2016年12月の記事一覧
平成28年度 第2学期 終業式 校長講話
思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを
あの人のことを思いながら眠りについたからあの人が夢に現れたのだろうか。もし、夢と知っていたなら目を覚まさなかっただろうものを。
小野小町の詠んだ歌です。好きな人を思い続けていたらなんとその人が夢に現れた。でも目を覚ましてしまい、それが夢だと分かった。その時の「がっかり感」というものを歌ったものです。
●なぜ、『君の名は。』はヒットしたのか?新海監督の創作意図(狙い)とは?①「一度見終わった直後にもう一度見たくなる」
・複数回鑑賞してもらえるような作品を目指しました。
②「映画の鑑賞時間を1分でも短くしよう」
・最初の脚本の段階では116分あったのを、107分にまで削って縮めました。
③「手をかけて、リッチな画面にしていく」
・星のまたたきや水のきらめき、特に自然表現における光の変化を意識しました。①「リアルさ」(背景など作画)の追求
②「安藤雅司さん」(作画監督)の起用
③「スピード感」(1カット平均3.9秒)の採用
④「日本伝統のモチーフ」(男女の入れ替わり)の活用
⑤「結び」という言葉(「日本的コンセプト」)の使用
●作品『君の名は。』のインスピレーションとなったものは? ・アイデアの源は、「自分が興味あること、謎として残っていること」です。端的に言うと、「コミュニケーション」です。「どうして人と人というのは、気持ちを通わすことができるのか」、あるいは「気持ちを通わすことができないのか」と。また、発想のヒントを得るために古典を読みます。
・今回の作品は、出会えないはずの二人の出会いを描いています。男女が入れ替わることで物語は始まるのですが、入れ替わりは出会うための仕掛けです。
・『君の名は。』は、「夢と知りせば」という和歌がインスピレーションを与えてくれました。夢から覚めてなぜかさみしいという感情は、小野小町のいた平安時代から、いやそれ以前から今にいたるまで人の持つ共通の感覚だろうと思ったのです。そこで、「朝、目が覚めると、なぜか泣いている」と物語を始めることで、観客にも「それは分かる」という気持ちになってもらえるのではないかと考えました。
●新海監督の創作意欲の源は? こういう物語を作り続けるのは、「大きなものとの一体感」がほしいんだと思います。何か大きなものについて知りたいし、自分が何か大事な「意味のあるものの一部」なんだと思いたいっていう欲求がすごくあるんです。僕の10代の頃の真剣な望みは「他の惑星にいきたい」と「誰も観たことがない景色を初めて見る人間になりたい」でした。それが年齢を重ねて、イノセンスを失って、自分は社会の中で生きていくしかないんだってわからざるをえない年齢になっても、自分が社会的な存在になる前に強烈に憧れていたものにつながりたいっていう気持ちがどうしても消えなくて、それが物語になり、アニメーションになっているんだと思います。
◎新海監督の創作動機である「ゆかし」や古典作品からの着想「故きを温めて新しきを知る」も普遍かつ不変といえるものです。皆さんも、「知りたい」という感情を大切に、読書を通して常に研鑽に励んで欲しいと思います。これも普遍かつ不変であります。
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