校長室からの風(メッセージ)

児童1人の小学校のある集落

児童1人の小学校がある集落

~ 多良木町槻木を訪ねて ~

 急速な少子化に伴い、熊本県内では小・中学校の統廃合が進む中、昨年度、7年振りに新入児童を迎えて再開校したのが多良木町立槻木(つきぎ)小学校です。役場から南に約20㎞離れた山間部の槻木には、昨年度の小学校再開校式以来、訪ねる機会がなかったのですが、夏季休暇を利用し、先日訪問してみました。県道143号が槻木には通じていますが、標高700mあまりの峠を越えなければならず、峠付近は折れ曲がった細い道路が続き、対向車との離合は容易ではありません。多良木高校からおよそ40分の運転で槻木小学校に着きました。

 槻木小学校で、槻木の集落支援員をされている上治英人(うえじひでと)さんとお会いしました。上治さんの長女の南鳳(みお)さんが同小にとって7年振りの新入生でした。介護福祉士、ケアマネージャーでもある上治さんは、多良木高校の福祉教養コースに強い関心をお持ちで、高齢社会を支える人材の育成について、知識と経験を活かしたいと熱っぽく語られました。多良木高校の教育活動への地元の強力なサポーターがまた一人増えることになり、有り難く思います。

 槻木小学校からさらに南の下槻木地区まで車を走らせ、室町時代の木造弘法大師像を安置する大師堂や同じく室町時代に建立された四所(ししょ)神社、県指定天然記念物のコウヤマキなどを見学して回りましたが、中でも目を引いたのが、大師堂脇の「悠久石」(ゆうきゅうせき)と呼ばれる、直径140㎝、重さ約4トンの巨大な丸い石(砂岩)です。平成18年の大雨で山の斜面が崩壊し、その中から出現したもので、自然の造形の不思議さに魅了されます。

 槻木は過疎に悩む高齢者中心の集落ですが、都市とは異なるゆったりした時間が流れ、先人から受け継がれてきた歴史と文化があります。そして、このような集落にとって、小学校の存在はかけがえのない拠り所であり、希望となっていることを改めて実感しました。