校長室からの風(メッセージ)

正門前の銀杏並木

正門前の銀杏並木 


 「正門前の銀杏並木が綺麗ですね。」と来校者の方からよく言われる季節になりました。先日は、朝、アマチュアカメラマンの方が撮影されている姿が見られました。多良木高校の正門前には銀杏並木があります。町道から分かれ正門までの80mほどの道に片側十本の銀杏樹が立ち並んでおり、今、黄緑色から鮮やかな黄金色に染まってきて、先週から落葉も始まりました。

 正門までのこの奥行の道がとても意味があると私は思っています。朝、登校する時、正門及びその先の校舎や体育館が見え、「さあ学校だ」と自然に意識が学校生活に切り替わる場所となります。夕方、下校する時、正門を出て心地よい疲れに包まれながら「さあ家に帰ろう」と気持ちが解放される場所になるでしょう。銀杏並木の道は、学校と外界をつなぐ不思議な空間と言えます。

 春夏秋冬、登下校の生徒を見守り続ける銀杏並木です。そして、この銀杏並木が最も華やかな装いを見せるのが秋です。毎年、大量の銀杏の落葉があります。一本の銀杏の樹木にいかにたくさんの葉がついているのかに驚きます。昨年まではサッカー部の生徒たちが自主的に朝掃除に出てきて、銀杏の落葉を掃き集めてくれていました。しかし、今年はサッカー部も活動を終えたため、時折、私たち職員有志で清掃を行っています。肌寒くなった朝、銀杏を竹箒で掃き集める感触は秋の風情を感じます。

 現校地に移転して50年、銀杏並木は生徒をはじめ来校者を出迎えてくれました。日が高くなり、銀杏並木の入り口側から正門の方を眺めると、「平和・勤労・進取」の校訓が大きく掲げられた第一体育館、そしてその背景には球磨盆地を囲む九州山地の山並みも遠望できます。この風景こそ、多良木高校を象徴するものではないかと思います。
 しかし、来年の秋はこの風景は見られないでしょう。閉校まであと5か月です。秋はゆっくりと深まっていきます。この秋は、銀杏並木が一層愛おしく、美しく思えます。