令和二年度第四十七回卒業証書授与式 式辞
寒さ和らぎ、確かな春の息吹が感じるここ、子守歌の里、五木村。福寿草が咲きほこる仰烏帽子山(のけぼしやま)にも光降り注ぐ今日の佳き日に、熊本県立人吉高等学校五木分校 第四七回卒業証書授与式を挙行できますことは、このうえない喜びであり、光栄の至りであります。残念ながら、卒業生の皆さん、保護者の皆様におかれましては、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、地域の来賓の皆様の参加が叶わなかったこと、式の内容を可能な限り短縮せざるを得なかったこと等について、どうぞ御理解を頂きたいと存じます。
ただ今、卒業証書を授与した六名の皆さん、卒業おめでとうございます。保護者の皆様におかれましては、これまで励ましながら支えてこられ、本日の凛々しい我が子を前にして、お喜びも一入かと存じます。
さて、五木分校では「一人一人が輝く分校生」を教育スローガンに掲げ、さまざまな教育活動の中で、責任感とリーダーシップを育んできました。少人数の学校であるがゆえに、皆さんにはそれぞれに役割があり、その責任を果たしてきました。
保・小・中・高合同大運動会、五木分校の文化祭である「五文祭」や「ミニ五文祭」、クラスマッチ、校内長距離走大会など、たくさんの学校行事や、日頃の学校生活、ボランティア活動で後輩をリードし、その具体的行動をもって、輝く姿を見せてくれました。そしてそれらを通して、一人一人の存在がいかに大切であるかということを学びました。皆さんの姿は仲間や後輩、地域の方々から大きな信頼を得てきました。
一人一人に役割があり責任があるということは、それぞれに居場所があるということでもあります。
時折、「自分の居場所がない」という嘆きを耳にすることがあります。しかし、自分の居場所というのは、誰かが与えてくれるようなものではなく、自分で作り出すものなのです。自分はどうあるべきなのか、果たすべき役割は何なのかを考え、実行し、そのことを通して周囲に信頼されること、それが「自分の居場所を作る」ということであり、「生きる力」そのものです。そしてそれが、五木分校で培ってきた力なのです。
この先も、皆さんは、「居場所がない」というような気持ちを抱くことがあるかもしれません。その時には、今の自分はどうあるべきなのか、役割は何なのか、その役割をきちんと果たせているのかを確認してください。そして、この五木分校での三年間を思い出してください。皆さんが自信と誇りを持って、これからの人生を歩んでゆくことを信じています。
一九七九年にノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサは、次のような言葉を残しています。「自分がしていることは、一滴の水のように小さなことかもしれない。でも、この一滴の水があつまって大海となるのです。」
一人一人の力は小さくても、それぞれが自分の役割・使命を果たすことが、人類の歩みに繋がっていくのです。皆さんが自分の生活の中でそれぞれの使命を果たし、自分の居場所を作っていくことが、一滴の水として人類を支えるのだということを忘れないでください。
今日を境に、それぞれが新しい自分の道を歩み始めます。どのような道に分かれようとも、皆さんは五木分校の卒業生であります。一緒に学んだ仲間を忘れず、友情を持ち続けてください。そして、自信を持って、前を向いて歩いて行ってください。
保護者の皆様には、改めてお子様の門出にお祝いを申し上げますとともに、これまでの五木分校の教育活動に対し、深い御理解と御協力を賜りましたことに、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。お子様の教育に対しまして、決して御満足いただけるものではなかったかもしれませんが、我々教職員一同、精一杯の努力をしてまいりました。そして今、目の前にいるお子様は、逞しさと優しさを兼ね備えた人間として立派に成長しました。教職員一同、自信を持って送り出せることに誇りを感じています。
また、地元五木村の皆様には、これまで温かく卒業生並びに本校生徒を見守りいただきました。本日は残念ながら御出席は叶いませんでしたが、この場をお借りいたしまして厚く御礼申し上げます。この豊かな自然と五木村の皆様の温かい心で、充実した教育活動が実施でき教育効果が高まっていると言っても過言ではございません。保育園、小学校、中学校の児童生徒や地元の方々との交流は、本校生の優しさ、たくましさ、自己肯定感、自己有用感等、心の育成にもつながっているものと確信しております。今後とも五木分校への御指導、御支援、御協力をよろしくお願いしたいと思っております。
名残は尽きませんが、逞しく大空に羽ばたく卒業生諸君の洋々たる前途に幸多からんことを祈念し、式辞といたします。
令和三年三月二日
熊本県立人吉高等学校長 光永幸生
熊本県教育情報システム
登録機関
管理責任者
校長 髙田 拓
運用担当者
校内情報化推進リーダー