素敵なおくりもの
5月12日(水)夜遅く 官舎の玄関の呼び鈴が鳴るので出てみると
一人の女性が 暗い雨の中立っていました。
「突然 すみません 覚えていらっしゃいますか? 先日の自転車の・・・」
と女性が話し始めると 後ろからぴょこんとお辞儀をして 笑顔の女の子が立っています。
「あーっ 愛ちゃん!」
先日 官舎の前でゴムひもを自転車のギアに絡ませて途方に暮れていた女の子です。
今日は いっぱいの笑顔です。
「先日は本当にお世話になりました。 何度かお伺いしたのですが いらっしゃらなかったので」
というお母さんの言葉に続いて 女の子が
「ありがとうございました。自転車もちゃんと直りました。
いまは 体育祭の練習に頑張っています!」
と可愛らしい笑顔を見せてくれました。
二人が帰った後
「これ どうぞ」と
手渡してくれたものを見ると 女の子が一生懸命書いたメッセージです。
笑顔通りの純な心が すーっとしみ込んできます。
「このあとどのようにすればいいかまで教えてくださり」
あの時の 不安だった気持ちが手に取るようにわかります。
いつも思うのですが 私たちは 一人では何もできません。
事実 この間も 私は 女の子の自転車のゴムひもを外すことはできませんでした。
しかし 誰かの不安に寄り添うことは できるような気がします。
周囲にSOSを出すことも できるような気がします。
そして この先どうしたらよいのかを一緒に考えることも できるような気がします。
あの時 おじさん三人組が 女の子の不安な心を少しでも支えることができたのならば
本当にうれしい限りです。
早速 今朝(5月13日)、朝礼が始まる前に、岩間先生たちに見せると
「うわーっ 素晴らしいですね!」
「ちょっと、聞いて 聞いて!」と周囲に先生方を集め メッセージの言葉を読んで聞かせています。
またあの中学生の女の子から
素敵な宝物をいただきました。
今日も、素敵な木曜日の朝です!
追記
おじさん三人組はあまりにうれしかったので 手書きで 愛ちゃんに手紙を書くことにしました。
残念ながらその手紙は愛ちゃんのところに届けられて残っていないのですが
手紙の内容が残っていたので 紹介します。
先日は 朝から大変でしたね。
このたびは お手紙付きのお礼までいただき ありがとうございました。
お手紙を拝見したところ 自転車も無事修理が終わったようで
新しい中学生活を楽しんでいることと思います。
人との出会いには色んな出会いがあります。
登校中の自転車のトラブルという形での今回の出会いは
愛さんにとって 本意ではなかったことでしょう。
ただ、あの日 愛さんがお礼を言って自転車に乗って去っていく姿を見た時
私自身困っている人の役に少しでも立てたことを 嬉しく思いました。
私は、優しさは リレーの「バトン」のようなものだと思っています。
私もこれまで多くの人からその「バトン」を受けながら生きてきました。
いや 今だってそうです。
愛さんの これからの人生でも たくさんの人々と色んな出会いがあると思います。
もし、その出会いが 何か困っている人との出会いであったならば、
今度は 愛さんが その「バトン」をつないでくれたら嬉しく思います。
最後になりましたが、愛さんの中学生活が充実したものになるよう 期待しています。
頑張ってくださいね。
天草高校 岩間 智徳
ご丁寧にお礼のメッセージをいただきありがとうございます。
先日は 朝から 大変でしたね。
その後 無事学校に着くことができ、自転車も修理できて元通りに乗れていると聞き、
安心しました。
私も 今まで生きてきた中で いろいろと困ったことがあったり
どうすれば良いかわからないことになったりという場面をたくさん経験してきましたが
その度に 周りの人に助けていただきました。
愛さんも 今後 そのような場面に出会った時には
困っている人に力を貸してあげられるようになっていただければ 嬉しく思います。
天草高校 内村 幸平
先日は 雨の中 お母さんと わざわざあいさつに訪ねてきてくれてありがとうございました。
しかも何度も訪ねてきて下さったとのこと 本当に申し訳ありませんでした。
愛さんの笑顔を見ることができて本当に嬉しかったよ!
私は 天草町高浜の出身です。
中学に入学したばかりの時、小学校からの友人が苓北町の医師会病院に入院したので、
バスを乗り継いでお見舞いに行ったことがあります。
しかし 話に夢中になって、母と約束した午後四時過ぎのバスに乗り遅れてしまいました。
バスの時刻表を見ると、次の最終バスが出るのは午後六時過ぎ。二時間ほどあります。
当時はスマホもなく、親に連絡する手段もないので、『母が心配するだろうな』と思うと
いつの間にか 海岸沿いの道を歩き始めていました。
やがて 辺りを夕日が赤く染め、そして、日が落ち、足元も見えないくらいの闇がやってきました。
怖くて歩を進めるのだけれど、行っても行っても灯り一つ見えてきません。波の音が静かに響いているだけです。
やっと道のはるか遠くに灯りが見え始め、泣きながら必死に走ってたどり着いたのは、下田温泉の停留所でした。
ベンチに座って泣き声を必死にこらえながら泣いていると
『どうして もっと早く帰らなかった』と自分を責める声が響いてきます。
しかしそれに答えることができないので また 涙を流すのです。
あの時 あのバス停に人が居たら、たぶん、変な子供だと思われたかもしれませんが、
抱き着いて泣いていたような気がします。
しばらくすると 丸い灯りを灯したボンネットバスがやってきて、無事高浜まで帰ることができました。
案の定 母にはこっぴどく叱られました。
しかし、母のもとに帰ってくることができたというのがとても嬉しかったのを覚えています。
だから、というわけではないのですが
困っている人を見ると 自分ができる できない ということを飛び抜かして 声を掛けてしまうのです。
誰かが横にいてくれるというだけで心が安らぐ 安心できるということを体験したから。
ゴメンナサイ 余計な話を長々としてしまいました。
愛さんの中学生活は これからがスタートです。
たくさんの仲間に恵まれて 充実した楽しい三年間が送れることを願っています。
お母さま方にもよろしくお伝えください。
五月十四日 天草高校 馬場 純二