2021年7月の記事一覧

「生まれてきてくれて 有り難う」 ~ 性教育講演会

 西高と同じ熊本市西区の島崎町に慈恵(じけい)病院というキリスト教精神を母体に設立された病院があります。産婦人科、内科、小児科などがある総合病院ですが、「こうのとりのゆりかご」という取り組みで全国に知られています。出産しても、様々な事情で自分では育てられず追いつめられた親が、匿名で赤ちゃんを預けることができる場所が慈恵病院にはあります。何よりも、一人では生きていけない新生児、赤ちゃんの命を救うため、緊急避難場所としての受入れを慈恵病院は15年近く続けておられます。このような実践は我が国では熊本の慈恵病院だけが行われており、心から敬意を表します。

 慈恵病院で看護部長をお務めの竹部智子様に講師をお願いし、7月15日(木)、西高生1,2年対象の「性教育講演会」を実施しました。慈恵病院にいらっしゃる竹部看護部長と、西高をオンラインで結び、リモート形式で行いました。

 演題は「未来ある皆さんに伝えたいこと ~ 産婦人科の現場から」です。

 最初に、今週、慈恵病院で出産、誕生のお母さんと赤ちゃんが登場されました。赤ちゃんが生まれたときに陣痛の痛みも吹き飛び、お母さんは、赤ちゃんに「生まれてきてくれて、有り難う」と語りかけられたそうです。この言葉は、竹部看護部長の講演の中で随所にリフレインのように出てきました。

 「赤ちゃんは皆、待ち望まれて生まれてきたもの」であるにもかかわらず、なぜ育児放棄、虐待などの問題が起きるのか。それは決して母親一人の責任に帰すべきではないと言われます。相手があって子どもは生まれるものであり、経済面を含めた環境の問題など、母親一人では解決できないことが多いのです。従って、「こうのとりのゆりかご」という場所を設けると共に、慈恵病院では、育てられないと苦悩する親の相談体制整備に力を入れてきたと言われました。

 「こうのとりのゆりかご」の様子が実況で中継されました。特別な門から入り、小道を30mほど歩き、赤ちゃんを預ける扉があります。その扉を開けると保育器とお母さんへのメッセージが用意されています。赤ちゃんを預け、扉を閉めると二度と扉は開かない仕組みになっているそうです。夜、扉の前にたたずむ女性の姿を竹部看護部長さんも目撃されたそうです。

 思春期の男女がお互いを好きになるのは自然なこと、けれども男性と女性では気持ちの表し方や性への感覚が異なっていることをお互い認めあうことが大切だと語られ、改めて生徒たちに対しメッセージを伝えられました。

 「女子の皆さん、もし今、妊娠したら、育てられますか?」

 「男子の皆さん、もし今、妊娠させたら、育てられますか?」

 かけがえのない命と性に関わる産婦人科の現場で、患者さんの一番近くに寄り添ってこられた竹部看護部長の言葉は、優しいものですが、重みのあるものです。心揺さぶられるお話しでした。