校長室からの風(メッセージ)

「見果てぬ夢、甲子園」

「見果てぬ夢、甲子園」   

 来年3月の閉校が迫る多良木高校にとって、初の甲子園出場を目指す最後の夏の挑戦が昨日終わりを告げました。県営八代球場で行われた3回戦で、シード校の有明高校に1対5で敗れました。試合後、平野主将が「地域の皆さんと一緒に甲子園に行きたかった」と涙ながらに挨拶しました。しかし、多くの保護者、同窓生、地域の方々から温かい言葉が掛けられ、最後は爽やかな笑顔で選手、マネージャーは学校に帰ってきました。

 閉校が定めの小さな学校の大きな挑戦でした。多良木高校の象徴的存在である野球部は大会前から注目されましたが、7月11日の1回戦(山鹿球場)、7月14日の2回戦(八代球場)、そして17日の3回戦とまさに地域の人々と共に戦い抜き、高校野球の原点を示すことができたと思います。1回戦から野球部員以外の全ての生徒と職員で全力応援しましたが、球場には保護者、同窓生、地域の応援隊、旧職員など驚くほど多くの方々が駆け付けて下さいました。

 メディアの方から、応援の人数や構成などをしばしば問われましたが、誰も把握できません。本校への応援は、組織的なものではありません。多良木高校と何かの関係がある方だけでなく、純粋な高校野球ファンや閉校する小さな学校の挑戦に共感を覚える一市民の方など実に多様な方々が自発的に足を運んでくださったものなのです。

 夢に向かって果敢に挑んだ野球部員を心から誇りに思うと共に、改めて甲子園という場所が遥か遠いところにあると実感しました。多良木高校は甲子園に出場することなく、来春、96年の歴史を閉じます。1967年(昭和42年)の創部以来、およそ半世紀の挑戦でしたが、「見果てぬ夢」のままとなりました。

 願わくは、7月1日の熊本県大会開会式で平野主将が選手宣誓で述べたとおり、多良木高校野球部の思いが高校野球の未来につながっていくことを祈念したいと思います。


         7月17日 多良木高校野球部最後の試合