西高探訪 ~ 物語のある風景

「西高ができたときは、城山(じょうざん)校区に高校ができる!ということで地元の者はみな大喜びしたものでしたよ。」

 熊本西高校に赴任し、まもなく一月となります。学校所在の熊本市西区城山地区を巡っていると、地元の方から西高開校の時の思い出を語ってくださる方と幾人も出会います。本校も創立47年目を迎えます。およそ半世紀の間、地元の皆さんに親しまれ、応援されてきたことを実感します。

 地域探訪については次回に譲るとして、今回は校舎探訪です。最もユニークな場所が「生徒ホール」及び「テラス」です。以前、西高に出張で来たときに強く印象に残りました。第3普通教室棟(3学年)から第2普通教室棟(2学年)への廊下の東側にあり、2階まで吹き抜けの空間で、売店も隣接し生徒たちの憩いの場となっています。大型の美術作品が展示されるなどギャラリー機能も備え、多目的に使えます。ガラス窓を隔ててテラスがあり、瀟洒な白いテーブルと椅子が置かれています。先般ここで、吹奏楽部が新入生歓迎のミニコンサートを昼休みに開いてくれました。

 教室棟を南北につなぐ廊下が西高の幹線と言えます。一方、それと平行して体育館から家庭科教室、礼法室、図書室、芸術棟と結ぶ廊下があり、こちらは趣のある情景が連なります。黒竹(くろちく)と思われる細い竹に覆われた礼法室は和の学びの場です。先週木曜日の放課後、茶道部のお稽古に招かれ、お抹茶をいただきました。百人一首部も活動の拠点としています。図書室は木の温かみが感じられ、青い木枠の窓は時代を感じさせます。昭和の高校時代の記憶を伝えます。

 そして、美術棟は、音楽室、美術室、書道室の三つの平屋が三菱のマークの如く結ばれており、この構造も他の県内の高校に類を見ません。先日、美術部と書道部の活動を見に行きましたが、双方の部員が行き来し交流していました。

 校庭を歩くと、ヤマモモの木が目につきます。図書室や美術棟、そしてテラスのまわりを樹木群が囲み、しっとりとした庭園となっています。また、正門から西門にかけての樹木群の中には楠の老木もあり、恐らく西高開校前からこの地にあったものでしょう。校舎内や校庭を歩くと、開校以来、50年近くの時が流れたことを感じると共に、幾多の若人の物語を想像したくなります。

 西高は広大なグラウンドや充実した体育施設に目を奪われがちですが、このように生徒たちが憩い、豊かな学校文化を醸す場がいくつもあることを多くの人に知って欲しいと思います。