校長室からの風

試練を超えて ~ 県高校総体で女子柔道部4連覇!

 「団体優勝が決まりました!」という顧問の大久保教諭からのメールを受け取った時、ちょうど会場の駐車場に到着しました。急いで車を降り、山鹿市総合体育館の柔道場に入ってみると、表彰式が始まるところでした。優勝の瞬間には間に合いませんでしたが、晴れ晴れとした笑顔の選手達の様子を間近に見ることができ、格別な喜びを共有できました。

 令和4年度熊本県高校総体女子柔道団体戦は、6月3日(金)午後に行われました。私は午後1時半から2時半まで県立劇場の県高校総合文化祭開会式に出席し、式が終了次第、山鹿市の柔道会場へ車を走らせたのです。女子柔道部に対しては強い思い入れがありました。今年1月の県選抜大会に新型コロナウイルス感染症の影響で出場できず、悔し涙を流しました。柔道の試合はマスクを着けず、密着した競技となるため、コロナの感染リスクが高く、その後も思うような部活動ができず、部員達は苦しみました。誰も悪くありません。ウイルスという見えない敵に翻弄され、目標を見失いがちな時もあったと思います。しかし、荒木信知教諭の指導を信じ、部員一同が結束して練習に懸命に取り組み、たゆまぬ努力を重ねてきました。自分たちを厳しく追い込む鍛錬の日々を見てきた私は、この度の県高校総体で先ず柔道部の応援に駆けつけたのです。

 西高女子柔道部は、見事復活し、県高校総体4連覇を果たしました。度重なる試練を乗り越えての堂々たる勝利でした。表彰式に臨む団体メンバー(山田さん、平原さん、東さん、藤原さん)、及び全員一丸となって応援した部員(15人)のみんなと共に喜びを分かち合うことができました。

 女子柔道部は神が与えたような試練を乗り越え、凱歌をあげました。しかし、一緒に高校総体総合開会式に出場したラグビー部は決勝進出を逃しました。伝統の強さを誇る女子なぎなた部は、団体戦は制したものの個人戦優勝を他校に奪われるという無念の結果でした。その他、それぞれの競技種目において、目標を達成できず、不本意な結果に甘んじた生徒達がいます。今は失意に沈み、気持ちの整理がつかない状態かもしれません。しかし、柔道部の例でわかるように、勝負の世界は「悲喜交々(こもごも)至る」(悲しみと喜びが代わる代わる起こる)ものなのです。

 負けたことから多くのことを学んだとやがて気づくことでしょう。悔しい体験も豊かな体験なのだと時間が教えてくれると思います。

「校長室からの風」

高校生のエネルギー発信の舞台 ~ 県高校総体・総合文化祭の開幕

   令和4年度第50回熊本県高等学校総合体育大会の総合開会式が6月3日(金)午前、「パークドーム熊本」(県民総合運動公園)が行われました。参加校が一堂に会しての総合開会式の実施は3年ぶりのことです。

 国旗及び高体連旗を持って先頭で行進したのは西高陸上競技部の生徒達です。全77校が総合開会式に参加し、西高は5番目の行進。各学校、生徒・教職員合わせ15人以内と定められ、本校はラグビー部の生徒と顧問教諭、そして団長として校長の私が出場しました。新型コロナウイルスの出現前は、「えがお健康スタジアム」に観客の高校生も含め約1万人の大規模な祭典でした。今回の規模はその10分の1で、屋根付き会場のため熱中症の心配もなく、シンプルではあっても選手のコンディションに配慮されたスマートなものでした。「アマチュアスポーツに引退はありません。生涯にわたってスポーツを続けてください。」との高体連の大嶋会長の挨拶が胸に響きました。オープニングアトラクションとして、熊本工業高校の吹奏楽部による華麗で勇壮なマーチングドリルも行われました。

 コンパクトな総合開会式でしたが、県下の高等学校の一体感があり、ラグビー部の生徒達と共に歩き、参加できたことで熱い思いに包まれました。さあ、アスリートの戦いが繰り広げられます。「みんなは、自分で思っている以上のエネルギーを持っている。この高校総体で存分に爆発させよう!」とラグビー部員を励ましました。

 第34回熊本県高等学校総合文化祭の総合開会式が同日の午後、熊本県立劇場で行われました。こちらも3年ぶりです。オープニングアトラクションで、西高生を含む有志の演劇部員合同パフォーマンスに引きつけられました。それは、コロナパンデミックによって声を発することが制約された苦しみの表現から始まり、表現の手段は言葉だけではないことに気づき、身体全体を使って表現するパフォーマンスでした。そして、最後に「きざめみんなの青春ONEカット!」と大会テーマを声高らかに発信したのです。

 2年を超えるコロナ禍という逆境の中にあっても、熊本の高校生は自らが選んだ部活動(体育・文化)にひたむきに取り組んできました。そのエネルギーを発信できる最高の舞台を設けることができました。このことが望外の喜びです。

 「校長室からの風」

 県高校総合文化祭開会式のオープニングアトラクション(演劇部合同パフォーマンス)

先輩が支える西高の強さ ~ 高校総体目前

 体育部活動の集大成の場となる県高等学校総合体育大会(高校総体)の先行競技が始まりました。5月28日(土)、サッカーの1回戦を応援しました。水前寺競技場において午前10時キックオフ。対戦相手の有明高校に押されながら、西高も時に反撃に出る好試合となりました。惜しくも2点を奪われ、0-2で敗れました。プロサッカーの試合も行われる水前寺競技場という最高の環境で、最後まで戦い抜いた西高サッカー部の健闘を心から称えたいと思います。試合後、うつむいて悔し涙を流している生徒達の様子を見ると、勝負の厳しさを思い知らされます。励ます言葉も容易には出てきません。けれども、全力を尽くした結果について時間をかけて受け入れていくことで、高校生は大人へと成長していくものだと思います。

 28日(土)~29日(日)、サッカー以外にバドミントンやソフトテニスなどの競技が先行実施されました。そして、6月3日(金)から本番を迎えます。各部活動において、かけがえのない仲間と共に残された時間、完全燃焼の日々です。放課後、部活動の様子を見て回ると、高校総体に向けて気迫と緊張感が高まっていることが感じられます。

 そのような中、独自の存在感を示しているのが教育実習生の支援です。今年も体育コースの卒業生4人の大学生がこの時期に教育実習に来ています。それぞれラグビー、陸上、水泳、なぎなたが専攻で、現役の大学生選手として活躍しています。この先輩達が、高校総体直前の各部活動の練習に参加し、後輩を励まし、支えてくれているのです。27日(金)の放課後、なぎなた道場で教育実習生の坂本さん(福岡大学)が部員に指導する光景を見て、これが西高体育コースの伝統の力と感じました。なぎなた部では、高校時代に日本一に輝いた先輩(春山さん)が昨年もこの時期に教育実習に来ており、部員達を奮い立たせました。練習が終わった後、なぎなた部員に私は言いました。「君たちの中からも数年後に教育実習に来て、こうして後輩を指導する人が出てほしい、このつながりが西高なぎなた部の伝統です」と。

 西高生の皆さん、新型コロナウイルス感染予防をはじめ健康管理に努め、良いコンディションで高校総体に臨み、ベストを尽くしてほしいと念じています。

 「校長室からの風」

体育大会での高校総体・総合文化祭選手推戴式

「先生」と呼ばれる喜びと責任の重さ ~ 教育実習始まる

 西高では、5月23日(月)から教育実習が始まりました。教員免許状を取得するためには必須の実習であり、今年度は9人の大学生の皆さんが実習に臨みます。期間は2週間、3週間、4週間と異なりますが、かけがえのない体験になると思います。高校生から「先生」と呼ばれます。最初は戸惑いや気恥ずかしさがあるでしょうが、「先生」と呼ばれる喜びと、その責任の重さをかみしめる日々になることでしょう。

 9人の教育実習生の内8人が平成30年度の西高卒業生です。それぞれ大学に進学し、専門の課程に加え教職課程も履修し、母校での実習の日を迎えたことになります。当時の担任や教科担当、部活動の顧問にとっても感慨深いものがあります。かつての生徒がスーツに身を包み職員室で挨拶する様子を、多くの職員が笑顔で見つめていました。私たち教員の使命は人材育成です。私たちの後を継ぐため、未来の教員への道を歩んでいる姿を見ることは喜びです。私たちも通った道です。学校として教育実習生を心から歓迎し、充実した実習になるよう支援していきたいと思います。

 また、教育実習は在校生にとっても大きな出来事です。数年前に卒業した先輩達が、「先生」として指導に当たります。年齢的に近く、その若さは魅力であり、大学生活をはじめ様々な情報に接することができ、自らの進路への意欲がかき立てられる貴重な機会となります。

 今日の1限目、校長室で実習生の皆さんに研修講話を30分ほど行いました。「最も力を入れてほしいことはやはり授業です」と強調しました。教えることは自ら学ぶこととは全く異なり、とても難しいものです。実習生の皆さんにとってはそれぞれ得意の教科・科目ですが、その教科・科目が苦手な生徒達の興味・関心をどう引き出すかが課題です。「教えよう」という教員の視点ではなく、「できるようになる」という生徒主体の視点で考え、創意、工夫を重ねてください。若い現役の大学生である実習生の皆さんは、その存在自体が高校生を引きつけます。

 まさに5月の風と等しい、清新な風が西高に吹き込んできました。教育実習期間の西高は、いつも以上に活気あふれる学校となるでしょう。 

「校長室からの風」

誰も見ていなくても ~ 「善行」の報せ

 体育大会を5月8日(日)に実施し、いまだその余韻のようなものが校内にはあります。西高生の連帯感がより強まったと感じます。そして、「新入生」(1年生)が「西高生」に変身したという気がします。五月は、緑や花が瑞々しく生命感がみなぎり、県高校総体及び総合文化祭の開催を控え、学校が最も活気付く季節です。この時期にふさわしい爽やかな「善行」の報せに今週は二件接しました。

 一件は、大型連休中、西区の県道で道路脇の溝に足を滑らせ転倒された高齢の女性を、通りかかった男子高校生3人が協力し助けたという事案です。「有り難う。どこの高校ね?」と尋ねられると、「西高です」とだけ言い、3人は立ち去ったそうです。お礼の電話が学校にかかってきて、生徒達に照会したところ、1年生の野球部員3人が名乗り出てきました。

 もう一件は、西高からJR熊本駅行きの路線バスの車中の出来事です。雨天の夕方で、車内は西高生はじめ帰宅途中の乗客で混み合い、立っている人がいる状態でした。田崎付近で高齢の女性がバスに乗って来られたところ、座っていた女子生徒が即座に席を立ち、女性に譲ったそうです。その自然な振る舞いを見て、乗り合わせていた乗客の方から「気持ちがほっこりする、温かいものを感じました。制服が西高だったのでお知らせします」とご連絡がありました。

 まだまだ成長途上の高校生です。自転車の並進はじめ交通マナーに関して、地域社会からお叱りを受けることもあります。公衆道徳に関しても十分ではなく、ご批判を受けることもあります。しかし、私たち教職員は、生徒の可能性を信じ、時に厳しく指導する一方、生徒達を認め、ほめ、励まして伸ばしていかなければなりません。

 生徒の皆さん、私たち教職員がいなくても、保護者がいなくても、仮に誰も見ていなくても、あなたの行動はあなた自身が見ています。昔の人は、「お天道(てんと)様に顔向けができない」という表現をしました。誰も見ていなくても、太陽は見ているのだから、道を外れたことはしてはいけないという戒めです。他者の評価ではなく、自らの内なる規範に従い、より善く生きようという気持ちを大切にしてほしいと心から願います。

「校長室からの風」

              5月8日の体育大会の様子