令和7年度第78回卒業証書授与式 校長式辞
令和7年度第78回卒業証書授与式 校長式辞
冬の厳しい寒さも和らぎ、春の訪れを待つ天神の森の木々の芽がようやく膨らみ始めた今日の佳き日、熊本県議会議員 住永 栄一郎 様、御船町 町長 藤木 正幸 様 をはじめ、多くの御来賓並びに保護者の皆様の御臨席のもと、熊本県立御船高等学校令和七年度、第七十八回卒業証書授与式をこのように厳粛な中にも盛大に挙行できますことは、この上ない喜びであり、心より感謝申し上げます。
また、皆様には平素から本校教育に対しまして、御理解と御協力・御支援をいただいておりますことに、厚く御礼申し上げます。
本日晴れて、卒業証書を手にしました普通科104名、電子機械科54名、総計158名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんの卒業で、本校の総卒業生数が2万5千名の大台を超えました。本校の教育課程を修了して手にした卒業証書は、これまで積み重ねてきた皆さん自身の努力の賜物ですが、御家族や親族、友人、先生方、地域の方々など、本当にたくさんの方々からの愛情と支援によって実を結んだ証書でもあります。そのことを深く心に刻み、本校からの旅立ちに際し、お世話になった方々には、将来に向けた力強く確かな志とともに、感謝の気持ちを伝えてもらいたいと思います。
思い返すと、皆さんは新型コロナウイルスのために、小学校を混乱の中卒業して、中学校は様々な教育活動が制限された中で過ごし、そして御船高校入学後、暫く経ってコロナ明けを迎えました。コロナ禍でそれまで閉じた中学時代から、一気に多くの中学校から集まった高校に入学し、当初は友達作り、人間関係構築に思い悩んだ人も多かったかもしれません。しかし、授業や部活動はもとより様々な学校行事に取り組む中で、船高生同士かけがえのない絆を育んできたことと思います。新潟上越でのスキー修学旅行、各学科コースに応じたプログラム、そして、体育祭、龍鳳祭など、船高生が一丸となって盛り上げる学校行事の思い出は生涯の宝となったことでしょう。それらを経験するたびに、皆さんは一つ一つ成長してきたのです。
今年度は、御船高校への注目度がさらに上がった年でした。新聞、テレビにもよく取り上げられました。皆さんの努力がいろいろなところで認められているのです。体験入学参加者数も昨年度から倍増、県知事からも地方の高校のトップランナーになってきているとの評価をいただきました。その成果の影には、最上級生として苦労したことも多かったと思います。同級生、後輩たちを応援したり、支えたりして、船高の可能性を引き出してくれました。私が特に印象深かったのは、今年度の体育祭です。皆さんが学校を盛り上げたい一心で企画に取り組んでいたことです。そして最後は、肩を組んで皆で校歌をうたい、涙を流していた姿です。今時このような高校生はそうはいません。感動しました。皆さんに感謝しますし、誇らしく思います。卒業後もこの経験を次の舞台でも生かしてください。
さて、皆さんがこれから進む社会は、国内外でさまざまな課題が複雑に絡み合う、まさに「混迷の時代」です。国際情勢は刻々と変化し、国内でも政治・経済・環境など、多くの問題が山積しています。 こうした時代に生きる皆さんに、私は二つ、強く願うことがあります。
一つ目は、毎朝、新聞を読むことです。ネットニュースは便利です。しかし、効率よく情報をつまみ食いするだけでは、社会の本質は見えてきません。 新聞には、取材に時間をかけ、事実を丁寧に確認し、背景や文脈まで含めて伝えようとする姿勢があります。今の社会では、「タイパ」や「苦労キャンセル」という言葉が流行し、手間を省き、すぐに答えを得ようとする風潮が広がっています。生成AIの進化もあり、情報は一瞬で手に入るようになりました。しかし、楽をして得た情報は、深い思考に繋がりません。時間をかけて読み、考え、疑問を持ち、自分なりの答えを探す。その積み重ねが、皆さんの判断力を磨き、新しい価値観で社会を変えていく力になります。
ドイツの物理学者アインシュタインは、速さよりも深い思考を重視し、「私は特別に賢いわけではない。ただ、問題と長く付き合うだけだ」と語っています。速さや効率ばかりが求められる時代だからこそ、皆さんには、時間をかけて考える力を大切にしてほしいのです。どうか、急がず、焦らず、しっかりと自分の頭で考える人であってください。 そして、社会の一員として、自分の未来と世界の未来を結びつけながら歩んで行ってください。
二つ目は、政治に関心を持ち、世界を自分事にしてください。 先月選挙がありましたが、選挙の時だけ思い出すものではありません。日々の暮らしの中で、社会の動きを自分事として捉え、国内だけでなく世界にも目を向ける姿勢を持ってください。そして、自分は社会に何ができるのか、どう貢献できるのかを、自分自身で考え続け行動を起こしてほしい。 その問いを持ち続ける人こそが、社会をより良くする力を持つ人です。
アメリカ合衆国第35代大統領、ジョン・F・ケネディは就任演説でこう述べました。
「Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.
国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを問うてほしい」と。政治への関心を「自分ごと」として捉えてほしい。もちろん、国内だけでなく世界の政治についても同様です。そうすれば、自ずと「平和」を希求する気持ちに行きつくでしょう。
「毎朝、新聞を読んで社会や世界で何が起こっているのか知り、自分はそこで何ができるか考え行動する。」これを皆さんが卒業した御船高校校長、橋本からの最後のメッセージと心にとめておいてほしいです。きっと「混迷の時代」に船高卒業生が、希望の光となって様々な社会の課題解決に取り組む人材になるでしょうし、平和な世界を作る一員となってくれることでしょう。
輝かしい門出にあたり、本校職員一同、それぞれが皆さんの前途洋々たる未来に、あらためて、深く思いを致すところです。龍鳳となり力強く雄飛せんことを心より期待します。
結びに、卒業生の皆さんが本校の三綱領 「誠実以て人に接す」「自ら進んで学を修む」「自律以て己を処す」を深く胸に刻み、激動の時代をしなやかに、心豊かに、それぞれの道で活躍し、幸多き人生であることを祈念して、式辞とします。
令和八年三月一日
熊本県立御船高等学校 校長 橋本 岳範