地元の食材を味わう ~ 郷土料理講習会

 

 調理実習を行っている生徒たちはとても生き生きしています。男子も女子もぎこちない調理の手つきですが、地元御船町の食生活改善員(愛称はヘルスメイト)の方々の御指導で料理ができあがっていきます。高校生からみると祖母に当たるご婦人方の段取りは見事なものです。最近のビジネスは「時間対効果」が重視されますが、料理の達人の方の段取りはさすがで、限られた時間内に整っていきます。

 10月7日(月)の3・4限目、2年2組(36人)の家庭総合の時間は郷土料理講習会でした。本校家庭科の毎年恒例の行事で、御船町健康づくり支援課のご協力を得て、5人のヘルスメイトさん達に来校していただき、地元生産の農産物の調理法について実際に学ぶものです。今年は、地元で「御船川」と呼ばれる野菜「水前寺菜(すいぜんじな)」を使い、献立は、「御船川」とベーコンのソテー、いきなり団子汁、「御船川」を混ぜた牛乳かん(薄い紫色)、そしてご飯でした。調理技術を高めること、食材を通じて郷土理解を深めること、さらには地域の方との交流など幾つもの教育効果が期待される特別な体験活動となりました。

 人生の達人とも言えるヘルスメイトのご婦人方の料理の手際の良さを見ていて、私は「ブリコラージュ」というフランス語を連想しました。「ブリコラージュ」とは、近年、文化人類学で使われる用語で、「その場で手に入るものを寄せ集めて、それらを基に試行錯誤しながら新しいものをつくる力」を意味し、もともと近代文明が発達する以前の人間社会では、この「ブリコラージュ」こそ生きる力であったと言われます。食事も道具、生活するための空間なども、身の回りにある材料を使って何とか創り、人間は生きてきたのでしょう。ヘルスメイトのご婦人方が伝達される郷土料理には、生きる力の基本的技能が貫かれています。

 生活の基本は「衣・食・住」ですが、このうち最も大切な「食」について、手作りの難しさと喜びを現代の高校生が少しでも感じとってくれればと願います。できあがった料理を生徒と共に味わいながら、私は自らの中学、高校時代を顧みました。私の世代は、家庭科を履修するのは小学校までで、中学校では女子は家庭、男子は技術を学び、高校では女子が家庭科、男子は武道(剣道・柔道)と分かれていたのです。家庭科の男女共修が始まったのは中学が平成5年(1993年)、高校は平成6年(1994年)でした。すでに私は高校教師でした。

 中学校、高校と私は最も大切なことを学んでこなかったと後悔しています。