平成27年7月
今年の梅雨は、晴れ間が少ないような気がします。実際、野菜や果物の生育が悪いというニュースを聞きましたので、日照不足が続いているようです。7月になりましたので、もうすぐすると梅雨明けになるのではと期待しているところです。
ショッピングモールに買い物に行って車を駐車場に泊めて歩いていたら、生け垣にクチナシの花が咲いているのに気が付きました。クチナシは常緑低木で野生に自生していますが、白色の花が咲き、また、果実が漢方薬の原料となることから園芸用としても栽培されています。
クチナシについては、本校では理数科の課題研究で、研究材料として取り扱っています。この研究内容はHPでも紹介していますのでご覧ください。熊本市黒髪の立田山には、1929年に国指定天然記念物に指定された「立田山ヤエクチナシ」が自生しています。「オオスカシバ」という蛾の幼虫がクチナシの葉を好んで食べるため、この蛾は園芸用のクチナシの害虫として駆除の対象となっています。立田山ヤエクチナシも同じようにこのオオスカシバの餌になりますから食害の被害にあうことになります。立田山ヤエクチナシは希少種ですので、その保全のためにその被害特性を調査しました。今年度もこの研究は継続しています。様々な昆虫の餌として植物の葉が餌となりますが、特定の昆虫はある特定の葉しか食べないことが多く見受けられます。前述の「オオスカシバ」もそうですが、食べ物に好き嫌いがあるのでしょうか。食べた時の味が違うとか。これは味覚の問題だけではないようです。自然界の生物の生態は不思議なことばかりです。これは解明されているのかもしれませんが、研究材料としてはおもしろいと思います。
昆虫の話題を取り上げましたので、それに関するものをもう一つ。蛾の幼虫を農業に利用している例を挙げると何があるでしょうか。答えの一つに「カイコ」が挙げられます。カイコは「カイコガ」の幼虫の名称です。カイコは数千年前に家畜化された昆虫であると言われています。野生には生息することはできません。人間が管理しないと生育することができない昆虫です。
カイコは蛹になる時、糸をはいてまゆを作ります。その細い糸を集めて撚ったものが絹糸です。以前は農産業の中でも養蚕は重要な位置を占めていました。私の実家は農業をしていて、祖父の話では戦前は米作と共に養蚕をしていたそうです。私が生まれた頃には養蚕はすでにやめていましたが、家の近くに養蚕組合がカイコを飼育するおおきな建物がありましたので子どもの頃はよく遊びに行っていました。また、カイコをもらってきて自分で桑の葉を与え育てたことも記憶にあります。日本では養蚕農家がずいぶん減少し、新聞の報道によると県内の養蚕農家戸数は、昭和初期は約7万件で西日本一だったそうですが、現在は県下の養蚕農家は4軒になってしまいました。飼育数は30万匹から9万匹へ大きく減少しています。絹は、貴重な天然繊維です。明治時代頃は重要な輸出品として国が力を入れた産業でもあります。貴重なものですから、別のもので絹糸の代用ができないかという研究も進みました。絹のような感触や性質を持つ繊維としてビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)といった再生繊維、ナイロンなどの合成繊維があります。これらの繊維については「化学」の授業で習うことになります。詳しくは化学担当の先生に尋ねてください。
本校では、7月17日に1学期の終業式を行います。夏休みに入りますが生徒の皆さんには、有意義な長期休業になることを期待しています。