校長室からの風(メッセージ)

閉校式を終えて ~ ピアノの上の一輪のバラ

 

 千人近い人々が集い開催した多良木高校閉校式から一夜明けての3月3日(日)は朝から雨でした。この日は、半世紀にわたって人吉球磨地区から初の甲子園出場の夢を追い続けた多良木高校野球部の閉部式が行われました。最後の学年の選手たちとOBとの送別試合は中止され、閉部式だけを午後1時から第一体育館で実施しました。最後のチームの選手及び保護者、OB、歴代の監督やコーチ、そして野球部応援隊の皆さん等、150人ほどの参加がありました。

 多良木高校は体育系部活動が盛んだったことで知られます。昭和43年に現在地に移転し、広大な敷地と充実したスポーツ環境が整備されていくに伴い、陸上競技部のオレンジ旋風、女子剣道部の全国大会優勝、バレーボール部の躍進など輝かしい成果が相次ぎました。そして、近年では、甲子園出場に挑戦し続けた野球部は地域社会に元気と希望を与える存在として注目の的でした。地域の小規模校野球部の果敢な戦いを、多くの高校野球ファンが応援してくれました。永年、監督として指揮をとってこられた齋藤健二郎監督も感無量の様子で、閉部式において熱く思い出を語られました。

 この日は、学校を訪ねる同窓生の姿も目立ちました。3月2日(土)の閉校式に合わせて、学年同窓会や部活動の集まりが多良木町や近隣で幾つも開かれており、改めて懐かしの校舎に別れを告げに来られたのでしょう。

 また、学校の閉校業務の一環として、音楽室と第一体育館にあるグランドピアノの運び出し作業もこの日に行われました。卒業式と閉校式が終わるまで二台のグラウンドピアノは必要なものでした。音楽室は教室棟3階にあり、専門の運搬業者に委託し、小型の重機で吊り下げトラックに乗せるという大掛かりな作業となりました。体育館のピアノは老朽化が著しく廃棄され、音楽室のピアノは球磨支援学校へ移管され、そこで活用されることになっています。

 運び出し作業の立ち会いで音楽室へ行ったところ、グランドピアノの上に、一輪のピンクのバラと「ありがとうございました」と記された紙が置かれていました。10年間、このピアノを弾き、音楽の授業や文化祭・式典で合唱指導に当たってきた本校音楽教師の惜別の思いに胸が打たれました。  

               バラが置かれた音楽室のグランドピアノ