徒然雑記帖

思い出深い因数分解

 

 中間考査が終わり、またいつもの球磨工の風景が拡がっています。総体まで2週間、グラウンドには大きな声が響き、どの部活動も活気を帯びています。そして、ものづくりコンテストまで一ヶ月、こちらはどこまでも静寂で真剣な表情が冴え渡っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話を大きく変えます。3限目に3階(1年生)の考査の様子を見て回っていたときのことです。1年生の廊下に整然と並べられた教科書やノート類が吹き抜ける風に煽られて開いてしまい、たすき掛けで何度も苦労しながら因数分解を解いた跡がヒラヒラと揺れながら見えたような気がしました。高校1年生1学期の中間考査の数学といったら、どこの学校も「展開と因数分解」がお決まりです。

 この記事を読んでいる中学生の皆さんはピンとこないかもしれませんが、高校の因数分解はaX²+bX+cを(pX+r)(qX+s)の形に因数分解する「たすき掛け」とか出てきて、直勘が外れる(運が悪い)と何通りもやるはめになります。結局は単なる「計算技術」なんですが、なかなかできずに「こんな勉強、将来何の役に立つんだ!」といらついてしまった経験が誰しもあるかもしれません。

 

 結論から言うと、大いに役に立ちます。

 例えば、「X²+5X+6 を因数分解しなさい」というのであれば、足して5、掛けて6になる2つの数(因数)を見つけ出して、かけ算の形に変形させるわけで、その数は2と3ですから、答えは(X+2)(X+3)となるわけで、確かにこんなふうに習ったことをそのまま使う機会というのはほとんどないかもしれません。でも、社会人になって仕事をしていくと、論理的に物事を考え、分析して整理する場面が色々なところで出てきます。そのような時に、因数を見つけて分解するという考え方がとても大事になってきます。

 

 ここでその具体例を挙げて説明をするのは、長い話になりますので今日はやめておきますが、因数分解の問題を解くために必死に思考する経験そのものは、将来に向けて今やっておかなければならない貴重な訓練であることは間違いありません。難しい問題でもまずは必死に考えてみてほしいと思います。振返ってみたら「あれ?そういえばこれってあの時やっていたことでは…」なんていうことがあるものです。

 

 ところで、私にとって「思い出深い因数分解」があります。高校1年のときの数学の先生(故人)が「8秒で因数分解しなさい」と言って、にこにこしながら中学校レベルの式を板書しました。定数項が結構大きな数字です!

 

   X²-12X-864

 

 皆さん、足して-12、掛けて-864になる2つの数を8秒内で見つけることができますか?

 864を素因数分解して約数の組み合わせを考えていたら、とても8秒内ではできません。何とこれは次のように「平方完成」を応用した因数分解になります。

 

 「平方完成」は、2年生以上の人は大丈夫だと思いますが、1年生は次の単元が二次関数でそこで詳しく習うはずです。でもやっていることを見ると「なるほど!」と、必ず分かってもらえるはずです。

 

  X²-12X-864

 =(X-6)²-36-864

 =(X-6)²-900

 =(X-6)²-30²

 =(X-6-30)(X-6+30)

 =(X-36)(X+24)

 

 その先生がおっしゃるには、どこかの私立高校の入学試験問題で問1によくある雑多な問題を集めた中の1問として実際に出題されていた問題なんだそうです。

 平方完成して2乗の差に持ち込み、和と差の積に仕上げるとは何とエレガントで心憎い因数分解なんでしょう!

 

 そんなことを思い出していたら、一昨日、読者(中学生)から学校にお礼のファクスが届いていました。

 5月7日の記事で1369が37²であることについて触れていましたが、「その記事を読んでいたからテストの問題が解けました!」という嬉しい報告です。

 

 「X²-16X-1305 を因数分解しなさい」という問題だったそうです。

 

  X²-16X-1305

 =(X-8)²-64-1305

 =(X-8)²-1369

 =(X-8)²-37²

 =(X-8-37)(X-8+37)

 =(X-45)(X+29)

 

 「こんな問題をテストに出題している中学校があるんだな・・・、日本は広いな!」と私のほうが驚いたところでした。

 

 そういえば、「9991を素因数分解せよ」といった結構大きな数を素因数分解させる問題があったことを思い出しました。小さい素数から順々に割り切れるかを調べていたら、いずれ答えにたどり着けるはずですが、時間がかかり過ぎます。この場合、(平方数)-(平方数)の形で処理できないないか考えてみる手があります。即ち

 

   9991

  =10000-9

  =100-3

  =(100+3)(100-3)

  =103×97

 

 103も97も素数ですからここで終了です。どこか、考えが共通するところがあるような気がします。

【校長】