校長室からの風(メッセージ)

山を楽しもう ~ 体育コースの市房登山

山を楽しもう ~ 体育コース生徒の市房山登山

 「頂上だ。やったー」の歓声が生徒たちの間に広がります。九州でも屈指の高峰である市房山(1721m)の頂上に到達した時の達成感、成就感は言いようのないものでした。登り始めて4時間が経過していました。

 体育コース2年生の3日間の市房キャンプの中日、8月31日(木)に市房山に挑みました。今年は、登山ガイドを坂梨仁彦先生に依頼し、先導をお願いしました。坂梨先生は、長年にわたって熊本県の県立高校の生物の教諭として教鞭をとられ(今春定年退職)、植生、鳥類に造詣が深い方です。加えて、登山の専門家で、高校の登山部の指導に当たってこられました。市房山には通算80回を超える登山歴を持っておられます。

 午前9時に山麓の市房キャンプ場(標高が約600m)を出発。鳥居のある登山口から登り始めます。イチイガシをはじめ豊かな照葉樹林帯が続きます。やがて、千年杉と言われる巨大な杉が幾つも現れ、4合目の市房神社に着きました。市房は古来、球磨の人々の信仰の対象として崇められ、神の山として大切にされてきて、現在は国定公園として保護されているため、希少な植物の宝庫となっていると坂梨先生から説明がありました。

 市房神社を過ぎると、急傾斜が続き、丸太の梯子をよじ登ったり、樹木の根をつかんでバランスをとったりと本格的な登山となります。しかし、生徒たちはたくましく進んでいくため、私は遅れないよう必死です。6合目の馬の背と呼ばれる急峻な地形を過ぎ、7合目付近で、珍しい鳥「ホシガラス」が空から舞ってきてブナの樹にとまりました。坂梨先生から説明があり、全員で立ち止まってしばし注目。標高が上がるにつれ、樹高が低くなります。8合目を過ぎると馬酔木(あせび)に覆われています。鹿が増え、多くの植物を食べますが、毒のある馬酔木は避けるため、繁殖しているようです。

 午後1時に山頂に立ちました。ガスが立ち込め、眺望には恵まれませんでしたが、充足感に浸り皆で弁当を開きました。下りは、急斜面での根や石が足に負担となりましたが、およそ3時間で無事にキャンプ場に帰着。霊山の清らかな空気に包まれ、多彩な植生に触れ、変化に富んだ登山道に一喜一憂した7時間の挑戦でした。生徒と苦楽を共にでき、かけがえのない晩夏の一日でした。