徒然雑記帖

565656とは何とまぁ!

 4月1日(土)、午後分前の本校       

HPのアクセス件数は565656でした。

  これを確認した時のスマホの右上に表示されていた電池残量が65%、丁度、おでん用に卵を個茹でていた最中でした。この朱書きの数字を横に並べても565656、何という偶然だろうと思ってしまいました。

 花に花言葉があるように、数字にも意味があると昔から信じられています。それによると、5には「変化が訪れる」、6には「富をもたらす」という暗示があり、その2つが組み合わさった56は「変化によって恩恵を授かる」と解されているようです。この56が3回順番に現れるとは、何とおめでたいことだろうと思い、この565656に関して、56に関する思い出を3つ綴ってみたいと思います。

 

ぱっと思いつくのは、本校が来年、創立56年目であるということ、第二次世界大戦の指導者だった山本五十六連合艦隊司令長官(「いそろく」:お父様が56歳だったときの子、「苦しいこともあるだろう/言いたいこともあるだろう/・・・の「男の修行」の名言で有名)、雷おこしの製作体験学習で、昔、修学旅行の時に引率したことがある東京浅草の雷5656会館、「シゴロク」や「高原のポニー」の愛称で親しまれたC56形蒸気機関車などです。

また、昭和56年(1981年)という切り口だったら、私が大学4年生の時でしたので、トヨタが高級スポーツ車「ソアラ」を販売してブームになったことや、ダイアナ妃がチャールズ王子と結婚したこと、作家の向田邦子さんが台湾で起こった航空機墜落事故で亡くなったことなど、当時の思い出に重ねながらいくつかはすぐに思きます。しかし、いずれも生徒の皆さんたちには生まれる前のことで関係ありませんよね。

そこで今日は、各クラスに配布されているシラバスを見ながら、皆さん方が高校3年間に学習することに関連付けて考えることにします。

 

最初の56です。2年生の国語総合で5月頃学習する「伊勢物語」に関連付けました。その心は、伊勢物語は第56代清和天皇(在位:946967)の御代(みよ)の出来事だからです。まずクイズを1問。

 

 千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがは)

   からくれなゐに 水くくるとは

 

多分耳にしたことがある和歌だと思います。これは古今集に収録されており、百人一首にも採られ、数年前に公開されてヒットした競技かるたに青春を懸ける高校生の物語「ちはやふる」のタイトルにもなった超有名な歌です。現代語訳は不要でしょう。さて、誰の歌でしょう?

平安時代一のプレイボーイと名高く、光源氏のモデルの一人と言われ、「伊勢物語」の主人公のモデルとも考えられている人物…、そうです。在原業平(ありわらのなりひら)です。業平には清和天皇に関連してこんな悲恋があります。

清和天皇の后(きさき)となったのは藤原高子(たかいこ)。彼女は、清和天皇が17歳の時、25歳で入内(今でいう婚姻)し、貞明親王(後の陽成天皇)を産みました。高子は入内する前、業平と恋愛関係にあり、言うまでもなく高子の一族によって強引に別れさせられました。悲嘆に暮れる業平は、こんな歌を詠んでいます。

 

月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ  わが身ひとつは 元の身にして

 

【現代語訳】あの月は昔と変わったのだろうか。この梅の咲く春の景色は昔と変わっているのだろうか。いや、どちらもあなたと一緒に見上げた美しい月であるし、かぐわしい香りを楽しんだ梅の花である。しかし、あなたがいなくなり一人ぼっちになってしまった今、私の周りのものは何もかも変わってしまった気がする。私だけは元とのままで変わらないのに・・・

 

世の無常と手が届かない所に行ってしまった恋人に思いを馳せ、嘆いている歌ですが、日本和歌界に燦然と輝く最高傑作とも称され、外国の日本文学研究者によって他言語に翻訳されている数が最も多い和歌なんだそうです。

 

伊勢物語は全部で125段ですから、薄い文庫本1冊程度です。一話一話も短く、簡潔です。どこから読んでもいいし、読み飛ばしてもいいので疲れません。その意味で古典に親しむ入口として最適です。それでいて、深い内容があり、とても面白いです。何が、面白いのか?何と言っても、歌がいいです。現代人と変わらぬ喜怒哀楽を詠んでいますので、「この気持ち、わかるなぁ」と共感できる歌が必ず見つかるはずです。詠んでいる歌は、男女の恋愛、男同士の友情、親子の情愛、年を取ること、愛する人の死、旅の情緒など実に多彩です。ちなみに、先ほど紹介した「ちはやぶる」は第106段に、「月やあらぬ」は第4段にあります。1,2年生の皆さん、伊勢物語の学習、楽しみにしておいてください。

 

 次の56は、3年生の数学Ⅱで就職試験対策として学習する場合の数(順列・組合せ:本来これらは数学Aで学習する内容です)に出てくるの計算結果です。実は、などは、本校入学後の6月に全科とも受験する計算技術検定の中でも出てきます。しかしその時は「詳しいことは数学で学ぶから、今は電卓操作だけできるようになりなさい!」などと言われ、意味は分からず、ひたすらキーを叩くことだけに没頭することになります。

とは、8人の中から3人選ぶとき、何通りあるかということを計算する式で「Cの8,3」とか「コンビネーション8の3」とか読み、次の計算をします。

(8×7×6)/(3×2×1)56通り

 

一般的には、n個の異なるものから順序を考えずにr個取り出す選び方をn個からr個取る「組合せ」といい、その総数をnCrであらわします。Cは組合せを意味するCombination(コンビネーション)の頭文字で、次の計算をします。

nCrn!/(r!(n-r)!)になります。

(ここでn!=n(n-1)(n-2)・・・・・1です)

 

 nとrの選び方で色々な計算結果が得られるわけですが、なぜ結果が56になるを取り上げたかというと、その心は・・・。

昔、担任をしている時、「明日数学のテストというのに、数学の先生が帰っていて質問できません。先生、教えてくれませんか?」と言いながら、生徒が機械科の職員室に質問に来ました。見れば「男子3人、女子5人の中から3人を選ぶとき、男子が少なくとも1人含まれる選び方は何通りあるか」という問題です。

高校の頃、「順列・組合せ」はあまり得意なほうではなかったのですが、昔を思い出しながらどうにか教えました。このことが強く記憶に残っていたからです。答えは「46通り」です。皆さん分かりますか?

8人の中から3人選ぶのは、先ほど述べたとおり、

(8×7×6)/(3×2×1)56通り

男子が少なくとも1人含まれるということは、3人とも女子の場合を引けばいいので、3人とも女子であるのは

(5×4)/(2×1)10通り

従って、561046通りになります。

数学では、「男子が少なくとも1人含まれる選び方」というのは、「全事象-女子が3人選ばれる選び方」で、これを「余事象」の考え方と言います。

実はこれ、ずっと昔の学生時代に大検(今は「高校卒業程度認定試験」と名称が変わっています)の試験監督をアルバイトでやっていたとき、全く同じ問題が出題されていたのを見たことも思い出しました。ということで、nとrの組み合わせは無数にあるのですが、市販の問題集や簡単な入試問題レベルでは8と3が多いような(あくまでも)気がして、結果の「56」というのは数学の先生の感性に訴える何かがあるからかな・・・?とか密かに思っているところです。

 

 最後の56、これは何にこじつけようかな・・・と考えました。

憲法56条の定足数の内容、北緯56度や東経56度は地球上でどんな所を通っているか、第56代内閣総理大臣だった岸信介氏の頃の我が国の世相、原子番号56のBa(バリウム)の性質、在学中に皆さんが受験する電気工事士や危険物乙種第4類等の国家試験の中で56が超重要数字になっていなかったかな・・・と色々と調べてみましたが、ぱっとしたものはありませんでした。

 

そうこうしているうちに、右の写真のような最近学校に寄贈を受けたYamasemi/Kawasemiという1冊の本が目にとまりました。そう言えば、地元のローカル線である肥薩線は3月4日にデビューした観光特急「かわせみやませみ号」で沸いています。「ヤマセミ(山翡翠)」は人吉市の鳥、「カワセミ(翡翠)」は八代市の鳥とあり、なるほど水質日本一の球磨川に棲む美しい鳥を列車名につけたJR九州のアイディアは素晴らしいと思っていました。

その本にこの2つの鳥の生態が詳しくまとめてあり、こんなことが書いてあります。カワセミに関して、「宝石の翡翠(ひすい)は、このカワセミの名前から来ている。宝石のほうが先ではない。翡翠の二文字共に羽の字が入っていることからも判ろう」と。そしてヤマセミに関して、「産卵後56日で巣立つが、人吉市の観察では1日に1羽ずつ巣立っている」と。何と、ここに56という数字を偶然に見つけることができました!

 

皆さんも一日一度も数字を見ない日はないはずです。56という数字に注意を払って学校生活を送ってみましょう。

 

今日は長い文になってしまいました。ここまでお読みいただきありがとうございました。 【校長】