校長ブログ

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24/03/07(50)少しずつ

 素晴らしい卒業式。卒業生と在校生が一緒になってつくった卒業式。3月1日、私は誇らしい気持ちになりました。卒業式が終わったと思ったら高校入試。後期(一般)選抜が3月5日・6日に実施されました。卒業生が本校の歴史を積み上げて旅立つと同時に、新しい風が吹いてくる。学校はこうやって少しずつ成長していくものだと実感しています。

 暖かい日があったかと思ったら、次の日は寒くなる。寒暖差が大きく、体調を崩している人もいるかもしれません。私もその一人です。でも春は少しずつ近づいています。折にふれて紹介している事務室横の花壇のチューリップが大きくなりました。ムスカリのかわいい花も咲いています。木々の枝は芽吹いています。今春、どのような彩りが見られるのでしょうか。

 本校は、遠方から通学してくる生徒も多く、また交通手段が限られている事から、送迎のための車の校内乗り入れができます。保護者の方がルールを守ってくださるので、現在まで事故等は起きていません。先日、さらなる安全環境づくりのため、学校技師の方が一時停止「止まれ」の文字を白いペンキで書き、標識を立ててくれました。生徒の安全確保は私たちの一番大切な使命です。そのために出来ることを少しずつ重ねていこうと思います。

チューリップ、楽しみです

 ▲チューリップ、楽しみです

ムスカリの花

 ▲ムスカリの花

本校のしだれ桜

 ▲本校のしだれ桜

「一時停止」の標識

 ▲「一時停止」の標識

一時停止「止まれ」

 ▲一時停止「止まれ」

24/03/01(49)熊本県立球磨中央高等学校第五回卒業証書授与式 式辞(抄)

 令和2年2月27日、全国の小中高等学校の臨時休業が発表された時、皆さんは中学2年生、不安のなか、中学3年生の春を迎えようとしていました。追い打ちをかけるように、7月には熊本豪雨、甚大な被害を人吉・球磨の地にもたらしました。新型コロナウイルス感染症が五類感染症となったとは言え、いまだ感染のリスクはすぐ側にあります。また、多くの方々の努力によって災害からの復旧が進んでいますが、復興への道のりはまだまだ遠い状況にあります。今年1月1日に能登半島地震が起こりました。お亡くなりになられた方々へ謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。被害状況や被災者の方々の様子を見ていると、とても他人事には思えず、共に支え合っていこうという気持ちでいっぱいになります。

 先行きがまったく見えない状況のなか、皆さんはどのような日々を送ってきたのでしょうか。令和3年4月8日の入学式、希望と不安はどちらが大きかったのでしょうか? 令和4年、2年生となった皆さんは、中堅学年として学校内外でどのような活躍を見せていたのでしょうか。 令和5年4月10日、初めて皆さんに出会ったとき、そうした思いが次々とこみ上げてきました。そして皆さんの一日一日の生活を間近で見ていくうちに、1年生の時、2年生の時、様々な不安や悩み、苦労もあったでしょうが、それらを乗り越え、立派に育ってきたことを確信しました。体育大会、一所懸命に競技に取り組み、友達を大きな声で応援する姿、弾けんばかりのダンスで見せたかわいらしさと格好良さ、最後の写真撮影での達成感いっぱいの笑顔、こんなに楽しく、幸せな体育大会は初めてでした。
 10月、コロナ禍前と同じように開催した球磨中央百貨店。開店当日まで数々の苦労や失敗があったことでしょう。しかし、皆さんのおもてなしの心が前日の悪天候を追い払い、素晴らしい秋晴れの2日間をもたらし、実に3,500人ものお客様が来られました。この経験は何にも代えがたい、君たちの財産です。
 ほかにもたくさんの学校行事、部活動、検定試験に取り組んできました。一人一人が真剣に向き合い、一人一人が主人公となりました。この3年間で成長した皆さんは、予測困難な社会において、未来を切り拓く、私たちの希望の光なのです。

 さて、本校の校歌が作られて今年で50年になります。作詞した渋谷 敦(しぶや あつし)先生は、この校歌の歌詞について「校内に限らず、郷里の、日本の、世界の誰にでも愛され、いわば世界の友達とともに歌われるという遠大な願いを込めている。さらに「悠遠の光」と「雄渾の伝統」は日本や郷里の遠い長い縦の系譜(つながりのこと)であり、「今ぞ咲く」「今ぞ呼ぶ」の発想には、日本や世界と連帯する横の系列(結びつきのこと)」を織り込んだとおっしゃっています。先人たちが築いた伝統を受け継ぎながら、地域・日本・世界とつながる。まさに、本校が目指す地域のグローカル人財の育成がすでにこの校歌に刻まれていたのです。 私は自信をもって言います。本校の校歌に刻まれた理念こそが、皆さんの未来を照らす光なのです。
 さらに、倫理的に正しく、思いやりの心を持ち、責任ある行動をとる「誠実」、学び続け、伝統を大切にしながらも常に新しいことに挑戦する「進取」、他者を敬い、自分を大切にし、世界の平和を願う「友愛」、この本校校訓は、皆さんが目指す道を示す羅針盤なのです。球磨中央高校での3年間の学びを誇りにして、あらたな場所で活躍してください。

 そして、私から皆さんにお願いがあります。それは「命」を大切にしてくださいということです。皆さんはたくさんの人から愛されています。見返りなど関係なく、皆さんを愛し、支え続ける家族、苦楽を共にしてきた友人、身近で成長を見届けてきた本校職員、そのほかたくさんの人から愛されています。ここで、ある詩を紹介します。

 いろんなひとがいるけれども 今日一日やさしい心でいよう
 いろんなことがあるけれども 今日一日あかるい心でいよう
 この道は遠いけれども 今日一日すすもう
 何があっても大丈夫  今日一日笑顔でいよう

これは、重い病気と闘いながら必死に生きていらっしゃるある患者さんの詩です。自分のために、自分を愛してくれる人たちのために「命」を大切にしてください。一日一日を大切にしてください。これが私の最後のお願いです。
 私の大切な、大切な108名のみんな、輝く未来に向けて「いってらっしゃい!

       令和6年3月1日 熊本県立球磨中央高等学校 校長 松下 宏則

書道部からのメッセージ

 ▲書道部からのメッセージ

卒業式前日

 ▲卒業式前日

24/02/26(48)歴史を楽しむ②

 私の愛読書の1つに「熊本の石橋313」(熊本日日新聞社)があります。熊本県には多くの石橋があり、同書によると「全国にある石橋の半数が熊本に現存」しているそうです。この本は1998年(平成10年)が初版で、紹介されている313のうち、その後の災害で失われた石橋も少なくありません。川の大小にかかわらず橋を架けることは、往来や運送などの利便性を格段に向上させ、人々の生活を豊かなものとしました。石橋の建設に関わった石工(いしく)たちは、当時の最先端の技術を駆使しながら命がけで臨みました。石工たちの苦労、住民の希望が石橋の造形美の中にあらわれているようで魅了されてしまいます。この本では、人吉・球磨の石橋として17基が紹介されています。校長ブログでは相良村の橋谷橋と湯前町の下町橋を紹介しました。石橋に関心を持つと、ほかの石造物(せきぞうぶつ)にも感心を持つようになりました。五輪塔(ごりんとう)や宝篋印塔(ほうきょういんとう)、板碑(いたび)、六地蔵塔(ろくじぞうとう)が好きで、「石仏と石塔」(石井進・水藤真監修 山川出版社)を手に、県内を巡っていました。意識して歩くと、石造物にはよく出会います。例えば錦町ですと、土屋観音堂。本や地図、カメラ、野帳をバックに詰めて、道に迷いながら、目的の文化財を探し回っていた30歳代。見つけたときの達成感とともに、授業で生徒に紹介する楽しさも忘れられません。

ご紹介した本

 ▲ご紹介した本

下町橋(湯前町)現在修復工事中

 ▲下町橋(湯前町)現在修復工事中

土屋観音堂と石造物(錦町)

 ▲土屋観音堂と石造物(錦町)

24/02/16(47)春めく

 しばらく寒い日が続きましたが、近ごろめっきり暖かくなりました。事務室横の花壇では、事務の先生と生徒さんが植えたチューリップとムスカリの芽が元気よく出ています。花壇のすぐ側には優雅なしだれ梅、ミツバチが蜜を吸いにやってきます。散歩も気持ちよく、気のせいか、少しずつ彩りが増えてきたような気がします。付近の道を歩いていると、ナズナやオオイヌノフグリ、ホトケノザが一緒になって咲いています。まるで花束を見ているようです。たくさん咲いている菜の花も素敵ですが、私は、ひっそりと咲いている菜の花が好きです。それにしても人吉・球磨の草花は、澄んだ青空と溶け込み、何とも言えない心地よい空間を創っています。「雑草という草はない」とは牧野富太郎の名言ですが、ひとつひとつよく見ると、それぞれに個性があってたくましく生きています。自宅に近づいたころ、どこからかワタゲがゆらゆらと飛んできて、無事に土へ着地。「きれいな花を咲かせてね」と心に願いながら、散歩を終えました。

本校のしだれ梅

 ▲本校のしだれ梅

しだれ梅2

 ▲しだれ梅2

事務室横の花壇・チューリップの芽

 ▲事務室横の花壇・チューリップの芽

ワタゲ

 ▲ワタゲ

一武の野花

 ▲一武の野花

一武の野花2

 ▲一武の野花2

一武の野花3

 ▲一武の野花3

24/02/13(46)歴史を楽しむ

 前回のブログで書きましたが、私は江戸時代の熊本を研究していました。研究は生みの苦しみもありますが、地道に史料を集め、積重ね、自分の仮説を証明する楽しさはそれに勝るものでした。修士論文を書いていたころ、自分の仮説を裏付けために、来る日も来る日も古文書(こもんんじょ)の波の中を泳いでいたある日、6文字の、たった6文字の語句を見つけた時、大きな叫び声をあげたことを思えています(周りに人がいなくてよかった!)。その6文字こそが、自分のすべての論証を紐(ひも)づけるものだったからです。平成18年に「新宇土市史通史編第二巻 中世編・近世編」「新宇土市史資料編第三巻古代・中世・近代」の担当部分を書き終えたあと、単純に歴史を楽しむようになりました。熊本県の高校教師たちが執筆した「熊本県の歴史散歩」(熊本県高等学校地歴・公民科研究会日本史部会編 山川出版社)は、各市町村の文化財やおすすめの文化財散策コースが紹介されています。コンパクトで写真も豊富、地図も載っていますので、まさに歴史散歩にうってつけです。「県史43 熊本県の歴史」(松本寿三郎ほか 山川出版社)や、「街道の日本史51 火の国と不知火海」(松本寿三郎ほか 吉川弘文館)熊本県の歴史が分かりやすく書かれていますので、大きな流れを理解するには便利です。「火の国と不知火海」では、その地域のキーとなる歴史や文化などが取り上げられているので、全部読まなくても、その項目だけ読むのも楽しいです。(例えば、人吉・球磨ですと「人吉町の商人」、「市房信仰」「百太郎溝と幸野溝」など。) 本校図書館には、熊本県や人吉・球磨の歴史に関する本がたくさんあります。図書館で身近な歴史に触れてみてはいかがでしょうか。

 

 ▲ご紹介した本

国指定重要文化財 桑原家住宅(錦町)

 ▲ご近所の国指定重要文化財 桑原家住宅(錦町)