には親しみを感じます。

    坂口さんの放送のとおり、強大な勢力の台風がこの週末に九州に接近してくるようです。風を鎮める伝統行事が中止になっている今年は、自然の脅威に対して一層不安を覚えます。学校としても備えを始めました。

    生徒の皆さん、各家庭で防災の備えに取り組んでください。家族を頼るのではなく、皆さんが家庭の防災リーダーです。屋外の飛ばされそうなものを室内へ移動する、窓の補強、非常食・水の準備、最寄りの避難所の確認などやるべきことは沢山あります。そして、停電に備え乾電池ラジオがあると心強いものです。電気が失われると多くの情報通信技術の機能がダウンします。その時こそ乾電池ラジオからの情報は貴重なものになります。

    生徒の皆さん、安全最優先の行動をとってください。