校長室からの風

生徒の皆さん、「Think big, Start small!」 ~ 3学期始業

 1月11日(火)、3学期が始まりました。

 コロナパンデミックが2年に及びます。肉眼では見えないウイルスに世界が翻弄され、私たちの生活も大きな影響を受けています。しかし、この2年間でコロナウイルスの実態がかなり明らかになりました。そもそもウイルスは単独では生存できず、動物や人間の細胞に寄生することでしか生存できません。自然界には無数のウイルスが存在し、その多くは人体に害はなく、コロナウイルスも弱毒化すれば、今のように恐れる必要はなくなると言われます。従って「ウイルスを撲滅」とか「根絶」の表現は適当ではなく、私たち人類はウイルスと共存の定めにあると言えます。

 これまで人類の歴史においてペスト、コレラ、天然痘、インフルエンザなど一部のウイルスがパンデミックを引き起こしました。パンデミックは歴史の歯車を早回しにします。14世紀のヨーロッパでペストが大流行し、甚大な犠牲者が出て人々の間で神への信仰が揺らぎました。そしてローマカトリックキリスト教の支配が弱まり、ルネサンスへと時代が動きました。19世紀のコレラの流行を克服するため、ロンドンはじめ世界の都市では下水道、上水道の整備が急速に進み、公衆衛生の考え方が普及しました。今回のコロナパンデミックにより社会はどう変わるでしょうか?確実に言えることは、学校に一人一台タブレット端末が配備されたことが示すように社会のICT化(情報通信技術化)が進むでしょう。DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を生徒の皆さんもよく耳にすると思います。デジタルテクノロジーを活用し、より良い社会に変革する動きを意味します。大きな変化の時代を私たちは迎えます。

 また、近現代、人類がヒト中心の考え方、価値観で開発を進めてきたため、熱帯雨林の減少など地球環境が悪化し生態系が乱れました。これまで自然界にとどまっていた未知のウイルスが野生動物からヒトへ次々と感染する時代に入ったと言われます。自然環境と人類が共生できる、持続可能な社会づくりは、第二、第三の新型コロナウイルス出現を防ぐためにも重要なことです。

 未来は不確実で、見通しは立ちません。しかし、未来の担い手は今の若者、皆さんです。目指したい未来の社会はどんな社会ですか?コロナパンデミックが終わっても元にもどしてはいけないことは何ですか? 皆さんには、大きく考え、小さく始める、「Think big,start small」の心構えをもってほしいと思います。地球環境や未来のあり方を考えながら、自分にできることから始めて欲しいと思います。年の初めの私の希望です。

「校長室からの風」

           オンラインでのリモート型始業式が定着

 

 

寅年、始動!

 2022年、令和4年、干支は壬寅(みずのえとら)です。熊本西高から東に約800mのところにある高橋稲荷神社に初詣へ行きました。この社は日本五大稲荷の一つに数えられ、商売の神様として知られています。社の起源は室町期に遡るようですが、小高い城山の西麓の現在地に建立されたのは江戸初期です。傾斜地で高低差のある境内の清掃ボランティアに西高生がよく参加します。そしてお正月の巫女、お守りの販売等を西高の女子生徒たちが務めています。

 参拝の階段登り口に、西高美術部が制作、奉納した寅の絵馬が飾られていました。縦90㎝、横180㎝の大型の絵馬です。この20年間、美術部は毎年の干支にちなんだ絵を描き同社に奉納を続けており、歴代の絵馬が参拝用の階段沿いに並んでいます。12月末の冬休みに美術室を訪ね、寅の絵を協働で作成している美術部員と話を交わしました。「虎はとても格好良い題材です。どんな姿を描いても絵になります!」と部長の阿津坂さん(2年)が笑顔で語ってくれました。虎と言えば、『山月記』(中島敦)を連想する高校生が多いでしょう。高校の国語の教科書では定番の小説です。『山月記』の虎は孤高のイメージがありますが、西高美術部のモチーフは大きく異なりました。虎の家族が寄り添う温かい雰囲気の画面でした。10人ほどで和気藹々と楽しそうに絵を創り上げている様子が印象的でした。彼らの思いが絵で表現されていると思います。

 正月2日に西高ラグビー部は「初蹴り」を行いました。4日には多くの部活動が練習を始めました。剣道部は朝8時からの稽古ですが、すでに7時少し過ぎには自主的に道場で稽古する部員がいました。また、隣の柔道場では、初稽古の後に保護者の方々による手作りの温かい豚汁が振る舞われました。

 1月15~16日には、全国で約53万人が受験予定の大学入学共通テストが実施されます。西高から78人の3年生が挑戦します。4日には多くの3年生が朝から登校し、教室で自学に励む姿が見られました。高校生活の集大成として全力を尽くしてくれることを期待します。

 「初暦 知らぬ月日は 美しく」(吉屋信子)

 新しい年が始まりました。これからどんな日々が待ち受けているかわかりません。先の見通せない不安な今だからこそ、未来を考えたいと思います。コロナパンデミックが終わっても元にもどしてはいけないことは何かを考えることが大切です。未来を担う高校生が共に伸びる学び舎でありたいと心から願います。

「校長室からの風」

寒稽古 ~ なぎなた錬成大会

 この冬一番の寒波が襲来した12月26日(日)、西高の体育館で全九州高校なぎなた錬成大会を開催しました。九州の平野部でも降雪の予報が出され、大会実施が心配されましたが、当日は青空が広がり、全く雪の障害はありませんでした。長崎県は往復の道路事情を心配され欠場でしたが、沖縄県から首里高校が遠路出場されるなど他の県は前日の土曜の練習会から参加がありました。大分県からは九重・阿蘇の山々を越える道路を避け、福岡経由の鉄道での参加でした。

 しかし、体育館は冷え込みました。朝の気温は氷点下、日中も最高気温は3~4℃で、頬に当たる冷気は切るようでした。この過酷な環境のなかでも、生徒達は裸足でなぎなたの合同稽古、そして試合に臨みました。高校なぎなたの競技人口は少なく、各県においてなぎなた部として活動している高校は数校ずつしかありません。従って、総勢約90人の選手達が西高体育館に集い、一斉に稽古する様子は稀に見る壮観で、熱気に満ちていました。西高なぎなた部の生徒達も、有力な他県の高校との合同稽古や実戦はまたとないチャンスと捉え、とても張り切っているようでした。

 「このような機会を設けていただき感謝します」と異口同音に各県の指導者の方が述べられ、主催者として充足感を覚えました。長引くコロナ禍の影響で遠征や合宿が制限され、思うような活動ができていない学校がほとんどです。地理的に九州の中央に当たる熊本西高で実施できた意義は大きかったと思います。

 寒稽古という伝統がわが国にはあります。寒中に寒さに耐え克己心を養うため武道または芸能の稽古をすることです。全九州高校なぎなた錬成大会はまさに寒稽古にふさわしいものとなりました。全体の合同稽古は2階のアリーナ、試合は1階のなぎなた場で行いました。2階は時折日が射し込みましたが、1階のなぎなた場は一段と底冷えがする環境でした。それでも、すべての選手達(全体の9割は女子)の立ち居振る舞いは凜としたものでした。

 体育館でなぎなた錬成大会を行っているのと同時並行で、グラウンドではラグビー部が強い寒風のなか練習に励んでいました。今年は全国高等学校ラグビー大会(東大阪市花園ラグビー場)に出場できず、この熊本で冬休み期間は練習の日々です。来年こその熱い思いでこの冬を乗り越えてくれると期待します。

 年の瀬まで西高の各部の活動は続きます。

「校長室からの風」

 

伝統の継承 ~ 西高太鼓

 「私たちは、太鼓との出会い、先輩方、コーチをはじめ日頃から様々な縁(えにし)で結ばれていることに感謝しながら、本日この舞台で演奏できることを楽しみにしてきました。本年度もコロナ禍でなかなかステージに立つことができませんでしたが、先輩方からの伝統と太鼓に懸ける思いを受け継ぎ、演奏したいと思います。よろしくお願いいたします。」

 佐藤さん(1年)の挨拶のあと、佐藤さんと森永君(1年)の二人による太鼓演奏が始まりました。この日に向けて、瀬戸コーチの指導で創り上げてきた新曲「縁(えにし)」です。たった二人での演奏ですが、一打一打に気持ちを込めての8分間の熱い演奏でした。

 第32回熊本県高等学校郷土芸能代表選考会・吟詠剣詩舞発表会が12月22日(水)に宇城市松橋総合体育文化センター「ウイングまつばせ」で開催されました。太鼓部門に8校、伝承芸能部門に4校出場しました。出場校の中で西高太鼓部の2人は最少でした。しかし、プログラム1番に登場した西高の二人は、臆することなく、堂々と演奏しました。西高太鼓部は30年の伝統がある部活動です。しかしながら、3年生が引退した今年の夏以降は1年生2人となり、存続の危機に瀕しています。それでも、二人は瀬戸コーチの指導を受けながら、懸命に活動を継続し、この大会に出場したのです。二人を支えようと、5人の卒業生が本番に駆けつけ太鼓の運搬や演奏の準備を手伝ってくれました。演奏後の二人にはやり終えた達成感の表情が浮かび、笑顔も出ていました。大丈夫です。きっと西高太鼓部は来年度以降もその伝統を継承していくでしょう。

 長引くコロナ禍で部活動停止期間や様々な制約に苦しんできたのは西高太鼓部だけではありません。すべての高校の和太鼓部、伝承芸能部が、地域行事出演や演奏発表の場が激減しました。この厳しい環境の中であっても、日々の練習を続け、発表の機会を待ち続けています。このような中、今年の熊本県高等学校郷土芸能代表選考会・吟詠剣詩舞発表会は、保護者が観覧できる形で実施しました。昨年度と今年度は私たち熊本西高が大会事務局を担い、その準備、運営に5人の職員で当たりました。一般のお客さんへの開放までは踏み切れませんでしたが、保護者の皆さんに御覧いただけたことは一歩前進と思います。

 演奏後、感極まって涙を流す生徒。ステージ上の我が子を一心に見つめられる保護者。そして文化ホール玄関前で記念写真を撮る生徒や保護者。このような成果発表の場を年末に設けることができ、心から良かったと思います。

 来年こそは、高校生による太鼓演奏、伝承芸能の舞や演奏を広く一般の皆さん方へ披露したいと願っています。

「校長室からの風」

 

2学期の終業式を迎えて

 12月20日(月)、西高は2学期の終業式を迎えました。終業式に先立って、多くの生徒の皆さんを表彰できたことは私の喜びです。今回特筆すべきことは、美術と書道の両部門で来年夏の全国高等学校総合文化祭東京大会出場を決めたことです。美術科や芸術コースがない高校にとって、これは快挙と言えます。西高は体育系部活動が強いことで有名ですが、文化部の水準が高いことについて、もっと誇って良いと思います。

 さて、新型コロナ感染拡大の中で始まった2学期でしたが、10月から安定した状況となり、創立記念祭、チャレンジウォーク(強歩会)、クラスマッチ、体育コース1年の修学旅行など多くの学校行事を実施することができました。12月17日(金)、3年生の最後のクラスマッチが行われました。あいにくの天候のため、グラウンドでのソフトボールが実施出来ず、男女とも体育館でのソフトバレーボールとなりましたが、応援や歓声の声が響き、残り少なくなった高校生活を惜しむ3年生の気持ちが表れたクラスマッチでした。

 また、10月からはボランティア活動も再開され、多くの西高生が積極的に参加してくれました。併せて、部活動単位での地域貢献活動も行われました。地元の小学校の子ども達とのベースボール交流は野球部の伝統となっています。吹奏楽部は、医療従事者の方達にエールを送るチャリティコンサートに出演しました。その他、新しい動きが見られました。eスポーツ部です。eスポーツ部員が、介護老人保健施設を訪問し、ゲームを通しての交流、支援活動を行いました。エンターテインメントと見られているeスポーツですが、介護分野の認知症予防の活用が始まっており、本校のeスポーツ部の出番がこれから増えそうです。

 高校生の元気、行動力を社会は必要としています。特別な活動ではなくても、登下校中の西高生の爽やかな挨拶で、地域の皆さんは明るい気持ちになると言われます。西高は、地域の皆さんから応援され、信頼される、コミュニティ・スクールでありたいと願っています。

 明日から冬季休業です。冬休みは年が変わる節目の時期で、来し方行く末、即ち過去と未来を強く意識する時期です。受験を控えている3年生の皆さん、今こそ、ここで全力を尽くす時です。すでに進路が決まっている3年生の皆さんは、将来の自分のための勉強を続けてください。1,2年生の皆さんは、自らの進路を考える良い機会です。将来やってみたいことを「夢」と設定します。人は、近い未来の自分が想像できると頑張ることができます。時間は連続しています。未来は、現在の中にすでにあるのです。

 来年こそは、世界のコロナパンデミックが終熄することを皆さんと共に祈念したいと思います。皆さん、良いお年をお迎えください。

「校長室からの風」

        表彰式(西高のスタジオ)