「最後まであきらめない」多良木サッカーの真骨頂
「最後まであきらめない」多良木サッカーの真骨頂
後半になると風雨が次第に強くなりました。横から吹き付ける風に傘を持つ手に力が入ります。グラウンドの選手たちは、全身ずぶぬれになりながら、懸命にプレーを続けます。サッカーの熊本県選手権大会2回戦。場所は熊本県立東稜高校運動場。熊本市立必由館高校相手に多良木高校イレブンは厳しい戦いを強いられていました。前半に2失点、後半さらに1失点して0対3となり、後半も終盤の時間帯となっていました。
多良木高校サッカー部は3年生6人、2年生5人の11人ぎりぎりでこの試合に臨んでいました。この大会をもって3年生は部活動を退きますので、今後は多良木高校単独チームでの出場は困難になります。多良木高校サッカー部の単独チームとしては最後の試合なのです。その重みは選手たちも、応援する保護者の方々、そして私たち教職員もわかっていました。
後半も残り10分ほどになった時です。キャプテンでフォワードの西君(3年生)が相手ゴール前に巧みなドリブルで切り込み、シュートを決めました。多良木高校応援団から歓声があがります。「よし」、「あきらめるな」と保護者の方から声が飛びます。監督の中山教諭からも、「時間はある、一つ一つのプレーを丁寧に」と大声で指示が出ます。ここから、試合の流れが変わり、多良木高校の選手たちの動きが俄然良くなりました。
残り5分を切ったところで、多良木高校が再びシュートを決め、2対3。1点差となります。「いけるぞ」の声があがります。選手たちも最後の力を振り絞って走り、懸命にボールにからみ、攻め込みます。その姿を見ていると、私は胸が熱くなりました。
試合終了を告げる審判の笛が鳴り響き、選手たちはがっくり膝をつきました。多良木高校サッカー部単独チームとしての試合は終わりました。交代要員もいない11人での戦いでしたが、最後まであきらめない、多良木サッカーの真骨頂を見せてくれたと思います。試合直後は雨と悔し涙で濡れていた選手たちの顔にも、しばらくして笑顔が戻りました。練習の成果を出し切ったという満足感が漂うアスリートの清々しい表情でした。
登録機関
管理責任者
校長 粟谷 雅之
運用担当者
本田 朋丈
有薗 真澄