学校生活 南稜NOW

小さな命

11月12日(木)。夕方、生徒から報告がありました。「先生、なんか、いつもと様子が違います。血が混ざっている粘液が出ています」。

運動場にいたウシ(はつほまれ号)の異変、よく気付いてくれました。この褐毛和種は妊娠(黒毛和種の受精卵)しており、11月30日が分娩予定です。直腸検査(肛門に手を入れ、子宮を間接的に触診)をしてみると、すぐそこに子牛らしき物体。

次に、直接、膣(子宮の入り口)に手を入れました。子宮頚管(普段は締まっている)より手前に膜につつまれた顔がありました。ということは「分娩(お産)」が始まっています。

慌てて簡易的な部屋に入れ、胎子が出てくるのを待ちました。

しかし、待っても待っても、生まれてきません。とうとう、翌日の朝となりました。

11月13日(金)獣医さんに来てもらい、診察してもらいました。膣に直接手を入れた獣医さん。「あー分娩、始まっていますね。あら、頭しかない。」胎子(子牛)は出てくるとき、前足から出てきます。だからお母さんの産道に前足と頭が入らないと出てこれないのです。「親牛も疲れて弱っているから、今、産ませなきゃならない」とおっしゃりました。

17日の早産、出血、分娩開始から1日たっても出てこない・・・。これらの条件を考えると「もう、子牛は子宮の中で死んでいるだろう」と皆が思いました。

獣医さんの対処で前足が出てきました。引き出した子牛は・・・。生きていました。少し小さいですが生きています。観察してくれた生徒が見つけてくれなかったら助からなかった命でした。

その日の夜、牛舎の明かりがついていました。

そこには生徒が子牛と一緒に座っていました。小刻みに震える子牛を心配し、ワラやタオルで体を何度も噴き上げていました。

「先生、ミルク、飲みません」子牛は未熟なため、ミルクを飲む力も備わっていない。子牛が生まれた喜びで忘れていましたが、未熟児の命をつなぐためにはこれからの方が大切です。「先生、明日は5時過ぎに来てミルク飲ませていいですか」と言って帰っていきました。

動物の命に向き合う。その姿勢を生徒から教えてもらいました。