校長室からの風

校長室のアートギャラリー ~ 「文化の西高」

 西高校長室に生徒の絵画・書道の作品展示を今年度から始めたことは1学期の「校長室からの風」でお知らせしました。絵画・書道それぞれ1点でしたが、今月、新たに2点の絵画作品が加わりました。いずれも公募展で賞を得た美術部3年生の大作です。

 久保さん(3年)の作品は、友達がくつろいでスマホを眺めている姿を描いたものです。人物像はとても具象的な一方、周囲には小さな点で幻想的な円や半円が浮かんでいて、ぬいぐるみや桃も配置され、不思議な世界が創り出されています。友人への久保さんの思いが創作のモチーフとなっているようです。また、兜島さんの作品は、画面いっぱいに眼が描かれ、この眼差しそのものがテーマです。大きく見開かれた瞳には、樹木の生えた丘陵が映っており、眼差しの強さが見る者に迫ります。兜島さんの眼差しがこれから様々な対象をとらえ、作品が次々に生まれていくことが期待されます。

 久保さん、兜島さんともに、大学の美術学部に進学し、さらに創作活動に精進していく決意を語ってくれました。言葉以上に雄弁な美術作品で、自らの感受性に基づくメッセージを発信し続けていってくれることでしょう。

 また、書道部の活動においても、顧問の山下先生からうれしい報告がありました。9月10日(土)に宇土市で開催された熊本県高等学校揮毫大会において、2年臨書半切部門で内山さんが1位、山下君が3位、2年創作全紙部門で五島さんが3位、2年臨書全紙部門で斉藤さんが3位を獲得しました。西高書道部がこれだけ上位を占めることは近年なかったことであり、快挙です。早速、放課後に書道室を訪ね、部活動中の書道部員にお祝いを伝えました。部員全員、明るい雰囲気で、迎えてくれました。

 西高は、平成3年という県内で最も早く体育コースを設けたことが象徴するように、体育系部活動が盛んな高校として県内外で知られています。玄関や廊下等に、なぎなた部、柔道部、ラグビー部、野球部などの栄光の軌跡の記念品や写真が並んでいます。しかし、近年、美術や書道の分野の伸びは著しいものがあり、「文化の西高」をもっと誇ってよいと私は考えています。

 「ダイヤモンドの原石のような生徒たちがたくさんいます!」と美術部、書道部の顧問の先生方が口をそろえて言われます。原石の生徒を磨いて、育てることができる指導者がいるのが西高の強みだと私は思います。

 西高へご来校の際は、校長室のアートギャラリーで、生徒の美術、書道の作品をご覧ください。

「校長室からの風」

「NAIS」(西高アカデミックインターシップ)開催

 「NAIS(ナイス)」という学校行事が西高にはあります。西高アカデミックインターンシップの頭文字から生まれた言葉です。1年生普通科(体育コース含む)の生徒たちが、大学や専門学校を訪問し、半日単位の体験入学を行うのです。コロナ禍で過去2年間はオンライン形式の実施となり、大学・専門学校側からの説明、講義等が中心でした。しかし、今年度は3年ぶりにそれぞれの大学キャンパス、専門学校の施設を訪問しての体験学習の場となりました。

 「NAIS」にご協力頂いている大学、専門学校は次のところです。コロナ感染がいまだ収束しない中、本校生を受け入れて頂いたことに深く感謝申し上げます。

崇城大学、熊本学園大学、熊本保健科学大学、尚絅大学、九州ルーテル学院大学、東海大学、九州看護福祉大学の7大学

九州中央リハビリテーション専門学校、大原学園の2専門学校

                                         (順不同)

 大原学園での体験入学のみ夏季休業中に実施し、その他の大学・専門学校は8月29日(月)から9月2日(金)にかけて行われました。5日間、生徒達の希望をもとに作られたローテーションに従い、それぞれの大学・専門学校に「登校」します。そして、各大学、専門学校の特色を知り、入門講義を受け、基礎実習・実技を体験するのです。専門的なことを研究するための施設の充実ぶりに驚きます。入門であっても講義の難しさに戸惑います。一方、実習や実技には積極的に取り組んだようです。

 たとえ半日であっても、大学や専門学校の内側の世界を体験する意味は大きいものがあります。しかも、1年生の2学期の始まりに行います。この時期はまだ多くの大学・専門学校が夏季休業中という事情もありますが、西高としては、高校の先にもっと大きく深い知の世界が広がっていることを強く意識し、学びの動機付けとしてほしいのです。今は理解できない大学の入門講義ですが、それを理解できる学力を養うのが高校時代です。高校卒業後の進路、ひいては自分の人生を考えることにもつながると考えます。

 大学の中には、西高の先輩が待っていて、大学の紹介や「高校で学んでおくこと」等の助言をしてくれたところがありました。1年生にとっては、きっとその先輩が大きく見えたことでしょう。大学生の先輩の姿に、近い将来の自分を投影した人もいるかもしれません。

 無限の知の世界が広がっています。1年生の皆さんの学びの旅は始まったばかりです。

「校長室からの風」

「西高、前へ」 ~ 2学期スタート

 新型コロナウイルス感染症第7波に社会が覆われた夏でした。いつ、だれが感染してもおかしくない状況が今も続いています。しかし、この困難な状況の中、ラグビーの7人制全国大会、四国インターハイ、東京での全国高校総合文化祭など高校生のスポーツ、文化の大きなイベントが実施されました。西高から多くの生徒の皆さんが出場、参加できたことは大きな意義があったと思います。

 「高校生に日頃の活動の成果を発揮する場を設けたい」という多くの人々の熱意と献身的努力によって、このような大規模な大会は、開催、運営されたものです。あらためて大会関係者の皆様に、感謝したいと思います。

 ラグビーの全国大会、インターハイと高いレベルの大会ですから、西高生も最後は勝つことができませんでした。優勝の喜びを得られるのは、団体戦なら一チーム、個人戦なら一人だけです。夏の甲子園の野球大会は初めて東北の学校、仙台育英高校が優勝しましたが、全国で4千校を超える参加校があり、深紅の優勝旗を手にできる高校は一校だけです。他はすべて敗者と言えます。

 しかし、負けたことから何を学んだか? 悔しい体験から何を考えたか? 人は深く考えることで、変わることにつながります。負けた体験から成長していくのです。生徒の皆さんの中には、自分は体育系部活動に所属していないから関係ないと思う人もいるかもしれませんが、それは違います。負けるということを失敗という言葉に置き換えてみてください。失敗した、間違った、できなかった、悔しいという感情が出発点です。なぜ失敗したのか、間違ったのかを考えてみる。そうすることによって初めて人は変わっていくことができます。負けて悔しい、失敗して自分の未熟さを知った、という切実な体験を重ねてこそ、皆さんは成長していくのです。

 熊本西高の2学期は8月25日(木)に始まりました。新たに二人の職員が西高に加わります。英語科の坂口先生(1年1組副担任)、新ALTのアリ・アルサネア(ALI  ALSANEA)先生です。アリ先生はアメリカ合衆国アリゾナ州の出身で、スポーツマンです。日本語を勉強中で、廊下で会うと「お疲れ様です」と言ってくれます。生徒の皆さん、新しい出会いを楽しみにしてください。

 2学期、1年生はNAIS(西高アカデミックインターンシップ)から始まります。実際に専門学校、大学に体験入学をして、高校の先の世界を意識してください。2年生は、様々な学校行事、そして部活動の中心になってください。3年生は、自らの進路を切り開いていく時期です。学校あげて支えます。

 「西高、前へ」。皆さん、一緒に前へ進みましょう。

「校長室からの風」 

2学期から赴任の坂口希先生(英語科)とALTのアリ・アルサネア先生

中学生の皆さん、ようこそ西高へ ~ 中学生体験入学(オープンスクール)

    強い日差しと入道雲、蝉時雨。絵に描いたような真夏の一日が始まりました。7月26日(火)、熊本西高校の「中学生体験入学(オープンスクール)」の日です。新型コロナウイルス感染の第7波という困難な環境の中、感染対策を講じ中学生を迎える体制を整え、今日という日を待ちました。

 午前と午後の部に分け、参加者全体を一カ所に集めることはしません。それぞれ1時間の受付時間帯で随時受付を行い、4,5人~7,8人の小グループをつくります。そして、ボランティアで集まった西高生が1人または2人でリーダを務め、模擬授業や理科の物理・化学・生物・地学の実験、そして英会話やeスポーツはじめ様々な文化部活動を体験して回るのです。

 午前9時~午前10時までの午前の受付。自転車で、保護者の送迎で次々と中学生が来校しました。中学生の皆さん、ようこそ西高へ。遠隔地の中学生のためにJR熊本駅と西高を結ぶ臨時貸し切りバス1台を走らせましたが、30人以上の利用がありました。受付の1学年棟の入口では、太鼓部の歓迎演奏が行われました。そして、リーダーの西高生が各グループを引率し、校内を回ります。参加した中学生の好みも聞きながら、各種体験活動の場に案内します。そこでは、係の西高生が中学生を支援して、実験や様々な学習活動を体験します。この体験入学の目的は、西高生と中学生の触れ合いなのです。中学生の皆さんに西高生のことを直接知ってほしいのです。

 午前の部は約200人の参加者がありました。午後の部は午後1時~午後2時が受付。約130人の中学生が来校してくれました。また、中学生の保護者の方達も午前と午後合わせて40人を超えました。昨年よりも中学生、保護者の来校者は増えました。西高生を前面に立て、教職員はそのサポートに徹し、中学生の皆さんに西高の雰囲気を体験してもらうという狙いは当たったと思います。 

 西高に初めて来たという中学生がほとんどだと思います。中学校よりも広大な敷地に戸惑い、正門から入っても迷う中学生もいました。西高育西会の役員有志の方達や、当初の計画にはなかった事務部の職員の方にも手伝ってもらい、おかげで大きなトラブルもなく和やかな中学生体験入学となりました。

 日差しは強い一日でしたが、有明海からの風が吹き抜け、西高特有の爽やかさも覚えました。高校生と比べると明らかに幼い中学生のあどけない表情、好奇心等を様々な場面で感じた一日でした。

 今日の体験入学が「西高を選ぶ」きっかけとなってくれることを期待します。

「校長室からの風」

「未来への可能性」 ~ 大西市長からのメッセージ

 「未来への可能性」というタイトルで、大西一史 熊本市長のご講演を西高の2年生が聴く機会に恵まれました。7月14日(木)、会場は熊本市民会館シアーズホーム夢ホールで、NPO法人熊本教育振興会の主催によるものでした。同会の主要活動である「新しい風を呼ぶ教育講演会」は、今年度は西区の高校生を対象にしていただき、市立千原台高校2年生と県立熊本西高2年生の合同参加の講演会となりました。両校の代表生徒たちが司会進行を務め、謝辞も行いました。

 大西一史熊本市長(2期目)は54歳、政令指定都市熊本のリーダーです。日頃はテレビなどマスメディアを通してしか知らない熊本市長が、直接高校生にメッセージを伝えられる特別な学びの場となりました。

 「やったことに無駄はない」

 プロになるつもりで高校、大学時代に没頭したバンド活動の話から始まり、140社余り受けた就職活動、そして商社でのビジネスマン生活、国会議員秘書時代の体験とダイナミックな経歴を語られます。

 「何歳からでも学び直しができる」

 熊本へ帰ってきて30代で県議会議員に当選し、議員活動を始められます。そして、40歳で九州大学大学院に入り、法政理論を学び、修士号、博士号を取得されます。この大学院での学び直しは大きい意味があったと述べられました。

 「高校生としての目線でよい、自分の頭で考える」

 6年前に18歳選挙権が導入されましたが、相変わらず若い世代の政治への関心が低いことを指摘されます。みんなの声が反映されるのが政治であり、そうして社会は変化していくもの。インターネット上で政治家は自分の考えを表明しており、ネットを通して質疑応答もできる環境となった。若い世代に対して、もっと政治を身近に意識してほしい、関心をもってほしいと呼びかけられました。

 「より良い意思決定には経験が必要」

 不確実性が高く、正解のない問題があふれている現代社会。急速な情報化、グローバル化に対応しながら、正しい意思決定を行い、生きていくことは大変なこと。しかし、何がファクト(動かぬ事実)か見極めて意思決定していかなければならない。それには人生経験が必要だと強調された。市長自身は若い頃から何度も失敗し、修正し、経験を深めてきたことが今の拠り所となっているとのこと。

 約90分間、張りのある力強い声は変わることなく、情熱をもって高校生に「未来への可能性」を語り続けられた大西市長は次の言葉で締めくくられた。

 「青年は決して安全な株を買ってはならない」(ジャン・コクトー)

「校長室からの風」