2018年5月の記事一覧
「ひよどり越え」の名前の由来を探る(その2)
中庭のあじさいの花が二輪咲いています。なぜ紫陽花と書いてアジサイと読むのか知りません。でも、この淡い紫色を見ていると夢見心地の気分にひたれます。
今朝、高校総体の行進の練習がありました。総体が終わるまで梅雨入りは待ってほしいと願っていましたが、とうとう熊本も昨日梅雨入りしてしまいました。
注:以下の記事は、昨年7月20日にアップした「アクセス数682962→鵯(ひよどり)越えの戦い)」の中編になります。(昨年7月20日の記事は→こちら)
本校生が「ひよどり越え」と呼んでいるのは、平家物語の中でも語られる平家滅亡の前兆となる戦い(一ノ谷の戦い)に出てくる呼称です。
いつ頃誰が列車通学生が上ってくるあの坂を「ひよどり越え」と名付けたのか、人吉市史や本校の30周年記念誌などで調べましたが結局分かりませんでした。それどころか意外なことを知りました。それは・・・
「黒坂」
昭和41年4月8日号の人吉新聞に「黒坂の登校階段完成」の見出しに続く次のような趣旨の記述があり、その当時は「黒坂」と呼ばれていたようです。
球磨工業高校通学生徒の一部父兄(主に汽車通学生から市に対し整備を陳情されていた市内城本町の西校登校道路(人吉駅裏の通称黒坂)がこのほどコンクリート階段に整備され、通学生徒をはじめ、地元の利用者は喜んでいる。
同道路は急勾配のため、整備しても一雨降ればすぐ土砂を洗い流し、路面が悪くなり地元民からも整備方が陳情されていた。昨年は悪路を通行する生徒の姿を見て、同町民政委員谷川源昨さんが老身を問わず道路整備に汗を流し生徒から感謝されたこともあったが、今回の整備で通学生も安心して通れると言っている。同道路は延長140m、巾員1mを全長階段にしている。工費は11万6千円。
一方、「大悲坂」とも
相良三十三観音の一つ、九番村山観音(写真右)はJR人吉駅の裏手にあります。案内のパンフレットには「大村横穴群*にある『大悲坂』が登り口」とありました。
そのパンフレットには、「西暦1764年紺屋町の商人達が協力し合い、観蓮寺の観音堂に行く参道を苦労して切り拓き、その事業を後世に残そうと「大悲坂碑」(だいひさかひ)を建てています」とあります。従って、この登り坂は250年前頃は、「大悲坂」と呼ばれていたことになります。
左の写真では読み取れませんが、実際に石碑に近づいて見ると、確かに大悲坂と彫り込んであります。
村山観音が安置されているお堂は「大悲殿」と呼ばれているところから来ているのかもしれません。手元の国語辞典によると、「大悲」とは「他人が悲しみ苦しんでいるのをみて助けてあげたいと思う人の心」とあり、どうやら仏教用語のようです。
結局「ひよどり越え」とは?
私、赴任当初から気になっていたことがあります。それは、平家の落人伝説が色濃く残る地域に所在する学校だからある意味当然かもしれませんが、本校も色々と落人伝説と関わりがあるのでは?ということです。どんな点にそれを感じたかと言うと・・・
① 今、話題にしている平家物語にも出てくる「ひよどり越え」のネーミングがまさにそれ。
隣の人吉西小学校の先生方を含め十人近くの行き交う地元の方々に坂道の名前を尋ねてみましたが、その全員が「この坂に名前があるの?」とか「知らない」といった答えばかりでした。人吉西小学校の某先生は、「球磨工生が上がってくる坂」と呼んでいると言われ、「ナルホド!」と思いました。
また、学校評議員をお願いしている1期生の馬場上氏にも尋ねてみたところ、「当時何と呼んでいたか忘れたが、そういう(=ひよどり越え)呼び方はしていなかったはずだ。初めて聞いた」という証言をいただきました。
② 建築科の実習工場の前にキジ馬が3騎積み上げてありました(右写真)。フラワーポットとして生徒が作った作品だそうです。言うまでもなく、キジ馬は平家の落人たちが都での華やかな生活を思い返しながら作る手慰めとして作り出した民芸品だと言われています。
* 大村横穴古墳群(Omura side hole tomb)は、JR人吉駅の北側にあり、岩の崖には27の横穴が掘られています。1400年ほど前の古墳時代後期の墓だと言われています。左の写真のように、人吉駅のホームからぽっかり口を開いている穴が見えます。何も知らなければきっと「あれはなぁに?」と思うはずです。古代人が闊歩していたことを彷彿させる場所のすぐ隣に停車場がある光景は日本広しといえどもあまりないかもしれません?
パンフレットには、「この中の7基の外壁に馬などの動物、武具、文様等の装飾が残っていることから、早くから学界にも注目され、大正10年(1921年)3月3日に国指定史跡となりました。昭和58年から毎年7月第4土曜日には地元城本町住民が中心となって「古墳まつり」が続いています」とありました。
この古墳に沿って、約240人の列車通学生が毎日登下校で使っている365段の階段があり、本校関係者が「ひよどり越え」と名付けているのです。
途中に2箇所外灯があるものの、夜はとても暗く、生徒総会でも外灯増設の要望が出ていました。その道を使っているのは本校生がほとんどだからということでしょうか、外灯の電気代は何と本校が支払っています。4月分は735円でした。
人吉市に外灯の増設を陳情しても国指定の文化財(大村横穴古墳群)だから形状の変更が難しいらしく、なかなか進んでいないのが現状です。
後編に続きます。
【校長】
Why don’t we go to see a firefly tonight?
いつも本校のHPにお越しいただきありありがとうございます。
朝夕は半袖では少し肌寒いけど、日中は汗ばむ爽やかな初夏の陽気です。そろそろ梅雨入りも気になるところですが、いかがお過ごしでしょうか。
昨日は私たち教師の「完全定時退勤日」ということで、生徒の皆さんは部活がありませんでした。嬉しそうな表情で下校する何人かに「早く帰って何するの?」と水を向けたところ、にこにこしながら異口同音に「勿論、勉強です」と。何かしら可笑しかったです。
私は昨夜8時頃、歩いてコンビニに買い物に行く途中、川べりの草むらに蛍が光を放っているのを目にしました。蛍、今年になって初めてでした。綺麗な清流に恵まれたここ人吉は蛍が舞うんですよね!
昨年、こちらに越してきて、蛍が乱舞する光景を何十年ぶりかに目にして、自然が豊かなんだと改めて驚きました。
いつかは部屋の中に蛍が迷い込んできたこともあり(右写真)、淡い光の点滅を見ながら、女子から『今夜一緒にホタルを見に行こうよ』と高校生の頃に誘われていたらどんな返事をしただろう‥‥とか、ありもしなかったことを考えつつ幽玄夢幻の中眠りに落ちるという何とも贅沢な体験もしました。
そういえば、千年も昔に書かれた「源氏物語」にも、蛍が恋物語にふさわしい感じで描かれています。ズバリ「蛍」と名付けられた巻でです。
手元のシラバスによると、本校の国語では徒然と伊勢は学習しますが、源氏は扱わないみたいですから、生徒の皆さんの中でこのストーリーを知っている方は少ないのかもしれません。ごく大雑把にいうと、玉鬘(たまかずら)という姫君の姿を、ある男性に見せようと考えた光源氏が、暗闇のなかで蛍を放ち、その光に照らし出された姫の美しさに、男性がますます恋心を募らせていくというシチュエーションでした。
いよいよ明日から中間考査が始まります。試験勉強も気合いを入れてやらないといけませんが、窓越しに外を眺めてみませんか。
暗闇の中のロマンチックな光の明滅に癒されるかもしれません。
【校長】
五月ばかりなどに山里にありく
いつも本校のHPにお越しいただきありありがとうございます。
生徒の皆さん、連休後半をどのように過ごしましたか。
「部活三昧」と聞こえてきそうですが、1日位は休養日があったはずでは・・・?
さて、タイトルの「五月ばかりなどに山里にありく」とは、枕草子第223段の出だしです。毎年5月になると、なぜかこの一節を思い出してしまい「何と颯爽とした書き出しの筆だろう!」と、文言に誘われるかのように、野山を歩きたくなります。
ということで、私はこどもの日の5日、熊本市の金峰山中腹にある洞窟、霊巌洞*1まで、徒歩で往復(16キロ位)してきました。晩年の5年間を熊本で過ごした宮本武蔵が、この洞窟にこもって兵法書「五輪書(ごりんしょ)」を著したことは、あまりにも有名です。
山麓に広がるみかん園は白い花が満開。目を下に落とすと、道沿いにはヨモギがびっしり生えていています。顔を近づけて、「これこそ野原の匂い!」と、その香りを楽しんでいたら、223段後半に「蓬の車に押しひしがれたりけるが、輪まはりたるに、近ううちかかりあるもをかし」*2と続いていたことも思い出しました。多分、牛車の中にはヨモギの香りが漂っていたんだろうな・・・と。
そんなことを考えていたら、よもぎ餅を久しく口にしていないことを思い出し、どうしても食べたくなって、帰宅後近くのスーパーへ直行。
製菓・パンのコーナーに、最後の1パックが残っていました。某大手パンメーカー製のよもぎ餅大福5個パックで213円。北海道産の粒あん入りです。
そのお味は・・・?
餅の色こそヨモギ色でしたが、その香りはほとんどせず、「こんなものかな・・・」と少し残念でした。夕方のニュースでは温泉施設で「いい香り!」とか言いながら菖蒲湯につかる子どもたちの様子を報じていました。季節の匂いを楽しむ心のゆとりをいつまでも持ちたいものです。
週の初めは大雨です。連休のせいか今週は少し長く感じるかもしれません。高校総体も近づいていますが、あと10日で中間考査。特に、1年生にとっては高校で初めての定期テストになります。ぜひ、計画を立てて学習を始めてください。
*1うっそうと茂る樹木におおわれ、神秘的な霊場として知られる雲巌禅寺(うんがんぜんじ)の裏山に所在します。洞窟内には岩戸観音(いわとかんのん)の名で呼ばれる観音像が安置されています。
*2【口語訳(意訳)】車の車輪に踏まれた蓬が輪が回る時に、ふっと剥がれて車の御簾などに当たり、パシッと微かな音を立てて引っかかるのが趣(おもむき)がある。
【校長】
飛行機雲に想う
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月が変わり、いよいよ平成のカウントダウンが始まりました。大型連休狭間の今日5月2日、学校では朝から進学課外の開講式、そして午後はこの春就職して帰省した卒業生を招いて機械科の生徒を対象に進路講話が行われました。
さて、いきなりですが、生徒の皆さんは飛行機に興味がありますか?
私は高校の頃、鉄研(鉄道研究同好会)に所属しており、東京あたりまでの出張なら今でも鉄道を利用するほうで、飛行機は今一つです。でも、お月様を見るのが好きなので、今日はどのあたりにいるんだろうと空を見上げた際に飛行機を見つけることが多々あり、人吉上空を飛ぶ飛行機に興味を持ちました。
多分、上空の気象条件が整った時だと思います。青空の下、一直線にくっきりと力強い雲*1を引く飛行機を目にすることがあり、嫌なことも忘れていつまでも目で追ってしまいます。そうこうしているうちに、人吉上空は、高高度を飛ぶ国際線の旅客機の航路が設定されているのでは?と思うようになりました。
はるか上空を飛ぶ機影を眺めていると、
あれはどこから飛んできてどこに向かっているんだろうとか思いませんか?
私はとても気になります。
知っている人も多いかもしれませんが、リアルタイムで世界中の飛んでいる飛行機が分かるという「Flightradar24」というスマホ用のアプリがあります。今、この瞬間飛んでいる飛行機が、どこを飛んでいて、どんなルートで、高さとスピードはどれぐらいかを地図上に表示してくれるもので、コックピットからの仮想の眺めも見ることができるというものです。(ADS-Bという航空機が現在の位置と高度を絶えず送信するシステムを使っているらしいです)無料版と有料版がありますが、無料版でもインストールしていると結構楽しめるお薦めの神アプリです。
ということで、私、飛行機を見つけると、いつもこのアプリを開いて検索してしまいます。あくまでも私が人吉の空を見上げて確認した飛行機を調べた限りの話になりますが、本市上空を飛ぶ国際線には以下の便がいました。(そのアプリの画像を貼り付けて皆さんにお見せすることができればいいのですが、著作権上その行為が許可されているのかどうか不明ですから、フリーの白地図にいくつかの路線のイメージを書き込んだものを代わりに載せておきます)
台北(台湾)-新千歳(札幌)、香港-新千歳、
バンコク(タイ)-新千歳、台北-成田、
台北-福岡、マニラ-福岡
仁川(韓国)-グアム、仁川-ウェリントン(ニュージーランド)、
仁川-シドニー(オーストラリア)
上海-サンフランシスコ
重慶(チョンチン:中国)-サンフランシスコ
いかがでしょうか、写真にあったように、人吉上空でいくつかの航路が十字に交わっていることがどういうことかお分かりだと思います。
私は、高校・大学の頃、故城達也さんの素敵な声のナレーションで始まる「ジェットストリーム」*2という深夜ラジオの番組を聴いて育った世代です。だからでしょうか、国際線の飛行機に乗ったことこそ数回しかありませんが、翼のランプを点滅させながら夜間飛行をしている飛行機を眺めると、明日の朝どこに降り立つのだろうかと、この空のもと繋がっている異郷の街や情景を想像してしまい、一緒に乗っていきたくなります。
若葉が美しい季節、今日は八十八夜(立春から88日目)、あと3日で立夏、往く春を惜しむ頃です。生徒の皆さん、有意義な連休後半をお過ごしください。
*1飛行機雲はジェットエンジンからの排気ガスが核になり、水蒸気が凝結して生じるもので、上空の環境によってできる時とできない時があります。どんな時にできるのか調べてみて驚きました。飛行機雲が現れすぐ消えずに長時間残る時は、空気中の水蒸気が多いことを示し、何と、天気が下り坂の前兆なんだそうです。そういうこともつゆ知らず、この歳までポカンと眺めていたとは・・・!?
ちなみに「飛行機雲」は、英語でairplane cloudではなく、contrail [コントレイル]と綴るんだそうです。これは、condensation trailからできた単語でcondensationは「(気体の)凝縮・凝結」、trailは「跡」の意味です。
*2その番組のオープニングナレーションは次のとおりでした。CDまで購入して何度も聴いたので今でも諳んじて言えます。皆さんも声を出して読んでみませんか?これは「声に出して読みたい日本語」だと思います。
遠い地平線が消えて、ふかぶかとした夜の闇に心を休める時、はるか雲海の上を音もなく流れ去る気流は、たゆみない宇宙の営みを告げています。
満天の星をいただく、はてしない光の海をゆたかに流れゆく風に心を開けば、きらめく星座の物語も聞こえてくる、 夜の静寂(しじま)の何と饒舌(じょうぜつ)なことでしょうか。
光と影の境に消えていったはるかな地平線も瞼に浮かんでまいります。
日本航空があなたにお送りする音楽の定期便ジェットストリーム 、皆様の夜間飛行のお供をするパイロットは私、城達也です
【校長】
学校情報
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