校長室からの風(メッセージ)

2016年3月の記事一覧

惜別の春 ~ 転退任式

惜別の季節 ~ 転退任式に寄せて 

 

 ここ数日の陽気で、校庭の桜も一気に満開に近づきました。学校の周囲も、桜、菜の花、辛夷と百花繚乱の情景が広がっています。球磨川の水面も温かく輝き、市房山をはじめとする山並みも笑うが如くの明るい眺望です。しかし、春は「しづごころ(静心)ない」別れの季節でもあります。
 
3月28日(月)午前、多良木高校体育館において職員の転退任式を行いました。平成28年度定期人事異動に伴い、転任者6人と退任者2人の併せて8人の職員の方々が多良木高校を離れることとなりました。短い方で1年、長い方で21年、勤務年数の長短はありますが、それぞれ多良木高校で果たされた役割はまことに大きいものがあります。この1年半、本校は高校再編整備の渦中にありました。その逆風の中で、最後の入学生73人を迎えることができるのも、同窓会、地域の方々と私たち全職員が力を結集した結果だと誇りに思っています。

 引き続き、今年度のメンバーで平成28年度も多良木高校で苦楽を共にしたいという気持ちが強いのですが、私たち公立学校教職員にとって人事異動は定めです。赴任される次の学校においても、生徒をはじめ多くの人々が8人の皆さんを待っていらっしゃることと思います。8人の皆さんの前途を祝すとともに、惜別の情をもって送り出したいと思います。

人事異動の時期になると、井伏鱒二の「勧酒」という詩を思い出します。

コノサカヅキヲ受ケテクレ(勧君金屈巵)
ドウゾナミナミツガシテオクレ (満酌不須辞)
ハナニアラシノタトヘモアルゾ (花発多風雨)
  「サヨナラ」ダケガ人生ダ (人生足別離)

 別れと出会いの凝縮する春の愁いをかみしめて、新年度に向け進まなければなりません。


 

 

合格者の皆さんへ ~ 合格者説明会

 3月24日(木)午前9時から合格者説明会を本校第一体育館にて行いました。合格者73人及びその保護者の方々を前に、挨拶を行いました。

 「皆さん、おはようございます。校長の粟谷です。

合格者の生徒の皆さん、そして保護者の皆様、ようこそ多良木高校へ。心から歓迎をいたします。

 この1年間、球磨、人吉の管内12中学校を回り、そして学校のホームページでの発信を続け、受検生の皆さんに呼び掛けてきました。「皆さんが、90年をこえる伝統を持つ多良木高校の期待と注目のアンカーとなります。アンカーを走ることは他の高校ではできない様々な特別の体験ができ、地域の熱烈な応援を受けるでしょう。一緒にアンカーを走り、3年後に感動のテープを切りましょう。」と。その呼び掛けに応え、本校を選んでくれたことを誠に有り難く思います。今日73人ものアンカーがそろいました。この3年間の入学者数で最も多いものです。皆さんを前にして、改めて、私たち教職員一同、強い責任と使命感を覚えます。

 私自身、語りたい多くの思いがありますが、今日はこの後、入学に向けての具体的な準備や心構え等について説明がありますので、我慢したいと思います。けれども、一つだけ生徒の皆さんにお伝えしたいことがあります。それは、皆さんは期待と注目の存在だということです。豊かな可能性を持っている皆さんは、多くの人の期待と注目のまなざし、そして応援を受けて、きっと自分自身が思っている以上にこれからの3年間で成長できると思います。多良木高校のアンカーとしての誇り、プライドを胸に抱いていてください。
 これで、歓迎の挨拶といたします。」

 


                      早速野球部のユニフォームを購入する合格者

初々しさが原点です ~ 合格発表

初々しさが原点です ~ 合格発表 

 

 3月15日(火)の午前9時、多良木高校玄関に平成28年度入学者選抜検査合格者を掲示しました。前期選抜での合格内定者20人を含む合計66人の合格者の受験番号を掲げました。発表を待っていた受検生や保護者、中学校の先生方が集まり、「あったー! よかったあ!」と歓声が上がり、肩を抱いて喜び合う光景が見られました。自分の受検番号をバックに記念撮影する生徒もいました。笑顔の受検生、安堵の表情の保護者の方々の様子を遠くから見ていると、こちらも心の底から温かいものがじんわりとこみ上げてきて、思わず涙腺がゆるんでくるような気がします。

 今度の入学生が多良木高校の最後の学年です。彼らが卒業する平成31年3月をもって閉校する定めにあります。しかし、「一緒にアンカーを走ろう。多くの同窓生や地域の方々がきっと熱烈に応援してくれる。他の学校ではできないことを体験して、3年後には感動のテープを切ろうよ。」と人吉・球磨地域の中学生の皆さんに、この1年間、呼び掛けてきました。それに応え、後輩がいないとわかっているこの学校を志望した受検生の覚悟に、私は涙が出るほど心が動かされます。

 「今の初々しい気持ちを忘れないでほしい。」と合格を喜ぶ受検生に私は心の声で伝えました。何事にも初々しさが大切です。これから高校生活を送る皆さんの原点は今の初々しい喜びの気持ちです。そして、受け入れる私たち高校の教職員にとっても、今日の合格発表は、責任と使命感を新たに自覚する原点の日なのです。

 学校の周囲では菜の花が咲きそろい、眼にまぶしい程の鮮やかな黄色が春を実感させます。清々しい青空のもとでの合格発表の情景に言いようのない感興を覚えました。


未来があなたを待っています ~ 卒業していく皆さんへ

      未来があなたを待っています ~卒業していく皆さんへ                   

 

 皆さんは、高等学校の教育課程を修了しました。日々の学習活動、学校行事や生徒会などの特別活動、そして自ら選んで取り組んだ部活動を通して大きく成長したのです。この先、職場または上級学校において、様々な困難と出会うでしょう。しかし、学力、体力、そして人間関係を築く力等の基礎を高校三年間で備えています。それらを元に謙虚な姿勢で臨めば、きっと道はひらけます。 

 失敗することも多いでしょう。けれども、失敗しないと学べない事があるのです。失敗してもいい、ただし、失敗を隠してはいけません。

 高校時代、校則や決まり事、あるいは私たち教職員の指導を壁のように感じ、不満や窮屈さを感じたかもしれません。しかし、卒業してしばらく時間が経つと、その壁が皆さんを守っていたことに気付いてくれると思います。

今の皆さんは、港を出て大海原へ向かう船のような存在です。心細い気持ちがあるかもしれませんが、怖いことはありません。けれども、悲しいことには数多く出会うでしょう。その悲しさが皆さんを人間的に豊かにしてくれます。

 未来には未知の仲間がいます。未知の物語があります。未来があなたを待っています。

  


卒業式

 3月1日、第68回卒業証書授与式を多くの御来賓の方の御臨席を賜り、盛大に挙行しました。私たち教職員にとって、卒業式は何度立ち会っても感激新たなものです。お子様の晴れ姿を御覧になる保護者の方々の感慨はひとしおと拝察します。卒業生は65人。式辞の一節を次に掲げます。

ただ今、六十五人の生徒諸君に卒業証書を手渡しました。皆さんが手にした卒業証書は、多良木町教育長の椎葉袈史様が槻木の山に自生している三椏を原料として一枚一枚丹誠を込めて作られた手漉き和紙であります。手が機械と異なる点は、それがいつも直接に心とつながっているところだと言われます。皆さんに寄せられる多くの方のお祝いの気持ちが、「手仕事」でつくられた卒業証書に凝縮されていると思います。
 
平成二十五年春、皆さんは希望と期待に胸を膨らませ、本校に入学しました。以来三カ年、「平和・勤労・進取」の校訓のもと、勉学に、部活動に、そして様々な学校行事に積極的に取り組みました。
 
多良木町をはじめ球磨郡全体が学びの場となっているところが本校の教育活動の特色と言えます。体育コースは市房山でキャンプをし、球磨川でのラフティングを体験しました。福祉教養コースは保育園や介護福祉施設、公立多良木病院の御厚意により実習を重ねました。また、全ての生徒たちが、五十カ所以上の事業所の御協力のもと職場体験実習(インターンシップ)を行いました。そして、様々なボランティア活動をとおし、子どもから高齢者の方に至るまで幅広い交流ができました。さらに、恵比寿祭を筆頭に地域の各種行事に参加し、高校生の元気を発信する機会に恵まれました。
 
皆さん達多高生は、地域の方に支えられ、そして認められることで成長してきたのです。改めて、多良木町をはじめ人吉、球磨地域の多くの方々に深く感謝いたします。
 (中略)
「仲間っていいな」。昨年夏の高校野球熊本大会準決勝で敗れた後、野球部主将の大塚将稀君がチームメイトに掛けた言葉です。涙と汗の顔の仲間達はキャプテンに頷き返したそうです。昨年の夏は多良木高校にとってひときわ熱い夏となりました。一戦一戦勝ち進むに従い、地元の人々の応援が驚くほど増え、グラウンドの選手とスタンドの応援が一体となって戦い、公立高校として唯一校ベスト4進出という結果を残しました。伝統ある多良木野球部にとっても三十年ぶりの快挙でした。
 
しかし、ベスト4までの道のりは決して順調ではありませんでした。新チームとして臨んだ初めての県大会では一回戦敗退でした。けれども、そこから仲間を信じ、厳しい練習に耐え、力を付けていったのです。高校生が持つ無限の可能性を野球部の活躍は教えてくれたと思います。」