校長室よりブログ
全日制 2学期始業式あいさつ 「五感で学べ」「イメージせよ」
皆さん 今年の夏休みは,どうでしたか?
1学期終わりに 各学年「勝負の夏」と発破をかけられていたと思います。例年と比べて,一歩先へ進む取組ができたでしょうか?
この夏,天草市が行った講演会に スタディサプリAI研究所所長で、東京学芸大学大学院准教授 小宮山利恵子さんの「変化の激しい時代だからこそ地方においてできること」という講演がありました。
今から24年後の2045年,シンギュラリティ(AIやコンピュータが、大部分の人間の仕事に取って代わる転換点)を迎えると予測されているという説を引きながら,コンピュータが追いつけない世界を創り出していくためには,「共感する力」と「イメージする力」を身に付けなければならない。その力を養うための「教育資源」は,地方に,天草にこそある,という講話でした。
シンギュラリティと大げさに言わなくとも,車の自動運転や自動精算システムはどんどん進んでいますし,NetflixやAmazon prime等の動画配信サービスに押されて,TSUTAYAもCDやDVDレンタルから撤退しそうな勢いです。皆さんが壮年期を迎える頃には,本当に今ある仕事の半分はなくなってしまっているのかもしれません。
私には,この30年間 ずっと忘れることができない詩のフレーズがあります。
「あさはこわれやすいがらすだから 東京へゆくな ふるさとを創れ」
谷川雁という水俣出身の詩人が読んだ「東京へゆくな」という詩の一節です。
「朝」=「壊れやすいガラス」という等式を示され,それに一点の疑いも抱くことができない以上,それに続く「東京へゆくな」「ふるさとを創れ」という二つのメッセージにも一点の疑いも抱くことはできません。このメッセージには100%頷いてしまうのです。
事実,1950年代このメッセージを受け止めた多くの若者が,東京に行くのをやめ,自らのふるさとを「根拠地」として活動を始めました。この言葉は、当時の多くの若い日本人の心を揺り動かし,一時代を創り出す言葉となったのです。
全く脈絡のない言葉から一つの象徴的なイメージを創り上げ,人々の心を貫き通すことができるのは,人間だけです。どんなに膨大な知識データを蓄積しようとも,最先端の科学データを駆使しようとも,”規則に基づいたデータ処理”という大前提がある以上,現在のスーパーコンピュータ,量子コンピュータであっても,成しえません。
そして,人間の中にあっても,このシンボリックなイメージ作りは,五感を使ったリアルな学びで感覚を研ぎ澄ませた人々の中からしか出てきません。これこそが,「地方にこそ人間教育のための教育資源がある」といった小宮山さんの主張の根幹でしょう。
そこで,皆さんに望むことは,「五感で学べ」「イメージせよ」ということです。
目の前の一つの事柄には,その出来事が起きた背景があります。「朝」を「壊れやすいガラス」と言われて,抵抗できなくなくなってしまうのは,我々の持つ「朝」の光の中に,壊れやすいキラキラとした硬質な光を感じているからです。その本質を突かれて,無条件に納得してしまうのです。
日々「この背景は何だろうか?」とイメージし,仲間たちと「この本質は何だろうか?」と討議を繰り返すことで,全体を覆うイメージを構築することができます。
本当に真実を捉えたイメージならば,世界の片隅から発信されたとしても,それは瞬く間に世界を覆いつくすことができるでしょう。その発信を許容する情報ネットワークは,いま世界中に張り巡らされているのです。
2学期の開始を前に,科学部が シンガポール・ベトナム・タイ・台湾等を含めた,国際大会「Global link Online2021 General部門」で,本年度の最優秀賞を受賞したというニュースが飛び込んできました。
濱昂輝さん,小松奈桜さん,田中翔大さん,濵﨑鴻さんの4人です。
研究発表タイトルは”Toward a more accessible global warming countermeasure to protect the future by combining sea-level prediction and eelgrass planting.”(未来を守るよりアクセス可能な地球温暖化対策としての海面予測とアマモの移植研究)。
地球温暖化を防ぐために,天草に住む我々はどうしたら良いのか,何ができるのか、という一つ突き抜けた思いが,言葉や文化習慣を超えて,集まった他の国の人々の心も動かしたようです。「日々学んだ中身で、何ができるのかが大事だ」という,これから先の新しい教育観を自ら達成してくれた天草高校生のもつポテンシャルの高さに敬服しきりです。おめでとう。更に世界に打って出る人が続いてほしいと思っています。
最後に,皆さんにお願いです。
いよいよ,3年生にとっては,本当に勝負の2学期となります。2年生にとっては,天高の屋台骨を背負ってもらうスタートとなります。1年生にとっては,天高生として,その才能を開かせ始める時期です。
そこで,新型コロナウイルス感染拡大防止のために,もう一度,マスクをきちんと付け続けること,食事や歯磨きでマスクを外す際には喋らないことを徹底して,安心して学べる環境づくりに協力してください。
2学期は,文化祭も控えています。一人ひとりが持てる力を存分に発揮して,とことん成長する秋にしていきましょう。