校長室からの風(メッセージ)

未来圏からの風をつかめ

「未来圏からの風をつかめ」

 第65回全国高等学校PTA連合会大会岩手大会が8月20日~21日に岩手県で開催され、参加しました。大会テーマは「未来圏からの風をつかめ ~新時代を担う君たちと共に」。何と詩的な文句だろう、気鋭のコピーライターが作ったのかと思いましたが、岩手県が生んだ詩人で作家の宮澤賢治(18961933)の詩からの引用と知り、深く納得しました。出典は、「生徒諸君に寄せる」という詩です。長い詩のため冒頭部分のみ次に紹介します。

 「中等学校生徒諸君

  諸君はこの颯爽たる

  諸君の未来圏から吹いて来る

  透明な清潔な風を感じないのか

  それは一つの送られた光線であり

  決せられた南の風である。」

   宮澤賢治は、妹のトシの死を悼んだ絶唱の詩「永訣の朝」、永遠の友情を宇宙スケールで描いた「銀河鉄道の夜」などで知られる文学者ですが、4年間、花巻農学校で教鞭を執った時期がありました。その教師時代を振り返って宮澤賢治は次のような断章を残しています。

「この四ヶ年がわたくしにどんなに楽しかったか
わたくしは毎日を鳥のやうに教室でうたってくらした
誓って云ふがわたくしはこの仕事で疲れをおぼえたことはない」

 無名のまま亡くなり没後80有余年の今日、文学者として、思想家として、そして教育者としての宮澤賢治は益々注目されてきているように思われます。

 全国高等学校PTA連合会大会岩手大会では、いじめ問題、スマートフォン依存など現在の高校生をめぐる様々な課題について、講演、意見発表、討論が行われました。ITをはじめ社会の急激な変化の中、高校生は自分の進むべき未来を目指すことができるのかとの危機感が会場では共有されていました。

  しかし、保護者も私たち教師も、これからの新時代を担う君たちに期待しています。きっと君たちは、心を開き、未来圏からの風を感じ、自分の未来を想像し、それに向かって進んで行くだろうと信じています。


(多良木高校野球場)