にっこり 平成27年12月

 師走も半月が過ぎ、あと2週間もすると新たな年を迎えます。年末になるとなぜかあわただしさを感じます。仕事も一区切りつけたい、正月に向けて家の掃除などもしなければと、12月に入ると毎年頭の中で考えるのですが、歳も押し迫った頃になってようやく動き出すということを繰り返しています。計画的に仕事を片付けたいと思います。
 12月になって、宇宙観測分野で2つの大きな話題がありました。まず、小惑星の探査に関するものです。小惑星探査機「はやぶさ」の後継機である「はやぶさ2」が、小惑星「リュウグウ」に向かうため、地球スイングバイを行い小惑星に向かう軌道への投入が成功したというニュースでした。初代はやぶさが小惑星イトカワから2010年にサンプルを持ち帰り、その後はやぶさ2が2014年12月に打ち上げられました。ハヤブサ2は、有機物や水のある小惑星を探査してサンプルを持ち帰り、生命誕生の謎を解明することを目的としています。2020年頃に採取したサンプルを地球に持ち帰る予定になっており、無事に戻ってくることを期待しています。
 宇宙関連でもう一つ。「あかつき」と呼ぶ金星探査機が、金星の周回軌道に入ったニュースでした。あかつきについては、5年ほど前に金星への軌道に乗せることを試みましたが、その時はエンジン噴射ができず失敗、今回の再挑戦で見事周回軌道に乗せることに成功しました。金星は厚い雲に覆われ表面を直接観測することができません。この探査機は赤外線を使って、雲の下の大気の状況や地表の様子を観測することを大きな目的としています。予定より長い期間厳しい環境にさらされ機器がうまく動くか心配もありますが、針の穴を通すような確率で軌道に入った「あかつき」のことです。きっと金星の素顔をとらえて貴重なデータを地球に送ってくれることでしょう。
 どちらの探査機も軌道や速度を修正するために惑星の重力を利用しています。はやぶさ2の場合は、地球の重力を利用して軌道を修正・加速し、地球を離れ小惑星に向かいました。あかつきは、姿勢制御用エンジンを噴射、減速し、金星の重力に引かれることで金星の周回軌道に入りました。どちらも探査機の打ち上げ前に綿密な軌道計算が行われた結果、軌道修正が正確にできています。現在ではその計算が電子計算機で速く正確にできますので、このことも科学技術進展の一つの成果であると言えます。
 私が小学生の頃、科学の図鑑の中で日食がいつどこで起こるかを示した図を見ていた時、どのような計算をして導いているのだろうと不思議に思ったことを思い出しました。天体の動きは計算により予測が可能となります。以前、江戸時代の天文学者が、自分が改正した暦の正確性を確かめるのに日食の予想を行うという内容の映画がありました。電子計算機のない時代でも、人間は正確な計算を行い正確に自然現象を説明してきています。人間の能力は計り知れないものだと改めて痛感します。
 本校は、国からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けています。SSHでは課題研究という授業を行っていますが、その研究題材は様々な分野に亘っています。研究テーマの一覧を見ると実に多彩で感心してしまいます。前述のはやぶさの技術の一つである電力の制御技術をルームエアコンに応用しようという企業もあります。生徒の皆さんには身の回りで起こる現象や情報に関心を持って、様々な研究材料を見出して欲しいと思います。
  本校のHPを見ておられる皆さん、今年1年はどのような年だったでしょうか。どうぞよいお年をお迎えください。