徒然雑記帖

アクセス数592017にセミを思う

 いつも本校のHPにお越しいただきありがとうございます。
 59
2017とは、5月11日(木)午前6時16分現在
の本校のHPのアクセス件数です。

ここ1週間の1日当たりの平均アクセス数720件のまま推移したと仮定して、「○○2017」というアクセス数が今年2017年の間に何回程あるのか気になりました。

 

482017・・・2016年12月28日(確定)・・・×

492017・・・2017年 1月15日(確定)・・・○

   ↓

   ↓

   ↓

   ↓

592017・・・2017年 5月11日(本日)・・・○

   ↓

   ↓

   ↓

   ↓

752017・・・2017年12月21日(予定)・・・○

762017・・・2018年 1月 5日(予定)・・・×

 

ということで、あくまでも仮定の下ですが、492017から752017まで27回出現することが予想されます。

 

この27回の「○○2017」の中で素数(中1で習ったように、その数と1でしか割れない数字:、5、7、11、13、17・・・など)はいくつあるのかとても気になり始めました。

末尾4桁の2017自体は素数*1ですが、その前に○○という2桁が付くとどうなるのかということです。昔から知られているように、素数の出方は神出鬼没で予測不能、求める公式はありません。「それら27個のうち3つ位は素数かもしれない」という予想の下、最初の492017から素因数分解をしてみました。

何でも分解しないと気が済まないのは、機械科の教員として染みついた悲しい性(さが)です。「おっと、いきなり最初から素数とは!」と、驚きつつも一つ一つ丁寧に計算していきます。

 

492017・・・素数!

502017・・・3×167339

512017・・・11×89×523

522017・・・素数!

532017・・・3×59113

542017・・・7×77431

552017・・・31×17807

562017・・・3×187339

572017・・・439×1303

582017・・・素数!

592017・・・3×197339

602017・・・13×46309

612017・・・7×17×37×139

622017・・・3×11×61×103

632017・・・23×27479

642017・・・223×2879

652017・・・3×217339

662017・・・19×34843

672017・・・29×23173

682017・・・3×7×47×691

692017・・・素数!

702017・・・素数!

712017・・・3×26371

722017・・・83×8699

732017・・・11×13×5119

742017・・・3×247339

752017・・・7×53×2027

 

ということで、5個ありました。6桁の数字から、ある意図を持って取り出した末尾7の数字27個の中に、素数が5個という出現率(19%)は、高いのか低いのか大いに気になったところです。

 

ところで、生徒の皆さんは、素数はランダム(でたらめ)に現れると思いますか。*2

実は、素数はアマチュアからプロまで多くの同好の士が研究の対象としています。素数が出現するランダム性について、アメリカのスタンフォード大学の数学科の先生方による次のような趣旨の研究結果を読んだことがあります。

最初の1億個の素数を調べた結果、「1で終わる素数」の次がまた「1で終わる素数」になる確率は18.5%で、本当にランダムならこの確率は25%じゃないとおかしい。一体何だ!!という趣旨の話です。

おわかりでしょうか・・・?

素数の末尾はかならず1379なので、確率は4つに1つ即ち25%のはずです。この研究結果によると、100%ランダムに出現するのじゃなさそうです。試しに他の数字でも調べているようで、「3」と「7」で終わる素数が連続して出る確率は30%、「9」で終わる素数が連続して出る確率は約22%だったそうです。

面白いですよね!でも素数を相手に格闘していると、桁が大きくなるほど電卓片手とはいえ計算が大変です。次のようなことはよく知られた事実です。

 
1 数が大きくなるほど、素数の出現頻度が下がる。(素数の出現頻度は、桁数に反比例するのだそうです)
 2
 数が大きくなるほど、素数判定に必要な計算回数が増える。(経験上当たり前のことかもしれませんが、素数発見難度は桁数のほぼ3乗に比例するのだそうです)

 

ということで、622017=3×11×61×103 のように気持ちよくサクサクと素因数分解できたものもありましたが、○○2017のわずか27個が素数かどうかの判定計算は、電卓片手に本日(育友会総会代休)の大半を費やしました。

勿論、ネット上には、素数表や素数判定機、素因数分解計算機など便利なツールが沢山出回っています。今回は、素因数を見つけることができずgive upしてしまった572017に致し方なく使いましたが、数に対する感覚の鋭敏さを保つうえで手計算は大切だと思っています。

 

余談ですが、自分の生年月日が素数かどうか判定するアプリがあります。例えば、2001年7月17日生まれの人がいたとして、これを使うと20010717が素数かどうか一瞬で判定してくれます(この場合、3×17×31×4219と素因数分解でき素数ではありません)。

双子素数(11と13のように差が2の素数の組み合わせ)同士のカップルや2人の生年月日を足した数が素数になればラブラブとか・・・そんな嘘みたいな甘い言葉に誘われて私も色々と相性を確かめたことがあります。最近、何と1京未満(16桁以下)の自然数を対象とする素数判定機が登場し、12桁のマイナンバーが素数かどうか確認して一喜一憂する遊びに使っている人が多いと聞きました。マイナンバーのような12桁の数が素数になる確率はわずか3.8%(詳細は略しますが、「素数定理」を使って計算できます)です。ざっと計算して、1億2千700万人×0.038=483万人ですから、日本人のうち福岡県(約510万人)の人口にちょっと足りない位の人が素数のマイナンバーをもっていることになります。

私も自分のマイナンバーがどうなのか興味津々で使ってしまいましたが、素数ではなくて残念でした*3。そのうえ、個人情報が収集されてしまった可能性について考えが及ばなかったことに気づき、真っ青になったのは後の祭りでした。

 

話は大きく変わりますが、生徒皆さん、「素数ゼミ」って聞いたことがありますか?

北米には、ちょうど17年ごとと13年ごとに大量発生するセミ(蝉)がいて、17も13も素数であることから、「素数ゼミ」と呼ばれています。写真のように目が赤くて少し不気味な感じの日本では見受けないセミです。このセミたちは、普通のセミと同じように、一生の99.9%の長さを地中で脱皮を繰り返しながら幼虫のまま、木の根から養分を吸って過ごします。そして、誕生から17年又は13年が経った特定の年の夏がくると、幼虫はいっせいに地面から這い出します。

昨年2016年は、オハイオ州やペンシルベニア州などで17年ゼミが大発生しました。その数は、何と数十億匹で、電話の声も聞き取れないほどだったと、この珍事、日本でも大きく報じられました。なぜ17年周期と13年周期で大発生するのか、アメリカでは毎年その周期が来るたびに、多くの研究者が仮説をたてておられるようです。しかし、セミの生物時計がこれほどまでに正確な理由は誰も知りません。

この難問を解明し、生物界を驚かせた日本の研究者がいらっしゃいます。数理生態学が御専門の静岡大学の生物学者、吉村仁教授(静岡大学)です。幼いころは、昆虫採集に夢中な「昆虫少年」だったそうです。「素数ゼミ」の名づけ親でもありますが、セミのほかにも様々な動物の行動を進化的な数理モデルで解析されておられます。

世界中から注目された吉村教授の学説*4、「素数ゼミの謎」という著本に詳しく書いてあります。本校の図書館には入ってなかったようですので、司書の坂口先生に購入してもらうようにお願いをしておきました。

地球上にセミが登場したのは2億年以上も前なんだそうです。ちなみに、人類は約700万年前ということです。セミたちが生きるための進化とはいえ、興味が尽きません。関心がある方は是非、読んでみてください。

【校長】

 

*1今年2017年(平成29年)は、西暦の2017も和暦の29も素数です。6年ぶりのダブル素数ということで、年明け頃、素数ファンは大いに盛り上がっていましたが、「素数は素因数分解できないからつまらない・・・」なんていう声もチラホラ聞きました。そういう声を聞くと、意地と根性で因数分解をしてみたくなります。どちらも悪戦苦闘の末、どうにかできました!

2017=(9+44i)(9-44i)

29=(5+2i)(5ー2i)

勿論、iは虚数単位でi=ー1です。このiを使った因数分解は反則でしょうか?

電気科の皆さんは、電気の計算において虚数が大活躍することは御存知のとおりです。電流を通常iで表記しますので、区別するために虚数単位はjを使っていますよね。

 

 

*2素数について深く研究した18世紀の数学者・天文学者である

 オイラー(Euler)は、2357・・・と続く素数について右

 のような関係式を発見しています。不規則に出現する素数と円

 周率の間に成り立つこの綺麗な数式に、オイラーは何を感じた

 のでしょうか?

 


*312桁のマイナンバーが素数でなくがっかりした方に朗報です。マイナンバーは4桁区切が3つ合わさった12桁ですから、4桁ずつ吟味するという楽しみ方もあります。この4桁の素数の出現率は12%位ですから、3つ全部が素数となる確率はこれを3乗して0.1%です。これは本当にレアものかもしれません。

逆に、3つに分けたうち少なくともひとつが素数になるのは何%位でしょう。余事象(3年生の数学Ⅱで学習します)の考え方を使うと計算できます。興味ある方は計算してみてください。

 

 

*4ネタバレにならない程度の概要です。

生活周期が比較的大きな素数になっているのは、17年ゼミと13年ゼミの交雑する可能性が最小限になるからでは?これが先生の仮説です。たとえば、これが7と5という小さな素数だったとしたら、35年に一度、成虫になる時期が一致する。生活周期が長くても、たとえば16と12のように素数でない数だった場合、16年ゼミと12年ゼミが交雑する可能性は48年ごとに出てくる。

17と13のように大きな素数なら、両者が交雑する機会は221年に一度しか巡ってこない・・・