【地学部】地質系学会の巡検会へ参加
熊本地学会巡検会(阿蘇巡検)
5月31日(日)に熊本地学会が主催する地質の巡検会に参加しました。
熊本地学会とは、熊本の地質を中心とした学会で、年に3回、巡検会とよばれる野外で実際の地質を見て回る学習会を開かれております。
今回は、前阿蘇火山博物館館長の池辺伸一郎先生を講師として、「阿蘇火山中央火口丘の地質」について学びました。
地学部からは、9名の生徒とその保護者12名と地学部顧問が参加しました。
巡検会では、大きく以下の2か所で巡検が行われました。
1 阿蘇火山博物館および草千里ヶ浜
(1)観望所からの遠望
火山博物館の坂を上がったところに展望所がつくられており、そこから草千里ヶ浜と阿蘇谷を遠望し、地質概要を学びました。
草千里ヶ浜は、約3万年前の噴火活動により形成されました。直径約1㎞の浅い火口の中に、さらに約400mの火口(東側)がある二重火口です。
中央の小高い駒立山は、かつて実在したデイサイト質の溶岩ドームが残ったものです。デイサイト質のマグマ噴火による軽石や溶結火砕岩が見られます。噴火形式は、周辺に多量の軽石を堆積させた大規模なプリニー式噴火で、噴火は1回ほどと考えられています。
草千里ヶ浜の後ろに見える烏帽子岳は、草千里ヶ浜火山よりも古い安山岩でできた成層火山です。草千里ヶ浜火山の噴出物に覆われています。よく見ると、烏帽子岳北側斜面の谷筋がずれています。
草千里ヶ浜火山から噴出して堆積した軽石や火砕物が元々の烏帽子岳北部の一部を破壊した後に、主に北側斜面と東側斜面多く堆積しました。この付近は、下部の溶結火砕岩と上部の降下軽石層とに分かれており、その違いによって谷筋の方向側違っていると考えられているそうです。
阿蘇谷(中央部に見えるのが米塚)
阿蘇谷の方を見ると、お椀を伏せたような火山があり、これは米塚です。約3,000年前のスコリアの噴出によりできた新しいスコリア丘です。山頂付近にはヒビのようなものが見られますが、これは熊本地震の揺れによりできたそうです。
阿蘇谷(内牧方面)
熊本市内方面(中央部のカルデラ壁が切れている辺りが立野。奥には金峰山、雲仙普賢岳)
立野の方向を見ると、立野火口瀬より南側にある北向山があるところを境に低くなっているところが見られます。これは布田川断層によるものです。布田川断層の活動については、近年のトレンチ調査などから、熊本地震クラスの大地震が約2,000年に一度起こっていることが分かってきました。昔から継続している断層活動が地形からも読み取ることができます。
(2)草千里ヶ浜
火口内を歩くと、多孔質で軽い石に覆われていますが、これは白くないため軽石ではなくスコリアとよばれます。
杵島岳(3,700年前)のものが赤紫色、往生岳(3,500年前)のものが黄色やオレンジ色をしています。
観望所から見た杵島岳と米塚
よって、草千里ヶ浜火山から噴出した軽石や溶結火砕岩はこれらのスコリアに覆われており見ることができません。
烏帽子岳の山麓に近づくと、草千里ヶ浜の噴出物と思われるガラス質をした黒色の溶結火砕岩を見ることができました。
草千里ヶ浜の中も一部は野焼きがされています。移動中は、場所によって草丈の高さが異なることから、野焼きが草原の保全に役立っていることが分かりました。
駒立山は、意外にもすぐに登頂できましたが、そこからは阿蘇中岳の火口壁や噴煙が見えるなど、眺望がとてもよかったです。
参加した生徒や一部の保護者さんと記念撮影を行いました。
(3)阿蘇火山博物館の展示観覧
大パノラマによる映像を見ながら阿蘇の火山やそこに住む人々の歴史やくらしなどについて、分かりやすく学ぶことができました。
また、中岳の火口カメラのライブ映像を見ながら、中岳の活動や湯だまりのことについて知ることができました。湯だまりはだいたい60℃ほどで、色は中に溶け込んでいる鉄が関係しているそうです。水自体は、天水や地下水に加え50%ほどはマグマ由来だと考えられています。
さらに、阿蘇草原直下の地層には、黒ボク土とよばれる黒い土壌があります。これは、野焼きによるイネ科の植物を中心とした有機物が原因です。
黒ボク土層は厚いので、縄文時代から人々による野焼きが行われ、草原が守られてきた証拠かもしれないと考える研究者もいるようですが、まだ議論は決着していないそうです。
2 中岳山頂下のロープウェー乗り場駐車場付近
中岳の噴火レベルが「1」だったため、残念ながら中岳火口へ近づくことはできませんでした。そこで、ロープウェー乗り場の駐車場から中岳を遠望しました。
また、阿蘇は山岳宗教が発達した場所であるため、神社や寺社関連の施設が多く存在します。中岳西側1~2㎞付近に広がる平坦地は古坊中とよばれ、鎌倉時代から室町時代にかけて多くの坊舎や宿坊が立ち並んでいました。阿蘇火山は、古い時代から畏怖の念が感じられる神聖なものであることがよく分かりました。
おわりに
阿蘇という遠保での野外活動ということで、多くの保護者が協力をして下さいました。また、講師の池辺先生だけでなく、事務局や多くの学会員の方々が分かりやすく解説をして下さったり、運営にご配慮下さったりしました。この場を借りて、心より感謝申し上げます。