校長室からの風

凛として ~ 県高校総体「なぎなた競技」開催

 なぎなた部は熊本西高が誇る伝統ある部活動です。過去、全国高校総体(インターハイ)女子団体5連覇をはじめ、個人戦の日本一を幾人も輩出し、本県の「なぎなた競技」を牽引してきました。専用の道場を有している学校は県内に他にはありません。

 コロナ禍の中で無観客という対応をとり、2年ぶりに熊本県高校総体が開催されました。「なぎなた競技」は5月30日(日)に5高校、22人の選手(女子19人、男子3人)が集結し、熊本西高校体育館で実施しました。なぎなた部の日頃の練習を見てきた私にとって、初めての試合観戦となりました。

 長さ2m10㎝の木製の薙刀(なぎなた)を持ち、一見、剣道と同じ防具を着けますが、すね当てがある点が特色です。メン(面)、コテ(小手)、ドー(胴)、スネ(脛)を打突(だとつ)し、勝負します。なぎなたの動きは速く、目を離せません。一瞬で決まります。しかし、当たっているようでも、なかなか審判の旗が挙がらないこともあります。同席した熊本県なぎなた連盟副会長の一川治子先生が、「なぎなたは気・剣・体の一致が大切です」と解説されました。コロナ感染対応で、選手達はマスクの上にフェイスシールドも付け、その上に面をかぶり試合をします。試合3分、延長2分ですが、時間が立つに伴い、選手の荒い息遣いが伝わってきます。困難なコンディションでの試合となりました。

 「なぎなた競技」には試合とは別に演技競技もあり、2人で型を演じます。防具は着けず、白い稽古着と黒の袴姿です。「この白と黒の組み合わせこそ我が国伝統の最もシンプルな色です。」と一川先生はおっしゃいました。背筋が伸びて姿勢が誠に美しく、礼に始まり礼に終わる所作は品格があります。なぎなたは、弁慶の薙刀でも知られるように元来は男性が扱う武器だったのですが、江戸時代に入り、武家の女性の武具として普及したそうです。幕末の戊辰戦争の時、会津藩の武家の女性たちが薙刀を手に官軍と戦った歴史があります。

 一川先生は熊本西高の体育コース発足(平成3年)から20年間、西高なぎなた部を御指導いただき、多くの人材を育成されました。現在の本校なぎなた部の指導者である齊木教諭も教え子の1人です。インターハイや国体など数々の西高なぎなた部にかかる思い出やなぎなた道にかける熱い思いを語られました。

 伝統とは精神の継承です。一川先生から受け継いでいる、心身とも凜とした姿勢で西高なぎなた部の生徒は試合及び演技に全力を尽くしました。