徒然雑記帖

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小論文で思い出すあれこれ

 

 学年末考査が終わっての4連休、生徒の皆さんはいかがお過ごしでしたか?

 振替休日の24日(月)は、人吉市の最高気温が県内で一番高く、19℃で4月中旬並みだったとか報じられました。学校下の村山公園のモクレンが咲き始めていて、とてもいい香りが漂っていました。思わずパシャリ。

 

 話は変わりますが、先々週から先週にかけて生徒たちの頑張りのおかげで、私までその栄誉の場に立ち会うことが続きました。2月13日には3E 園田慧伍君の知事表敬(国体弓道競技少年男子団体で優勝)、14日は3E 尾形幸河君の教育長表敬(電験3種合格)、16日は専攻科の学生諸君が請け負った芦北郡鎌瀬地区の山の神社の落成祝賀会出席。いずれもホームページで詳細が紹介されていたとおりです。

 そして、18日は2AA 浦田星奈さんの「第21回高校生小論文コンクール個人部門奨励賞」の表彰式が福岡県から関係者2名が来校のうえ、校長室で執り行われました。

 本コンクールを主催する公益財団法人 生涯学習振興財団(本部:福岡県柳川市)のホームページには、高校生小論文コンクール「今こそ大志を語れ!」の募集要項が次のようにあります。

 

 「高校生を対象に、高校教育及び社会教育の見地から、次代を担う青少年の溌剌とした自己形成と、健全な意識形成に寄与することを期待するもので、●自分の未来、●人生の夢や目標、●今熱中していること、●高校生活、●ボランティア活動…のような個人的なこと・関心事から社会的提言にいたるまで、自由に副題をつけて400字詰原稿用紙で1,200字以上1,600字以内で、小論文スタイルで表現してください」

 

 「笑顔で溢れる未来に」と題する浦田さんの作品、改めて読ませていただきました。「大工であるお父様と一緒に将来一緒に家を建てたい」という決意の下、本校建築科に入学したこと、「将来は大学に進学して沢山の人を笑顔にできるような家を設計するとともに、一段落したらその経験を生かして工業高校で教員として、学んだことを次の世代に伝えていきたい」という熱い思いがしたためてありました。文字に綴るという形にすることが、人生を描くエネルギーになると信じます。浦田さん、受賞本当におめでとうございます。

 

 ところで、生徒の皆さんに改めて聞きます。小論文って一体何だと思いますか。「はぁ、何か難しいことが書いてあるやつ?」なんて答えますか。

 では、作文とどう違うのでしょう。

 私は国語の教師ではありませんので、それについて厳密なことを述べることはようしませんが、「短い論文」である小論文は、「自分の意見を論理的に述べる」ことを目的として読み手を説得する狙いを持って書く文章で、単に経験や体験を元にした自分の主観的な考えを「伝える」ことが目的の作文とは違う・・・、といった説明を(教諭時代、進路指導部で進学係を務めていた頃)していました。今もそうであると信じているわけですが、大きく外れてはいないはずです。

 

 大学進学を考えている人は、小論文が課されることを知って、どう対処しようかと悩んでいる人がいるかもしれません。そのような方は、なぜ大学は採点が簡単なマーク式の問題ではなく、面倒な小論文問題をわざわざ出題しているのか、まずはそこを考えてみることが大事かもしれません。

 

 大学受験の小論文で問われている力は、「与えられた情報を読み取って、自分の意見を論理的に述べる能力」と言い切っていいと思います。これは、大学に入学して、レポートや論文を書く際に非常に重要になる力と重なります。大学は小論文の問題を通して、大学生として必要最低限の力、即ち論理的な文章読解・論述ができる能力を測っているわけです。

 

 既に国語で習ったとおり、小論文は、序論(自分の意見を立場を明確にしながら述べる)→本論(具体例を交えながら自分の意見を裏付けていく)→結論(自分の意見を再度述べる:序論部と同じ表現の繰り返しにならないように注意)で書くことが基本です。このような意見論述能力と論理的文章構成能力は、ひたすら小論文を書いて鍛えるしかないのかもしれません。

 

 当時、私は「日頃から環境問題、少子高齢化、教育経済格差などのトレンドな話題に敏感になり、自分の意見を頭の中でまとめてみるという練習を積み重ねておくことが肝要」と、口癖のように言っていました。例えば、「AIは、人の仕事を奪う」と頻繁に耳にしますが、本当に人の仕事を奪うのか、奪われないためにはどんな力を身に付けておかないといけないのか、そういったことに対して自分の意見を持っておくことが大事だということです。そのためにも、新聞の社説を読むことを勧めていました。他の人の意見を知ることはテーマに対して深く考える機会になるからです。

 

 余談になりますが、私がこれまで出会った小論文のテーマで一番驚いたものを紹介します。2014年(平成26年)に愛知医科大学で出題された「(自分が浮気したから)婚約者に別れの手紙を書いてください」というものです。

 「青春を捨て彼女も作らずに今まで一心不乱に勉強した結果をこれで出せというのか!?」と、受験生の間で大きな話題になりましたので、当時中学生だった皆さんたちの耳にもひょっとして入っていたかもしれません。

 

「あなたにはこれまで3年間真剣なお付き合いをしてきて、来年くらいに結婚の約束をしている彼ないしは彼女がいるとします。ところが2カ月前にふとしたことで知り合った別の人が好きになってしまい、今付き合っている人と別れる決心をしました。600字以内でお別れの手紙を書いてください」

 

 もし、医学部を目指す受験生の立場に立ったとしたら、どのような手紙を書きますか?

 「涙を流しながら書いた受験生もいたかも・・・」とか、「恋愛体験がない人には絶対的に不利かなぁ・・・」、私は考えれば考えるほど「一体この小論文は受験生(医師)の資質・能力の何を探ろうとしているんだろう」と悩んでしまいました。

 

 ある予備校の先生の見立てには、「これは記述力だけでなく想像力や人間性まで問われる非常に高度な問題で、病状や余命、医療ミス等に関して、本人や家族に告知する場面が、婚約者に別れを伝えるというという場面に擬せられている」とありました。こうした良くないことを伝える際には、希望を持てるようにすることも大切なのは分かりますが、「君なら素敵な人がきっと見つかるといった言葉を回答に織り込むと評価が上がる可能性が高い・・・」、それ本当かなぁ?

 

 一方、就職試験でも小論文(もどき)を課す企業が少なくありません。進路指導室に保管されていた今年度の受験報告書によると、次のようなテーマで出題されていました。

 

 ●入社してから頑張りたいこと、●3年後の自分、●入社後の目標、●将来の夢、●志望職種であなたが発揮できる能力は何か、●〇〇で働く上で一番大切だと思うこと、●あなたが会社に求めること、会社があなたに求めていると思うこと、●あなたにとって仕事とは

 

「もどき」と敢えて書いたのは、求人票の試験欄に「小論文」を課す旨があるものの、実際に出題されたお題が「あなたはどのような社会人になりたいか」であるなど、明らかに自己PR系であり、これでは書ける内容も主観的なものにならざるをえず、作文だよねと考えられるからです。

ということで、大学進学の小論文と就職の小論文は打つべき対策が違うのかもしれません。

 

 最後に・・・、本校図書館の2月の受入図書に「奇跡の論文図鑑」という本があります。「ラーメンの残り汁でエンジンが動くか」など真面目に論じてあり、論文に込められた底知れない好奇心、愛、情熱、苦悩に驚かされます。

 前書きには「人間は万物を研究し、それを論文にしている」とか「研究者はものごとをこんなふうに見ているのか、という目線を味わう!」とかあり、ワクワクします。NHK Eテレ「ろんぶ~ん」を本にしたものです。刺激に満ちた知の世界が広がっており、面白いですよ!

【校長】