校長室からの風(メッセージ)

「本物」に恵まれた人吉球磨地域の教育環境

「本物」に恵まれた人吉球磨地域の教育環境 

 人吉球磨地域に赴任して3年が経過しますが、この地域の教育環境は誠に素晴らしいと実感しています。自然、歴史、文化など「本物」に触れ合うことができ、環境保全や文化財保護などを抽象的にではなく具体的に学ぶことができる場所だと思います。

 先般実施した強歩会では、生徒たちは文化財に指定されている観音堂や仏様(仏像)に触れ合いながら歩くことができました。鎌倉・室町の中世の建造物が今も日常風景の中に溶け込んでいる佇まいに、歴史を感じたことでしょう。平安時代の仏像が博物館や美術館ではなく、小さな集落で守られていることに先人たちが大事なものを継承してきた精神を思ったことでしょう。何しろ、この人吉球磨地域は熊本県で初めて認定された「日本遺産」の故郷なのです。

 また、8月に2年生体育コースが登った市房山は、古くから信仰の対象であり、一木一草持ち出してはならないとの慣習が伝えられてきたため、いまだに市房杉をはじめ植生、生物の多様性が維持された「宝の山」です。このような市房山の自然を次代に残すことが「自然保護」だということを生徒たちは実感したことと思います。

 今、学校教育にとって大きな問題は児童生徒の生活に広がるネット社会の陰です。小学生から高校生までネット世界に浸っていることは間違いありません。情報検索や画像、動画、音楽、ゲームにいたるあらゆるコンテンツを自由に楽しめるネット世界は便利で刺激的で、児童生徒を虜にします。しかし、情報モラルや情報リテラシーの教育が後手に回っている現状があり、ネット世界に様々な落とし穴や危険性があることへの認識が弱いと危惧しています。オンラインゲームは仮想現実(ヴァーチャルリアリティ)であり、ネット上の多くのコンテンツは虚構の世界です。ヴァーチャルな世界、虚構の世界に児童生徒の意識や生活が侵されているのです。

 教育はバランスだと考えます。このようなネット社会だからこそ、学校教育は、児童生徒に「本物」を見せ、触れさせ、体験させることで、豊かな感性と考える力を育てることが重要です。自然、歴史、文化と周囲に「本物」が満ち溢れている人吉球磨地域は教育環境として最高の場所だと云えます。 


 

       強歩会でトップでゴールする班(2年1組)