2019年5月の記事一覧

飯田山に見守られ

 

   今日は5月11日。土曜日ですが、御船高校は登校日で、明日の体育祭に向け最後の練習、準備に学校をあげて取り組んでいます。十連休明けで今日が5日目。生徒達の疲労も蓄積しているようですが、各団の団長はじめ応援リーダーたちは声をからして団の生徒たちを指導しています。体育祭への生徒たちの思いの強さが伝わってきます。まさに、今年の体育祭のテーマ「一意奮闘」そのものです。

 グラウンドで体育祭の練習に奮闘する生徒たちも見守っているのが飯田山(いいださん)です。お椀を伏せたような山容で、標高は431m。益城町の飯野(いいの)地区にありますが、本校のグラウンドから間近に見えます。飯田山と言えば、昔、熊本市の金峰山(きんぽうざん 標高665m)と背比べをしたが負け、もう高さのことはいいださん(飯田山)と言ったという伝承で知られます。

   古くから上益城の人々には親しまれている山ですが、この山の中腹に常楽寺(じょうらくじ)という天台宗の古刹があります。このお寺には興味深い伝説が残っており、開山(寺院の創始者)は日羅(にちら)と伝わっているのです。日羅は、古代の肥後芦北地域の豪族出身で、大和政権と朝鮮半島の百済との外交に関わった伝説の人物です。その日羅の名がなぜ開山として伝えられているのか詳しいことは不明ですが、常楽寺の歴史の古さや格式を示すものと言えるでしょう。鎌倉時代の名僧、俊芿(しゅんじょう)が常楽寺で修行した史実から、創建は平安時代末期と推定されています。

   先日、常楽寺を訪ねてみました。林道で同寺まで自動車で行くことができます。歴史ある山寺の風情が漂っています。同寺から飯田山山頂まで歩いて30分ほどです。山頂からの眺めは広く、御船川、緑川、熊本平野、そしてかつて背比べをしたと言われる金峰山などが一望でき、誠に爽快な気分になります。熊本平野の多くは江戸時代以降の干拓や土地改良で開けたことを考えると、この飯田山付近が古代文化の栄えた所という説もうなずけます。

 今日、日中の気温は25度を超えました。青春の汗を流して体育祭の練習をしている御船高校生の姿を飯田山は笑顔で見守っているように感じます。

 

 

令和の学校生活スタート

 

 5月7日(火)。風薫る爽やかな青空のもと、令和元年の学校生活がスタートしました。新元号「令和」となり一週間が過ぎています。天皇陛下の退位、そして即位に伴う特別な祝日が入ったため、4月27日(土)から5月6日(月)まで十連休という異例の長期休暇となりました。平成から令和に時代が変わる時を高校生として迎えたこと、そして十連休の体験について、生徒たちは永く記憶することでしょう。

 昭和から平成に時代が変わったとき、私は高校教師2年目でした。昭和天皇崩御に伴う時代の転換だったため、国民が喪に服し悲壮感が漂ったことを覚えています。今回は大きく異なります。平成の天皇陛下が上皇となられ、次の天皇陛下に円滑に皇位継承をされたため、国中が祝賀ムードで、期待と希望で新しい時代を迎えました。

 今日5月7日が令和の学校生活の始まりです。最初の学校行事が5月12日の体育祭です。テーマは「一意奮闘 ~ 新時代をかける船高の風 ~」。生徒会を中心に昨年度3学期から準備が始まりました。春休みから応援団演舞の練習が盛んに行われています。そして、この連休中、各団のパネル作成も進みました。体育祭は電子機械科、芸術コース、普通科と全校生徒が一体となってつくりあげるものです。

 生徒の中には足が速い人、そうでない人、運動が得意な人、苦手な人などそれぞれでしょう。しかし、体育祭は陸上記録会ではありません。様々な種目、そして役割があります。体育祭への関わり方はみんな違っていいのです。大事なことは、協力することです。みんなで取り組むことで御船高校の一体感が生まれることでしょう。

 午後、赤・青・黄の三団が団長を中心に団別の練習を開始しました。これから5日間競い合い、12日(日)の体育祭本番で新時代到来の風が吹くことを期待しています。皆さんの時代「令和」はいよいよ始まったのです。

 

 

凛とした高校生剣士たち ~ 城南地区高校体育大会

 4月26日(金)、城南地区高校体育大会が開催されました。今年は、主に八代市や宇城市を会場に行われ、本校からは陸上競技、テニス、バスケットボール、バドミントン、バレーボール、サッカー、弓道、卓球、柔道が参加しました。また、水泳部が芦北町営プールでの競技に臨みました。そして、剣道競技のみが御船高校で開かれました。校長として赴任し三週間あまりの私にとって、本校の部活動生の活躍を広く見て回りたいところでしたが、会場校の責任者として剣道競技を終日観戦しました。

 剣道競技には男子団体8校、女子団体4校、そして男女個人戦に計29人が出場しました。近年、剣道、柔道等の武道系部活動の生徒が減少しています。もともと高校生が減少していることに加え、県内にプロチームのあるバスケットボールやサッカーといった球技に生徒が集まっていると言われます。しかし、そのような状況の中でも、自ら剣道を選んだ生徒たちが集結しました。その姿は「剣士」と呼ぶにふさわしい凛々しいもので、他の競技にはない様式美を感じさせます。

 男子団体は芦北高校、女子団体は八代白百合学園高校が優勝。個人戦では男女とも秀学館高校の生徒が頂点を極めました。どの試合も熱戦で、一瞬で技が決まるため、観る方にも集中力が求められます。御船高校は男子団体が出場しましたが、初戦で八代東高に敗れました。しかし、果敢に攻め込む姿勢が印象的でした。二人が出場した個人戦では共に初戦を突破し見事でした。

重い防具を身につけ、夏の暑さと冬の寒さに苦しめられ、試合では孤高の戦いとなる剣道。その厳しい道を敢えて歩んでいる高校生剣士を私は心から称えたいと思います。

 剣道、柔道、弓道、茶道、華道と我が国伝統の文武の習いには「道」という言葉が付きます。それは果てしないものです。心・技・体の統一を求めての長い道のりなのです。高校生剣士の皆さんはまだその道を歩き始めたばかりです。今日の城南大会で実力を十分に出せなかった人もいるでしょう。不本意な結果に落ち込んだ人もいるかもしれません。しかし、「道」は長いのです。「あの時、負けたことが自分を成長させた」と思える日が来ます。

 凛とした高校生剣士の立ち居振る舞い、瞬間の技の美しさに魅了された一日でした。