校長室からの風(メッセージ)

上級生になった皆さんへ

 

 セミナーハウスの前にある桜もすっかり花が散りました。里の桜はほとんど葉桜となりましたが、山の桜はまだ見頃のものがあるようです。皆さんは今年は花見をしましたか? 日本人にとって桜は特別な花です。厳しい冬を越え、待望の春が来た、その春の象徴が桜です。

 「さまざまのこと思い出す桜かな」 

松尾芭蕉の句です。私たちは桜の花に触れ、過ぎ去った様々のことを思い出します。季節は巡り、1年が経ち、桜の花と再会できた感慨。私たち日本人にとって、時間は一直線に過ぎるものではなく、春・夏・秋・冬と四季が循環、サイクルするものと言えるでしょう。

 昨年の今頃、私は多良木高校に赴任してきました。それから1年間、皆さんの成長を見てきました。それぞれ進級して、高校2年生、3年生の姿を目の当たりにして、まことに頼もしく思います。

皆さん、今日の午後、新入生69人が入学します。1年前、2年前の皆さん達と同じ、期待と不安を抱き、緊張した新入生です。新しい後輩達のために、皆さん方は何ができるのか、自らに問うてください。新入生のために、先輩であるあなた達は、何が、どんなことができますか? 

 さて、ジャンバーやコート、セーターなどを脱ぎ、春の装いとなりました。身も心も軽くなった今、何か新しいことを始めたいと思いませんか? 新しい事を始めるには今です。4月からです。これまで高校生活を送ってきて、自分に足りない面、変えなければいけない点などについては自分自身が誰よりもわかっていると思います。それを行動に移せるか、否か。勉強でもスポーツにおいても、ライバルは自分自身です。どうせ自分なんかと言い訳をし、易(やす)きに付くのは簡単です。しかし、皆さんの将来は、自分次第で皆さんが変えることができるのです。

 聖書に、「狭き門より入れ、滅(ほろび)にいたる門は大きく、その路は広く、これより入る者多し」という言葉があります。入りやすい大きい広い門ではなく、狭き門より入れ、とイエスは語っています。どちらかを選ぶ時に、自分にとってより困難な道を選ぶことが、結局は自分の成長につながるのです。自分にできるだろうかと不安に思うでしょう。けれども安心してください。困難な道を進む皆さん達には、私たち教職員がついています。悩みや迷いを一人で抱え込まずに、遠慮なく、私たちを頼ってください。私たちは経験と技能をフルに発揮して、みなさんを支援し、皆さんを希望の進路へ連れて行きます。それが、私たちの使命だからです。

 平成27年度の初めに当たり、上級生になった皆さんの役割と覚悟への期待を述べ、私の話を終わります。