校長室からの風

「探究」から「研究」へ ~ 2年生の「総合的な探究の時間」西高プロジェクト発表会

 「いまの子ども食堂と現状」、「私たちの西高PR」、「ゴミの再利用」

 「高齢者と障がい者の方が不自由なく楽しく暮らすには」、「交通安全」

 「車椅子について」、「検証 カラス撃退やってみた」

 これら7本の探究テーマについて、10月18日(火)、2年生普通科の総合的な探究の時間「西高プロジェクト」発表会(体育館)で生徒によるプレゼンテーションが行われました。この様子は、これから地域探究活動を始める1年生の各教室にもオンライン配信されました。また、今年度の西高学校運営協議会委員の中学校校長先生(三和中、城西中、花陵中)、大学関係者(崇城大学、熊本保健科学大学)にも参観いただきました。

 私たちの生活及び身近な地域社会には様々な課題があります。それに気づき、どうすれば改善、解決できるかを考え、調べ、行動して、提案まで行うという探究学習は、今、最も高校で求められているものです。それは教科横断的な内容であり、課題は一人では解決できず、同じ課題意識を持つ仲間とチームで取り組み、さらには学校外の機関や地域社会の人々と連携する必要もあります。受け身ではなく主体的になる学習、仲間や関係する人々との協働学習、そして学びのフィールドが社会に広がる学習です。成人年齢が18歳に引き下げられたこともあり、高校時代に社会に積極的に参画する姿勢を養うことが必須となった現在、探究学習の重要性はより高まっています。

 発表会で最も印象的だったのは、会場からの質問が多かった点でした。「そのように考察された根拠は何ですか?データはあるのですか?」のような論理的な問いでした。それに対し、発表者側も、的確な回答を行ったり、未解決な点は正直に「今後の課題です」と答えたりして、好感がもてました。

 1年生の後半から2年生の前半にかけて取り組んできた探究活動であり、内容も未熟でプレゼンのスキルも不十分です。しかし、自ら考え、仲間とコミュニケーションをとりながら、社会との関りを意識して課題解決に取り組むプロセスは、高校生を大きく成長させると思います。高校でできることは時間的にも内容的にも限られていますが、「探究力」はつけさせることで、生徒一人ひとりの進路につながると期待しています。

 発表した2年生の多くは1年後の今頃は大学、専門学校等の推薦入試に臨んでいるはずです。皆さんは「探究」から「研究」へと進んでいくのです。

「校長室からの風」

創立記念祭を終えて(講評)

 熊本西高校は昭和49年10月に創立されました。最初は職員4人だけで、生徒はまだいません。「清 明 和」の校訓をはじめ校旗、校章、教育課程などを定め、募集定員は普通科4学級で発足することが決まり、翌年の昭和50年4月に第一期生の入学を迎えたのです。今年で創立48年となります。他校では文化祭と言われることが多い秋の文化的行事を、本校ではあえて創立記念祭と呼ぶのはなぜでしょうか? 毎年、創立の原点に立ち返り、新たな西高の元気を発信しようという願いが込められているからです。

 3年前までのように学校全体を会場に、地域に開放しての賑やかなお祭り的行事はできません。しかし、熊本市民会館という立派なホールを舞台に、文化部をはじめ生徒のみなさんのステージ発表が開催されました。本格的なホールは体育館と異なり、音響、照明ともに優れていて、音楽や演劇など舞台芸術には最高の環境が整っています。クラスメイトが、同級生が、ステージ上で演奏、発表する姿は、普段の姿とは違い、より大きく輝いて見えたのではないでしょうか? 友達の新たな一面を発見する機会となったことでしょう。観客が真剣に鑑賞することが、出演者の力を引き出すことになります。皆さんはマナーを守って良い観客でした。だから、ステージ上のパフォーマンスもより良いものになりました。ステージに登場した人は一部の人ですが、裏方を担当した人や観客も含め、西高生みんなで創り上げた創立記念祭になったと思います。

 この創立記念祭は生徒会執行部はじめ実に多くの皆さんの熱意と努力によって実現しました。関係者すべての皆さんに感謝します。コロナパンデミックの中でも、西高は途切れることなく創立記念祭を続けています。これからも、西高は、生徒の皆さんの居場所と出番のある学校でありたいと思います。皆さん一人ひとり、自分の可能性を信じ、未来に向かって進んでください。特に3年生の皆さんは、自分の将来を切り拓く受験という特別なステージで全力を発揮してください。

 最後に一言、「闇の中で眠り 起きて朝日を浴びる」生活を心がけてください。講評を終わります。

                                     「校長室からの風」

 熊本西高創立記念祭の様子(10月12日、熊本市民会館)

命を守るヘルメット ~ ヘルメットを着用し自転車に乗ろう

 「日本では、ほとんどの人がマスクをしていますね。けれども、自転車に乗る人でヘルメットを着用している人はあまりいません。一方、アメリカ合衆国では、マスクをしている人は少ないのですが、ほとんどの人がヘルメットをかぶって自転車に乗っています。交通事故において頭を守ることの大切さを米国人はわかっていますから。日米、対照的な光景です。」

 長くアメリカ合衆国で仕事をされ、この春に帰国し、西高の近くにお住まいの方から聞いた話です。

 明日、令和4年10月1日から、熊本市では自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化となります。全年齢層を対象として、熊本市自転車安全利用条例が改正、施行されるのです。その背景として、自転車利用者の死亡事故において、約6割が頭部へのダメージが致命傷となっており、ヘルメット着用が死亡事故を確実に減らすことにつながるというデータがあるからです。

 もちろん、条例による努力義務化ですから、ヘルメットを着用しなくとも取り締まりや罰金・罰則とはなりません。しかし、この機をとらえ、私たちは高校生に対して、ヘルメットで命を守ることになるというメッセージを強く発しなければならないと思います。

 西高では4年前に自転車で通学途中の女子生徒が交通事故でなくなるという悲劇が起こりました。交通事故は無情にも一瞬で、かけがえのない命を奪い、家族をはじめつながりのある人々を悲しみの淵に沈めます。あの日、学校に向かっていた彼女が抱いていた希望、夢、そして未来のすべてが失われたのです。

 自転車通学生の皆さんにあらためて呼びかけます。ヘルメット着用を真剣に考えてください。西高では、育西会から2000円の補助があり、軽くて丈夫でスタイリッシュなヘルメットを2300円で購入できるようになっています。二度とこのような交通事故の悲劇を起こさないために、保護者の方たちがヘルメット購入補助制度を始められたのです。けれどもここ数年、ヘルメット着用の自転車通学生は増えていません。

 今回の熊本市での自転車利用者のヘルメット着用の努力義務化を契機に、全世代で意識が変わり、ヘルメット着用が多数派となることを願っています。ぜひ保護者の皆様もお考えいただき、子どもさんと話し合ってみてください。

 かけがえのない命を守るために。

 「校長室からの風」

     9月12日に実施された育西会の皆さんによる朝の交通指導風景

 

 

 

2年生の皆さんへ ~ 2学年集会

 コロナ第7波に覆われた夏でした。しかしながら、四国インターハイ、東京での全国高校総合文化祭など高校生のスポーツ、文化に係る大きな大会は予定通り実施されました。困難な環境の中にあっても、高校生に日ごろの活動の成果の発表の場を与えたいという大会関係者のご尽力の賜物と有難く思います。西高としても、創立記念祭はじめ2学期に予定している学校行事について、コロナ感染対策を講じながらすべて実施していきたいと考えています。そして、これらの学校行事、生徒会活動及び部活動において中心を担うのが皆さん2年生です。あなた達の出番がきました。あなたたちが前面にでなければならないのです。そういう意識を持って、高校生活に臨んでほしいと思います。

 西高は、教育活動におけるICT(情報通信技術)の活用で県のトップ校を目指し、様々な実践を重ねています。生徒一人一台のタブレットを活用し、わかりやすい授業づくり、生徒同士の共同学習、大学や専門機関のオンライン講座、海外との国際交流、そして今日の学年集会もそうですが、学校行事や校務の改革にICTを利活用しています。皆さんも、必要不可欠な文房具としてタブレットを日常、使いこなしてください。但し、ICTを活用することは一人の世界に閉じこもることではありません。逆のベクトルです。情報をみんなと共有し、チームで課題に取り組む探究的な学習が盛んになります。協調性、チームワークが学習活動の場でも求められます。趣味、性格、個性、価値観が異なる人と一緒に活動していくことは、かけがえのない体験です。高校は人間関係を学ぶ場であることも忘れないでください。

 最後に修学旅行について触れます。体育コースは1年生の12月、無事に長野へのスキー修学旅行を実施できました。しかし、普通科の台湾旅行は2年次に延期し、サイエンス情報科と合同でこの12月に関東への修学旅行を実施することになりました。サイエンス情報科のシンガポール、普通科の台湾という海外修学旅行に引かれ入学してきた人もいると思いますが、コロナパンデミックの終息が見通せない現在、行き先の国内への変更を理解してください。

 今の3年生は、体育コース以外は修学旅行が実施できませんでした。私の判断で最終的に中止を決め、体育館に生徒たちを集め、「この厳しい現実について、時間をかけてもよいから受け止めてほしい、理解してほしい」と語りました。生徒にとって理不尽な体験だったと思います。当たり前のことが当たり前にできない状況は続いています。楽観はできません。皆さん、より一層、自己管理に努め、修学旅行という大きなプロジェクトを実現しましょう。

「3年間で生徒を大きく伸ばす西高」をモットーに全職員で全力を尽くしていきます。本日の学年会が充実したものになることを願い挨拶を終えます。

「校長室からの風」

1年生の皆さんへ ~ 1学年集会

 台風一過、爽やかな秋空が広がった9月20日(月)午後、保護者の方々にもご来校いただき、1年の学年集会を開催しました。保護者の皆様はそれぞれの教室に入り、子どもさんの席にすわってもらい、生徒たちは一同、体育館に集合しました。体育館と各教室はオンラインで結ばれ、時間を共有できます。ICT(情報通信機器)の活用です。

 全体会の冒頭で、1年生の皆さんに対して、3年間で変化していくことの期待を述べました。高校生活はこれからです。自分探しの旅は始まったばかりです。高校3年間は心身ともに大きく成長する時期です。近年のライフサイエンス(生命科学)でもそれは実証されています。私たち人間の身体は何十兆という細胞でできており、日々、分裂を繰り返し、機能更新が行われています。しかし、人間の細胞分裂は、年を取るに伴い不活発になっていくそうです。今年60歳を迎える私はもうあまり細胞分裂が行われない一方、皆さんは人生の中で最も細胞分裂が活性化していて、皆さんは、自分でも気づかないうちに驚くほどこの3年間で変化するのです。

 皆さんは昨日の皆さんではありません。明日の皆さんは、今日の皆さんではありません。急速な社会のICT化、経済のグローバル化という変化に対応できるのは、自分自身が変化していく若者だと私は信じています。

 全体会では、進路指導の講義、2年次でのコース・科目選択の説明が行われました。そして、普通科全員で先般体験したNAIS(西高アカデミックインターンシップ)の生徒発表(中間発表)が体育館で行われました。大学7校、専門学校2校の全面的なご協力によって実現した体験入学について、担当生徒たちがパワーポイントのスライドを使い、体育館でプレゼンテーションを行いました。ICT機器を駆使してのプレゼンテーションのスキル(技能)は急速に向上しており、1年生の豊かな可能性を感じ、頼もしく思いました。

 この1年生が3年に進級する時、私たちの熊本西高は創立50周年を迎えます。その時、私はもう西高に在職してはいませんが、希望をもって2年後を想像しています。

                                     「校長室からの風」