校長室からの風(メッセージ)

語り継がれる戦争体験

語り継がれる戦争体験 ~ 同窓生の方からの聴き取り学習

「戦争中の女学校生活で楽しみは何でしたか?」との生徒の問いに、多良木高等女学校の同窓生の方は「楽しみなんてなかったよ。」と語られ、質問した生徒の表情が引き締まりました。7月25日(火)の午後、2年生の「日本史A(近現代史)」選択者25人が、多良木高等女学校同窓生の方から戦争体験を聞き取る学習活動を行いました。

 多良木高校は大正11年(1922年)創立当初から「平和・勤労・進取」の校訓を掲げていますが、その沿革を振り返ると「平和」の時ばかりではありません。昭和12年に勃発した日中戦争、そして昭和16年の太平洋戦争開戦と昭和前期は過酷な戦争の時代が続きました。その時代に当時の多良木高等女学校で学ばれた先輩方の高齢化は進み、80代後半から90代にさしかっておられます。そして本校自体が来年度で閉校です。従って、同窓生の方から戦争体験を聴く機会は今しかないと考え、地域の同窓生の方々の協力を得て、日本史選択者の聴き取り学習の場が実現しました。

 当日は、昭和19年度から昭和21年度にかけての卒業生10人の同窓生の方に御来校いただきました。その他、同窓生の方と親交のある第一高等女学校(現第一高校)、八代高等女学校(現八代高校)、そして戦争中に熊本市健軍の三菱重工熊本製作所(軍需工場)で勤労動員の体験を共有される熊本中学校(現熊本高校)の卒業生の方(唯一の男性)も加わっていただきました。生徒たちが各5人の5班に分かれ、班にそれぞれ2~3人入っていただき、戦争中の体験、当時の思い出や考えていたことなどを生徒たちに1時間ほど語っていただきました。

 戦争中の女学生と現代の高校2年生はおよそ70歳の年齢の開きがあります。しかし、生徒たちは事前に準備していた質問項目だけでなく、同窓生の方のお話に興味を持ち、予定していた時間を超えて対話が続きました。個々人の体験が語り継がれ、記録されることで、それは歴史となります。教科書の記述で学んだ知識をもとに、同窓生の方の体験談、証言を聴くことで、生徒たちは戦争と平和について深く考えさせられたことでしょう。