2026年3月の記事一覧

鉛筆 春の夢 未来へ向かって 共に行く

 ブログでの紹介がすっかり遅くなってしまいましたが、今、芦北高校では「町」「企業」、そして「学校」ががっちり手を組んだ、大きなプロジェクトが進んでいます。


 令和6年5月、芦北町、芦北高校、そして株式会社共立ソリューションズの3者は、「地域活性化に関する包括連携協定」を締結しました。

 芦北の農業のミライを創るため、大きな一歩を踏み出したのです。


 「不知火」プロジェクトの目標

 この協定の大きな柱の一つが、芦北の名産「不知火」の研究です。

 これまでの伝統的な育て方に加え、最新のテクノロジーを導入することで、


 • 「高品質な不知火を、よりスマートに、より安定して育てること」

 • 「気候変動や人手不足に負けない、持続可能な農業モデルをつくること」

 これらを目標に掲げ、芦北高校がその「最先端の研究基地」となります。


 その挑戦を現場でリードしてくれるのが、地域活性化企業人の石井裕美(いしい ひろみ)さん。

 そして本日、ついに「不知火」の苗木の植え付け実習当日を迎えました。



 今回の研究の舞台は、数年前の豪雨で被害を受け、ずっと使えなくなっていたビニールハウス。

 多くの方々の協力を得て、最新の設備がそろった「驚きの研究室」へと生まれ変わりました。


 実習が始まると、ハウス内は一気に活気に包まれました。

 まずは、石井さんから、このハウスに備わった最新設備についての紹介がありました。

 生徒たちは、これまでのハウスとは違う、自動で環境を整える「スマート農業」の仕組みに興味津々の様子です。


 続いて、果樹担当から、「不知火」の苗木の扱い方や植え付けの正しい手順について説明がありました。


 いよいよ植え付けのスタートです!

 今回の実習では、生徒と芦北町の職員さんがペアを組み、一本ずつ丁寧に苗木を土へ据えていきました。


 土に触れ、対話をしながら「ミライの研究」の土台を築いていく実習に、生徒たちの目もキラキラと輝いていました。

 さらに、本日は教頭先生も実習に参加し、生徒たちと一緒に汗を流しました。


 町、企業、学校。

 みんなで力を合わせて、芦北のミライをつくる挑戦がいよいよ本格的にスタートです!


 

 これから、芦北にはどんなミライが待っているのか、本当に楽しみです!

鉛筆 人の声 貯蔵庫響き 春の夢

 果樹園の空気も少しずつ和らいできましたが、実習棟の中は「まだまだこれから」という活気に溢れています。

 視線を上げれば、積み重なったコンテナの中には、出番を待つ黄金色の「不知火」たちが、今か今かと山のように控えています。

 一つひとつ丁寧に、リズミカルにポリ袋へ包んでいく生徒たちの手。

 指先に全神経を集中させるこの実習の時間は、余計な力が抜けるからでしょうか。

 不思議と、教室にいる時よりも心の距離が近くなります。

 

 「先生、この間、妹の卒業式に行ってきたんですよ」

 「中学校の校歌の歌詞、今でも覚えてる?」

 「いやぁ、インフルの時の喉の痛み、まじできつかったっす……」

 

 そんな日常の報告や、他愛もない思い出話。

 さらには、進路の真剣な相談から「将来は韓国に住んでみたいんです!」という、海を越えた大きな夢まで。

 実習の手を休めることなく、けれど表情は教室で見せるそれよりもずっと柔らかい。

 一つの果実を慈しむように扱うその手つきは、自分たちの未来も同じように、大切に紡いでいこうとする意志の表れのようにも見えます。

 実習は、単に技術を学ぶ場ではありません。

 「不知火」を介して、生徒たちの内面にある豊かな彩りに触れる。

 黄金色の果実に囲まれながら、彼らの夢も少しずつ、形を成していく。

 普段、教室では見せることのない表情や、なかなか話せないことまで感じることができる。

 そんな「対話の時間」こそが、私たち指導者にとっても、代えがたい実習の魅力です。

鉛筆 大寒桜(おおかんざくら) 誘(いざな)い連れて 人の声

 本日は入試採点日。

 校内は凛とした静寂に包まれ、生徒たちの声も、足音も聞こえません。

 採点処理の画面に向き合い、マウスのクリック音だけが規則正しく響く採点室。

 ふと窓の外の「峰崎さくらの森」に目をやると、私の脳内では、こんな会話が勝手に動き出していました。

 

(ここからは、私の脳内フィクションです。)

 

 春の柔らかな日差しが降り注ぐなか、「大寒桜」が咲き誇る山の上から、一人の女性が楽しそうに坂道を下ってきました。

 近所に住む、花好きの「あし子さん」です。

 

「あらー、先生!山の上はたいぎゃ綺麗かったバイ!昨日のブログば見て、居ても立ってもおられんくなってね。24年も経つと、桜も立派な『大人』になっとるねぇ」

 

「あし子さん、お久しぶりです。満足げに下りてこられましたね」

 

「……で、あの中にある『あのお花』も、一緒に連れて帰りたかと思うてきたとたい。卒業式に飾ってあったつの、えらい『もぞらしか(可愛らしい)』ったもんねぇ。……先生、あいた、なんて名前やったかいね?」

「あし子さん、あれは『サイネリア』っていう花ですよ。和名では『富貴菊(ふうきぎく)』とも呼ばれていて、縁起もいいんです」

「そうそう、サイネリアたい!覚えたバイ!……で、先生、今日は買えるとね?」

 

「残念ながら、今日は入試で中には入れんとですよ」

 

「なら、あのサイネリアは、いくらね?」

「一鉢、450円ですよ」

 

「ばっ!そぎゃん安かつね!? 生徒さんの手塩にかけた花が、そがん値段でよかとね!? ……して、何色のあっと? うちの玄関に合うごつ、よか色のあっとよかばってん」

 

「紫にピンク、爽やかな青、それに白とのグラデーション……。まるで宝石箱をひっくり返したような、鮮やかな色が揃っていますよ」

「わっちゃー、迷うねぇ! なら、試験の採点の終わって門の開いたら、一番に買いに来るけんね! うちの玄関と台所に置く分と、お隣りさんにもあげたか。それから息子夫婦の分も……。あいた、一番よか色のつば『予約』しといてはいよ!」

 

「ははは、さすがはあし子さん、お目が高いですね。サイネリアの花言葉は『明るい笑顔』『希望』。いつも元気で花を愛するあし子さんと、大切な方々へ贈るのに、これほど似合う花はありませんよ」

 

「わっちゃー!そがんとね!なら、ますます楽しみになってきたバイ!」

(ここまでが、私の脳内フィクション。)

 

 ……現実は、クリック音だけが響く静かな採点室。

 もちろん、今日はあし子さんは来ませんが(笑)、温室の中では生徒たちが丹精込めて育てたサイネリアが、本当に出番を待ちわびて咲き誇っています。

 

■実習のポイント:サイネリア(シネラリア)

 卒業式や入学式を彩る「春を告げる花」として知られています。

 生徒たちが温度管理や水やりに細心の注意を払い、育て上げました。

 宝石のような鮮やかさが特徴です。

 

 現在、本校農場にてサイネリアを「絶賛販売中」です。

 「あし子さん」のように、宝石のような色彩に驚き、大切な人へ「明るい笑顔」を届けたいという方は、ぜひ事前にお電話にてお問い合わせください。

 採点という大きな仕事が終われば、また賑やかな農場が戻ってきます。

 皆様からのお電話、お待ちしております!

 

 連絡先(0966)82−2034 担当:松野、平松

鉛筆 二十余年 繋ぐ想いや 大寒桜(おおかんざくら)

 先日、本校では卒業式が挙行され、3年生が晴れやかな表情で学び舎を後にしました。

 先輩たちの賑やかな声が消え、少しだけ静かになった実習棟。

 しかし、農場の時計は止まることなく、次なる季節の幕開けを告げています。

 

 本日3月5日は、二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」を迎えました。

 大地が温まり、冬ごもりをしていた虫たちが土の窓を叩いて、次々と顔を出し始める季節です。

 

「三寒四温」の雨と、本格始動の号令

 ここ最近は、暖かい日が続いたかと思えば、急に冷え込む雨が降る……。

 まさに「三寒四温」を地で行くような天気が続いています。

 一雨ごとに寒さが和らぎ、その雨が潤いとなって、土の下で眠っていた命を力強く揺り起こしているようです。

 農業の世界では、この啓蟄こそが「本格始動」の号令。

 果樹園の草刈りに向かうと、そこには鮮やかな「菜の花」が咲き誇り、その蜜を求めて「ミツバチ」が忙しく羽音を響かせていました。

 しかし、命が動き出すのは喜ばしいことばかりではありません。

 暖かさと共に、作物たちを脅かす「病害虫」もまた活動を始めます。

 芽吹きの美しさに目を細める間もなく、防除や観察といった「守り」の作業に追われる日々が始まります。

 この地道な戦いこそが、豊かな実りを支える屋台骨。

 本格的な農繁期の到来に、身の引き締まる思いです。


■ 二十四年の時を繋ぐ、桜の記憶

 果樹園で作業をしていると、ふと山手の方から淡い色彩が目に飛び込んできました。

 「あぁ、もうそんな時期か」と斜面の上を仰ぎ見れば、果樹園のさらに先にある「峰崎さくらの森」が、山肌を優しく染め上げています。

 誘われるように坂を登り、森へと足を運んでみると、そこにはすでに淡いピンク色の花を咲かせた、美しい桜の姿がありました。

 傍らには、「大寒桜(オオカンザクラ)」という表記と共に、「大松 茂」という名が記されていました。

 本校林業科の職員である大松先生です。

 お話を伺うと、この桜は創立80周年の記念事業として植樹されたものだそうです。

 今から約24年前、当時の先生方や生徒たちが、未来の芦北高校を想って植えた小さな苗木が、今ではこうして立派な樹となり、春の訪れを一番に伝えてくれています。


■ 受け継がれる「守り」のバトン

 3年生が卒業し、新しい季節が始まります。

 「さくらの森」がそうであるように、私たちが日々向き合うこの農場も、多くの先輩方が手塩にかけて繋いできてくださったものです。

 その一本一歩の歩みを、これからは2年生(新3年生)が責任を持って引き継いでいきます。

 三寒四温の雨が土を潤し、やがて豊かな実りを結ぶように。

 24年という時間の経過と、そこに流れる伝統の継承を深く感じながら、春の良き日を噛み締めています。


「啓蟄(けいちつ)」

 羽音とともに、明日への希望が膨らむ芦北高校より。

鉛筆 一玉に 自覚を包む 朝の空

 1・2限目の果樹実習。

 まだ少し冷たい朝の空気の中、2年生たちが向き合っていたのは、黄金色に輝く「不知火(しらぬい)」でした。

 

 今日の実習は、一玉ずつ丁寧にポリ袋に入れる「個包装」

 数日間にわたる「予措(よそ)」を終え、いよいよ長期の「貯蔵(ちょぞう)」へと入るための、大切な橋渡しです。

実習のポイント

 「予措」とは、収穫した果実を一定期間置き、果皮の水分を適度に飛ばして乾燥を促す工程です。

 これによって果実が引き締まり、貯蔵中の腐敗を防ぐことができます。

 「貯蔵」は、そこからさらに寝かせることで酸味を抜き、まろやかな甘みを引き出すための時間です。


 実習棟を見渡すと、生徒たちは皆、とても真剣な表情でした。

 その手元には、真っ白な手袋。

 「わずかに爪が当たるだけでも、果実には傷がついてしまう」

 その緊張感を、言葉以上に、彼らの慎重な手つきが語っていました。

 わが子を扱うようなその真剣な眼差しに、指導者として、頼もしさを感じるほどです。

 

 これまでは、何かあればすぐに3年生の「先輩」に聞けばよかった。

 けれど、もうここには先輩はいません。

 これまでは「後輩」として背中を追ってきた彼らですが、この広大な果樹園も、芦北高校が守り続けてきた伝統の味も。

 これからは、君たちの肩にかかっているんですよ。

 

 袋に包んでいたのは、単なる果実ではありません。

 それは、先輩から受け取った「責任」という名の重いバトン。

 一玉一玉に集中して実習に没頭する彼らの横顔は、いつの間にか、立派な「農の担い手」の顔になっていました。

 先日、卒業生に贈るためにみんなで真心を込めて箱詰めした「不知火」。

 あの時感じた「贈る喜び」は、今日のこの地道な実習があるからこそ生まれるものです。

 袋に包まれた「不知火」たちは、生徒たちの決意を閉じ込めたように、実習棟の中でつややかに並んでいます。

 3年生がいない分、少し広く感じるこの場所で。

 2年生たちの新しい季節が、確かに動き出しています。

 

 来年は、君たちも不知火を「もらう喜び」を噛み締め、笑顔で卒業を迎えたいですね。

 その日のために、この一玉を、自分たちの手で大切に守っていきましょう。